地震による津波や家屋の倒壊から命を守る“手ぶら避難”とは?
2024年の元日に発生した能登半島地震。最大震度7の揺れは、家屋の倒壊や津波などを引き起こし、甚大な被害をもたらしました。こうした、大きな災害が起きたときに注意したいのが避難の仕方。実は、やがて来るといわれている南海トラフ地震に備え、独自の発想で避難をしようと、取り組む自治体がありました。その取り組みとは、手ぶらで避難すること。一体どのような避難方法なのか?取材してきました。
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地震や防災に詳しい慶応義塾大学の大木聖子准教授によると、今回のような大きな地震では、避難時に注意が必要だと話します。
慶応義塾大学環境情報学部・大木聖子准教授
「(能登半島地震は)揺れも大きい、津波はすぐさまやってくる、みんなで高台に行かなければいけない状況で、(防災)リュックを人数分持つのは現実的じゃないと感じました」
地震で揺れているときや倒壊した家屋から、日頃準備していた防災グッズを速やかに持ち出すのは、難しいと言います。こうした避難時の問題に対処しようと取り組んでいるのが、高知県の土佐清水市です。
実は、内閣府による南海トラフ地震の想定で土佐清水市は、約34メートルの津波が来て、壊滅的な被害を被るとされています。こうした状況から、市民を守るために取り組んでいる方法とは?
土佐清水市危機管理係長・平林怜さん
「地区の防災倉庫を活用して、(防災倉庫)に防災リュック等を保管している地区独自の取り組み」
平林さんによると、住民たちは、それぞれの地区にある防災倉庫に、防災リュックを預けているそうです。実際に、防災リュックを預かり、管理しているという平野貴久さんを訪ね、防災倉庫を案内してもらいました。
越連合地区 自主防災会長・平野貴久さん
「この2つが防災倉庫です」
倉庫を開けてもらうと…
越連合地区 自主防災会長・平野貴久さん
「みなさんから預かった個人の(防災リュック)です。40ちょっとありますね」
港から遠く離れた高台に設置されている防災倉庫には、約100人避難してくる想定となっています。このような防災リュックを預けられる倉庫は、10年ほど前に平野さんが提案して始まり、今では市内にいくつもあると言います。
越連合地区 自主防災会長・平野貴久さん
「地震のあとに荷物を自分が持って出るのは不可能だと思った避難所に逃げたら自分の荷物がそこにあることが 一番いいと思った」
防災倉庫に預けてある荷物の中身は、人によってそれぞれ違い、平野さんの場合、タオルやマスク、下着などの着替えや防寒着、そして、お薬手帳のコピーを入れていました。
この防災倉庫は地域の住民であれば誰でも利用することができ、申し出があれば、荷物の中身の入れ替えや追加もできます。今使っている防災倉庫がいっぱいになったら、市の補助金で新たな防災倉庫を作る予定です。
また、防災倉庫の中には、防災リュック以外に、テントや水、食料品、ガスコンロ、簡易トイレ、消毒液、マスクも保管。電源用のバッテリー、たき火用のドラム缶なども用意しています。
平野さんによると、約100人が3日間、生存出来るほど備蓄されているといいます。
越連合地区 自主防災会長・平野貴久さん
「自分の命を守るには、こういう取り組みの中で、そこに行ったら自分の荷物がある家の中で荷物どこにあるか探していたら時間的に間に合わなくなってしまう。いち早い避難が一番大切だと思う」