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富士山の通行料「2000円」――高い?安い? 知事「ラーメンですら…」 “弾丸登山”やトイレ問題も【#みんなのギモン】

2024年2月17日 12:02
富士山の通行料「2000円」――高い?安い? 知事「ラーメンですら…」 “弾丸登山”やトイレ問題も【#みんなのギモン】
軽装などで山頂を目指す「弾丸登山」や混雑が問題になっている富士山。山梨県が対策として2000円の通行料を徴収する方針を示し、議論になっています。入山料が高い世界の名峰でも混雑でトイレ問題に直面する中、富士山はどうあるべきなのでしょうか。そこで、今回の#みんなのギモンでは、「富士山の価値はラーメン以下?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●富士山登山 2000円徴収?
●世界最高峰 排せつ物で汚染?

■年20万人超が登る富士山で通行料?

小野高弘・日本テレビ解説委員
「16日午前、東京・汐留からは、きれいに富士山が見えました。富士山に登ったことはありますか?」

鈴江奈々アナウンサー
「いつか登りたいと思いながらも、まだないですね」

辻岡義堂アナウンサー
「私は高校、大学、社会人と1回ずつ、3回登頂していますね」

小野解説委員
「多くの人が一度は行きたい、そして辻岡さんのようにリピーターもいます。この山に年間 20万人以上が登っています。富士山に登る人から、山梨県が通行料を徴収しようとしていて、今議論になっています」

■軽装も…「弾丸登山」をめぐる課題

小野解説委員
「なぜ2000円を徴収するのか。今、富士山で頭が痛い問題は、弾丸登山です。山小屋で休まず、外で仮眠しています。防寒具も持たず、軽い服装で山頂を目指す人が相次いでいます。Tシャツ、短パン、サンダルの人もいるほどです」
「こうした弾丸登山をする人は、山梨県の吉田口だけで3863人(去年7月~9月10日)という人数です。自己責任でやってください、と言っていられません。高山病や低体温症、疲労で遭難する人が相次いでいます。レスキューが必要になります」

鈴江アナウンサー
「真夏のものすごく暑い時期でも、外で寝泊まりするのは危険ですか?」

辻岡アナウンサー
「絶対にダメですね。本当に寒いですよ。ずっと強風が吹いていますから。絶対に防風素材のものは身につけていかないと危険です」

■静岡県と山梨県の新たな対策は?

小野解説委員
「そういうことがないように、地元が対策に乗り出しました。静岡県の側では14日、県知事が『登山計画の事前登録を求めます』『登録がない人には登山の自粛を呼びかけます』という方針を発表しました」
「山梨県の側は、今は保全協力金として任意で1000円を徴収していますが、それに加えて今年のシーズンから新たに通行料として2000円を登山者から徴収しよう、義務にしようと打ち出しました。(関連する)条例案を議会に提出しようとしています」
「この『2000円』が注目されました。今週開かれた富士山世界文化遺産学術委員会では、出席者から『2000円はちょっと高い』『根拠は何か?』『集めたお金をどう使う?』といった声が上がりました」

■山梨知事、「価値」をめぐり問いかけ

小野解説委員
「こうした中、山梨県知事は『今や、ラーメンですら1杯2000円がどうだっていう問題になっているぐらいの話ですから、富士山の価値はそんなに低いものなのかと、私はあえて問いかけたいと思います』と語りました」

小野解説委員
「今、ラーメンの付加価値も上がってきて2000円くらいするものもあるじゃないですか。その中で富士山の価値がそんなに低いんですかね、という話なんです」

市來玲奈アナウンサー
「なるほど、富士山は世界遺産ですもんね。ただ、私は登山をしたことがないので素人ではあるのですが、例えば日本国内のテーマパークは結構値段が高いなという印象があるので、楽しむというジャンルでくくると、2000円は安いのかな...?」

■150 万円超も…海外の入山料は?

小野解説委員
「海外と比べてみたくなりますが、海外では入山料を導入している山が多いです。環境省資料や米国立公園局ホームページによると、世界で最も標高が高い地域のヒマラヤ山脈では、それぞれの山に設定されています。世界最高峰のエベレストだと、150万円以上です」

辻岡アナウンサー
「レベルが違いましたね」

小野解説委員
「値段も最高峰な気がします。南米のアコンカグアは登山の種類によって約2万円~20万円。かつてマッキンリーと呼ばれていた北米最高峰のデナリは約6万5000円です」
「観光や登山に来る人が落とすお金は大きな収入源になりますが、いずれも環境保全や登山道の整備など、山を守るためにも入山料は欠かせません」

■安すぎる? 「2000円」どうみる

忽滑谷こころアナウンサー
「世界と比べてみると、富士山の2000円はちょっと安すぎるんじゃないかと思ってしまうくらいですよね」

小野解説委員
「確かに、私たちの富士山がこれでいいのだろうか、という気もします。では、どう捉えればいいのか。ヒマラヤや南米などで多くの登山に挑戦した、登山家の花谷泰広さんに聞きました。『富士山の通行料義務化は大賛成だが、2000円とは安すぎる』と言います」
「花谷さんは『日本人にとって富士山は唯一無二の存在。富士山に登りたいと、外国からも来る。かかるコストから通行料を計算するのではなく、富士山はこれだけの価値があると金額を提示して、みんなに納得してもらえばいいのではないか』と提案します」

鈴江アナウンサー
「確かに、葛飾北斎が浮世絵で富士山の美しさを世界に伝えてくれていますが、今の私たちが富士山の価値を下げて世界に伝えるのは、ちょっと違う気がしてきました」

■登山家に聞く…通行料の使い道は?

小野解説委員
「世界遺産ですから。『日本人の自然観や日本文化に大きな影響を与えた』と言われ、ユネスコからも『世界の宝』と評価されています。一方で花谷さんは、『2000円なら 2000円で使い方は大事』と指摘します」
「花谷さんは『いろいろな考え方があるが、登山道の整備や、火山なのでシェルターを作る、混雑緩和の対策、安全指導・レスキューのスタッフのさらなる充実なども大事といいます。訪れる人たちのサポートのために使われるのがいいのでは』と話します」

辻岡アナウンサー
「私は4度目に挑戦しようと思いますが、払う側からしてみても、『こういう風に使われるよ』と説明があれば、2000円でも3000円でも納得できる形になりますね」

■1日4000人を超えると山頂が混雑

小野解説委員
「混雑緩和については山梨県が今シーズン、5合目の登山口にゲートを設け、登山者数の上限を 1 日あたり 4000人とする方針を決めました。上限を超えたらゲートを閉めるという、結構厳しいものです」
「ちなみに去年は一番多い日で 3900人ほどでした。ギリギリ超えるか超えないかというところですが、この数を超えてしまうと山頂がかなり混雑してしまうということで、4000人という数を設定したそうです」

鈴江アナウンサー
「安全面を考えても必要なんですね」

■トイレ問題で…富士山に「白い川」

小野解説委員
「登山する人が増えすぎると問題になってくるのが、トイレの問題です。ここからは『世界最高峰 排せつ物で汚染?』のポイントを見ていきます」
「かつての富士山の、とある場所の写真があります。ティッシュが多くあり、『白い川』と呼ばれていました。トイレはありましたが地表に垂れ流す方式で、斜面にティッシュがたまっていました」
「これでは環境に悪いということで、今では微生物などの技術で処理するもの、焼却するものなど、環境に優しい新しい方式のトイレが開発され、使っています。ただ、利用客が多いと処理が追いつきません」

■悪臭が問題だったエベレストでも対策

「海外の、同じように高い山ではどうか。ネパールの地元メディアによると、エベレストでは登山者は排せつ物をベースキャンプに持ち帰ることを義務にしようと決めました」
「これまではその場で捨てられることが多かったですが、気温が低いことで長い間腐らず、分解もされないため、山が悪臭を放ってしまうという問題になりました」
「そこで次の登山シーズンからは、登山者に排せつ物を入れる袋を配布して持ち帰ってもらい、世界に誇るきれいで清潔な山にしようと。エベレストもかつて混雑して大渋滞が大きな問題になっていました。世界的な山も、悩みや工夫もあるということです」

鈴江アナウンサー
「弾丸登山をする人が今問題になっているということでしたが、環境(保全)、整備を進めることで、より安心して皆さんの登山を迎える環境が整うといいですね」

小野解説委員
「世界遺産であり、みんなの富士山でもあります。来た人が嫌な思いをせずに満足できるよう、コントロールしていくのも大事になりそうです」

(2024年2月16日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html

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