「こんなにトイレが重要とは…」能登半島地震1か月、“トイレ”なお深刻… 奥能登「71%」で下水道流せず【#みんなのギモン】
辻岡義堂アナウンサー
「能登半島地震の被災地で、今もこれからも大きな問題になっているのがトイレです」
「避難所の石川・珠洲市の正院小学校に張られた『正院ひなん所新聞』。避難所の小学生たちが書いています。模造紙の大きなスペースを割いているのが、仮設トイレの使い方について。『水を流す時のペダルは、1回だけ』など詳細にアドバイスが書かれています」
「1月31日に発行された同じ新聞では『トイレがきれいです! みなさんがルールをまもり、おそうじもできているので、最近はトイレがきれいです。これからもよろしくおねがいします。Thank you So much』と書かれています」
藤井貴彦アナウンサー
「子どもたちの一生懸命書いた字が、まず目に優しい。そして字の大きさも、多くいらっしゃるご高齢の方の目にも優しいと好評のようですね」
辻岡アナウンサー
「現在進行形で起きているトイレ問題ですが、能登半島の広い範囲でトイレが使えない状態が続いています。トイレを使うためには上水道と下水道の両方が必要ですが、発災直後から上水道が断水。タンクに水が供給されないため流すことができず、手も洗えません」
「また下水道も停止し、手作業で水をくんだとしても、下水管が被害を受けている間は流せません。普通の家庭の水洗トイレは使えない状態だということです」
「下水道に関しては1月31日時点でも石川県全体で25%、奥能登では71%で流すことができません。上水道は、いまだ県全体で4万戸以上で断水が継続しています。上水道の復旧の見込みは2月末~3月末で、七尾市と珠洲市の一部地域では4月以降となっています」
市來玲奈アナウンサー
「数週間から数か月トイレが使えないという状況ですよね。トイレは生活していく中で欠かせないものなので、現地の方を思うととてもつらいですね」
辻岡アナウンサー
「トイレは非常に深刻かつ大切な問題です。現地で取材している戸田舜介記者に、トイレの現状と課題を聞いていきます」
戸田記者
「私は今、珠洲市の避難所になっている宝立小中学校に来ています。ここは被災者が珠洲市の中で最も多い避難所で、250人ほどがいらっしゃいます。学校の外に仮設トイレが9基と、トイレトレーラーが1基あります」
「平常時はイベントなどでも広く使われる仮設トイレですが、この1か月で経産省が把握しているだけで被災地に1143基(1月31日時点)が設置されました。
辻岡アナウンサー
「トイレの数は現在足りているのでしょうか?」
戸田記者
「この避難所の仮設トイレは避難所にいらっしゃる方々はもちろん、地域の方々も使っています。ただ、上下水道の断水が続いているため、家庭のトイレが使えないということもあり、やはり『まだまだ足りない』との声が多いです」
戸田記者
「被災した方々からは『そもそもこんなに酷い断水になるとは思っていなかった』という声や、発災当時の関心は食料や衣類でしたがトイレは毎日するものなので『こんなにトイレが重要だと思わなかった』という声が聞かれます」
藤井アナウンサー
「とてもありがたいトイレですが、(多くの)ご高齢の皆さんが使用します。避難所の入り口から距離はどれくらいの場所にあるのでしょうか?」
戸田記者
「20メートルほど、学校と仮設トイレが離れています。先ほどまでは雪も降っていましたので、寒いとそこに出ていくのもつらい、という方々がいらっしゃいました」
藤井アナウンサー
「設置場所が本当に問題になっていますが、これからどこに置くかということを考えることが必要ですね」
辻岡アナウンサー
「被災地で現在も続くトイレ不足の問題。これは単に不便というだけでなく、健康問題の面からも心配があります」
「どうしてもトイレを我慢してしまう、なるべく回数を減らそうと食べ物や飲み物を控えてしまう、そうすると栄養状態の悪化を招き、脱水症状やエコノミークラス症候群といった命に関わる問題につながる恐れもあり、そういった意味でも注意が必要になります」
忽滑谷こころアナウンサー
「こういった避難所での生活の中では特に健康を第一にして過ごしてほしいなと思っていますが、できるだけ清潔なトイレを使う上で何か工夫はされているのでしょうか?」
辻岡アナウンサー
「先ほどの宝立小中学校にも設置されていましたが、トイレトレーラーというものがあります」
「1月26日、珠洲市の若山小学校に、ワゴン車に引かれてトイレトレーラーがやってきました。富士山のふもと、静岡・富士市からはるばるやってきました。4つの個室を備えています。子どもたちが「なんだこれ~」「きれい!」と声を上げます」
「中には洋式の便器や手を洗うシンク、鏡も。便器の横のペダルで流す水洗式です。富士市のものは暖房付き便座になっていて、能登の皆さんが普段使っている快適なトイレを目指したものです」
刈川くるみキャスター
「普段使っていたトイレに比べると、まだ不便なところもあるかとは思いますが、子どもたちの笑顔が印象的です。避難生活でいろんなストレスがかかっていると思うので、この仮設トイレができることで1つでも心配事が減ってくれたらいいなと思いますね」
辻岡アナウンサー
「北海道から九州まで、全国の自治体から約20基のトイレトレーラーが能登に駆けつけています。普段は各自治体で花火大会などのイベントに活用され、災害発生時には被災地に駆けつけるという相互支援の仕組み『災害派遣トイレネットワークプロジェクト』です」
辻岡アナウンサー
「こうしたトイレトレーラーや仮設トイレですが、1か月使われてきた中で、どのような課題が出てきているのでしょうか?」
戸田記者
「特に被災者の方々が大変なのは、汚物の処理や掃除、給水タンクの補給などを自ら行わないといけないことです。ただでさえ大変な避難所での生活の中で、こうしたものが追加の負担として大きくのしかかっています」
「『もっとトイレを増やしてほしい』という声もありますが、同時に被災者の方々の負担を減らすような対策も求められています。例えば除菌クリーナーや芳香剤などの支援、トイレトレーラーを送る際にも給水してからだと助かる、という声も上がります」
藤井アナウンサー
「これからボランティアの方も能登半島に入って大活躍されると思います。地元の方も待っていると思います。そうなると、ボランティアの方がトイレをどこで済ませようかと考えながら行動すると、行動範囲が狭まってくる可能性もあります」
「今後の復旧・復興を手助けする、そのサポートとしてトイレは本当に重要だと思います。トイレを何とかスムーズにできるように、避難所から少し近い所にも設置できるように、今後、実は重要な問題であるということを忘れないでおきたいですね」
辻岡アナウンサー
「数か月にわたって、自宅や避難所の普通のトイレが使えない…。もう、想像を絶する事態です。トイレに関しても、健康問題にもつながりますから、ぜひとも、支援の輪がどんどん広がってほしいと思います」
(2024年2月1日午後4時半ごろ放送 news every. 「#みんなのギモン」より)
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