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【解説】マリウポリ陥落なら……「ドネツク州北部」での戦いがカギ ロシア軍勝利なら専門家「早くて冬にキーウへ」

2022年4月14日 9:31
【解説】マリウポリ陥落なら……「ドネツク州北部」での戦いがカギ ロシア軍勝利なら専門家「早くて冬にキーウへ」

ウクライナ南東部のマリウポリが、数日のうちに陥落するとの見立てがあります。陥落した場合、ロシア軍はどう動くのでしょうか。現代軍事戦略の専門家によると、カギになるのはドネツク州北部での戦闘で、それ次第で「2つの選択肢」があるといいます。

■残された「市民10万人」どうなる?

辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「マリウポリには、まだ10万人の市民が残されているとされていると思います。キーウ近郊のブチャで起きていたことが最近、少しずつ明らかになってきていて、虐殺や性被害の話など、その凄惨さを映像や現地の話で痛感しています」

「それだけに、同じようなことが起こらないか心配してしまいますが、残された市民の方たちはどうなってしまうのでしょうか?」

高橋杉雄・防衛研究所防衛政策研究室長(現代軍事戦略)
「残念ながら明るい未来は描けないと思っています。すでに行われているような強制移送、場合によっては強制収容所への移送…。略奪は確実に行われ、現に行われているでしょう。殺害なども行われる可能性は十分にあります。非常に厳しい状況に置かれるのではないかと思います」

■陥落なら…カギは「ドネツク州北部」

有働由美子キャスター
「マリウポリ陥落となった場合、その後の展開は2つが考えられると高橋さんはおっしゃっています」

高橋室長
「ドネツク州北部でウクライナ軍が非常に強力な抵抗をしているので、それに対する包囲作戦を北部ハルキウ(ハリコフ)からの部隊と連携して行います。ドネツク州北部での戦い次第ですが、ロシア軍がある程度、勝利する形で終わった場合、2つの選択肢があります」

「1つは、ドネツク州北部の戦線を固定して、他の部隊を南部のクリミア方面に回します。ヘルソンからミコライウ方面、そしてミコライウからキーウあるいはオデーサ(オデッサ)を狙った第二次攻勢をかけるものです」

「もう1つは、ドネツク州北部を確保した後で、そのまま西に押し出すような形で攻めていくことが考えられます」

■ロシア軍「第2次攻勢」どうなる?

有働キャスター
「どちらだと思いますか?」

「基本的にはドネツク州北部での戦いの状況によると思います。ロシア軍がウクライナ軍をほぼ包囲して大勝利を収める形だと、ウクライナ側の抵抗勢力が非常に弱まりますから、ミコライウやオデーサからキーウ方面に攻めていく形が、合理的だと思います」

「一方、ウクライナ側がドネツク州北部で部隊の保持に成功した場合、新しく戦線を張り直した場合は、ロシアが南側を狙うと反攻を受ける可能性があるため、ドネツク州北部で戦い続けないといけない。そこで勝てば、少しずつ西に押し出していけます」

「ですので、今の段階ではロシア側に選ぶ権利はなく、ドネツク州北部でどういう勝ち方をするか、どういう負け方をするかで、その後の選択肢が変わってくると思います」

■ロシア軍「完全制圧」いつ宣言?

有働キャスター
「マリウポリは数日以内に陥落ではないかという話がありますが、いつ終わるのでしょうか?」

高橋室長
「通常、組織的な抵抗が終わった段階、つまり1026人とか百人単位でばらけて抵抗している部隊が全て降伏したり全滅したりした後で、数人単位の抵抗は残っているでしょうが、その時はロシアは『完全に制圧した』と言うと思います」

有働キャスター
「制圧した後、キーウまで来るのに早ければどのくらいになるのでしょうか?」

高橋室長
「どう考えても夏まで、は考えにくいです。ドネツク州北部で勝った上で、早くて今年の冬ではないでしょうか。勝てなかった場合は南東部での長期戦がずっと続くと思います」

有働キャスター
「いずれにしても今年いっぱいは長く続くということですね」

(4月13日『news zero』より)