4年に1度行われる台湾総統選挙 中国に住む台湾の有権者は──
4年に1度行われる台湾総統選挙。今回は中国との向き合い方が、大きな争点のひとつとなりました。
与野党候補の接戦が伝えられ、少しの票でも積み上げたい各陣営。無視することができないのが、「海外に住む台湾出身者」の票の行方です。台湾総統選挙は、在外投票や期日前投票制度がないため、世界各国で暮らす台湾市民は、投票するために戻らなければなりません。
中国にも多くの台湾市民が暮らしています。ビジネス目的だけでもおよそ20万人。こうした中、“中国の航空会社が、投票のため帰省する台湾出身者に、航空券の補助を行った”と指摘されました。親中派の帰省を支援することで、中国に近い国民党への票の上積みを狙ったとの見方もあります。
中国に住む台湾出身者の多くは、ビジネス面などから安定した中台関係が望ましいとして、中国との融和を図る「国民党」の支持者だといわれています。ただ、中国・台湾それぞれに偏った発言をすれば、ビジネスに直結する恐れもあり、取材に応じてくれることはまれなことです。
今回、2人が私たちの取材に応じてくれました。
――なぜ中国での生活を選んだのですか。
「台湾に比べて中国は市場規模が大きく、ビジネスチャンスがあります。人材派遣会社を設立するためには、北京の地を選ぶことが最良だと感じたのです」
――投票のために帰省しますか。台湾の若者は、なぜここまで選挙に関心を持つのでしょうか。
「もちろん帰ります。選挙をめぐる台湾の雰囲気は、世界の中でもかなり特殊だと思います。台湾の選挙は、“統一”と“独立”の問題がひもづいています。どの政党を選択するかで、“統一”か“独立”かへ進んでしまうから、有権者は一票も無駄にできないのです」
――あなたはどの党を支持しますか。
「私は国民党の理念を信じています。私のように中国で生活したり仕事をしたりする台湾人にもメリットがあって、中国と台湾のビジネスと往来もより安定するでしょう」
――選挙戦をめぐり、偽情報や軍事演習など「中国の選挙介入」も指摘されています。
「『中国共産党の軍事脅威がすぐ来る』とか、『台湾がアメリカから大量の武器を購入した』などの情報の真偽は一般人では判断できません。選挙における真偽不明な情報の多さは、世界的に見ても珍しいのかもしれません」
――あなたの台湾の友人は、危機感が高まる中台関係をどう捉えていますか。
「“現状維持”を望む声は多いですが、台湾に住む友人はそこまで危機感がありません。中国と台湾が、衝突なく平和に統一するのか、すぐには動かないと思っています」
―――次の政権に期待することは。
「中国と台湾の関係回復に尽きます。例えば両国の交流。中国の友人は台湾に行きたがっているが、民進党政権の時代でほぼ中断されました。交流が途絶えれば、弁護士業務にも影響してくると思います」
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次期総統が中国とどう向き合っていくのか。日本に住む私たちにも深く関わるこの動きを、注意深く見ていく必要があります。
(NNN中国総局 森葉月)