【解説】マリウポリ陥落は? 「1000人」降伏か……専門家「事実なら連鎖も」 プーチン大統領“執着”の裏に「復讐」と「正当化」
侵攻を受けるウクライナで最大の焦点となっている南東部マリウポリで、ロシア国営メディアは、ウクライナ軍兵士1026人が降伏したと伝えました。事実なら今後にどう影響するのか、プーチン大統領がマリウポリに執着する理由は何か。専門家に聞きました。
■陥落間近? 1000人「降伏」か
有働由美子キャスター
「アメリカの政策研究機関による、ウクライナの最新の戦況を確認します。一番の焦点である南東部マリウポリの11日と12日を比較すると、ロシア軍が制圧したり攻勢を強めたりしている地域が広がっています。ただ、まだ陥落はしていないと分析されています」
「ここに来て、ロシアの国営メディア・タス通信は、『ウクライナ海兵隊員1026人が降伏した』と発表しました。ウクライナ側は否定していますが、もし事実だとしたら、降伏にはどんな意味合いが考えられるのでしょうか?」
高橋杉雄・防衛研究所防衛政策研究室長(現代軍事戦略)
「マリウポリが最初に降伏勧告を受けて13日で3週間になります。その間、非常に激しく戦っていた部隊だとすれば、相当疲弊しながら、最後は文字通り、矢尽き刀折れ、降伏したのだと思います」
「ある意味、ウクライナ側の組織的な抵抗が著しく弱くなることになるので、ロシアからすると、マリウポリの完全制圧に向けて、非常に大きな一歩を踏み出したということだと思います」
■降伏なら…兵士の処遇と影響は?
有働キャスター
「降伏した兵士は、どうなるのでしょうか?」
高橋室長
「捕虜として扱われるのであれば 人道的な扱いが期待されますが、ロシア側はこれを戦争ではなく『特別軍事作戦』と呼んでいるので、いわゆる捕虜としての待遇を受けられるのかどうかは、私は分からないと思っています」
有働キャスター
「厳しい対応も考えられますか?」
高橋室長
「そうですね」
有働キャスター
「1000人が降伏したということになると、続いたりするのでしょうか?」
高橋室長
「後の部隊がどのくらい残っているか分かりませんが、1000人規模の部隊は大きな重しなので、それが仮に降伏したとすれば、他の抵抗を続けている部隊や兵士は、士気が著しく落ちると思います。そうなると、連鎖的に後退や降伏が起こる可能性はあると思います」
■「アゾフ連隊」本拠地にこだわる理由
有働キャスター
「ロシア側がマリウポリを徹底的に、これだけ攻撃するのは、なぜなのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「もちろん、マリウポリが軍事的に重要な拠点だからということはありますが、ウクライナの治安組織『アゾフ連隊』の本拠地ということで、プーチン大統領は強い思い入れを持っているようです」
「それは『復讐』と『戦闘の正当化』です。ロシア情勢に詳しい拓殖大学の名越健郎教授は『2014年のクリミア併合の際にもロシアはマリウポリを陥落させようとしたが、失敗に終わった。その大きな要因がアゾフ連隊の強力な抵抗だった』と指摘しています」
「つまりプーチン大統領にとって、今回、マリウポリを制圧することはアゾフ連隊への復讐の意味があるといいます。当時、アゾフ連隊の中には過激な行動を取った人も実際いたそうです」
「それだけに、笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は『あの過激なアゾフ連隊を倒すということは、“過激なナショナリストなどからウクライナの人を救済する”という、戦闘の大義名分を正当化する一定の政治的効果も見込める』とみています」
(4月13日『news zero』より)