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被災地トイレの1か月…どんな試行錯誤が 【#みんなのギモン】

2024年2月1日 6:19
被災地トイレの1か月…どんな試行錯誤が 【#みんなのギモン】

能登半島地震の被災地で、トイレがかつてなく劣悪な状況になっています。石川県は1月27日、これまでに点検を行った県内の下水道の25%が被災し、奥能登では71%が被災していたと明らかにしました。断水も続き、ほとんどのトイレが流せない状況です。この中、仮設トイレに加えて次々と運び込まれているのがトイレトレーラーです。断水時、トイレはどんな問題に直面するのか、どう乗り越えようとしているのか取材しました。
(能登半島地震取材班、経済部)

■発災直後、避難所トイレ「使用中止」も

地震の直後、市役所や学校などの避難所に身を寄せた人は3万人以上。多数の人々が各階のトイレに集中しました。しかし断水で水は流れず、排泄物がたまり悪臭が立ちこめる状況に。使用中止で封鎖されるトイレも相次ぎました。段ボールなどで簡易トイレも作られましたが状況は改善されません。

そこへ運び込まれたのが仮設トイレです。経産省によると、1月4日に91基、5日に82基の計173基が送られました。過去の災害での仮設トイレの設置状況や国連などの基準を踏まえ、各自治体は発災当初は避難者50人に1基、避難が長期化する場合には20人に1基のトイレの確保を目安にしてきましたが、現実は3万人の避難者に対して極端に少なかったと経産省も認めています。

■仮設トイレ次々 試行錯誤も

千葉県市川市に本社がある日野興業。仮設トイレなどを製造・レンタルする企業です。国やゼネコンなどからの要請を受けて能登半島地震の被災地に約200基の仮設トイレを設置しました。

今回、工夫しているのは水を凍らないようにすることです。出荷する際、水に薬剤を混ぜて凍りにくくしたり、現地で不凍液などを投入してもらっているといいます。

また、高齢者や女性、子どもなどは洋式が利用しやすいと考え、和式のものにアタッチメントを使って洋式化していますが、高齢の男性や「洋式は肌が触れるために不衛生に思える」という人たちからは和式の方がいいという声も一部であがっていて、便座除菌クリーナーを備え付けるようにしました。

さらに日野興業は国と相談し、現地に運ぶ仮設トイレすべてに照明をつけています。熊本地震の発生直後、真っ暗で使えず携帯電話のライトで照らしながら使っていたこともあり、単三電池で使えるライトを仮設トイレ1つ1つに備えたといいます。

設置場所にも慎重さが必要です。においを考え避難所から少し離れた場所に設置すると防犯上の不安も生じ、試行錯誤がありました。

1月26日までに、経産省が把握しているだけで石川県内に1068基の仮設トイレが設置されました。1月29日時点の1次避難者数は8945人で、仮設トイレ1基あたり8.4人と、数字上は足りていることになります。

それでも地域によってはトイレの数が足りないと考えられる上、断水が続いていることでトイレの復旧もままなりません。日野興業の担当者は「これまでの災害では1か月たつと撤去を行うケースが多かったのに対し、能登の被災地で今もこれだけの仮設トイレが使われ続けているのは異例」と話します。

■ “ホッとする時間を”トイレトレーラーが活躍


避難生活が長引く中で、快適さを提供しようと全国の自治体から運ばれているのが移動設置型のトイレトレーラーです。

26日、石川県珠洲市の避難所になっている若山小学校には、車体に富士山が描かれたトイレトレーラーがワゴン車にけん引されて到着しました。届けたのは静岡県富士市の職員ら3人。積もる雪をスコップでかき分けて玄関前に設置しました。個室が4つ。くみ取りが必要ですが、便器の横のペダルを踏めば水が流せるタイプです。

便座は暖房が入って暖かく、照明や換気扇、手を洗うシンクや鏡もついて日常に近い形です。また便器の横にはシャワーヘッドもつき、便器が汚れたら洗い流せるようにもなっています。

富士市の職員「子どもたちが使うことになるんですか?」
地元の担当者「避難している人も使うんですが、学校のトイレは子どもたちにはもう無理だから…」

水が流れないために学校のトイレ環境は劣悪になっていました。

さっそく児童らが連れだってトレーラーを見に来ました。個室の扉をあけると…「久しぶりだぁ」。思わず声が出ます。担当者に使い方を教わりペダルを踏むと水が流れ、「すごい!」と嬉しそう。

富士市はもともと寒冷地仕様になっていなかったトイレトレーラーを改修して届けました。太陽光で充電できるバッテリーにより停電中でも使用できて、注水やくみ取りを続ければ長期間稼働できます。

派遣された富士市の職員らは数日間滞在して対応にあたり、その後は現地スタッフに対応してもらいながらトイレトレーラーは当面珠洲市に残すということです。富士市の職員・太田智久さんは「疲労もたまっている頃だと思います。個室に入った時だけでもホッとする時間になれば」と話します。

こうしたトイレトレーラーが少しでも早く被災地に届くよう自治体との調整を行ってるのがNPO「助けあいジャパン」が取り組む「災害派遣トイレネットワークプロジェクト」です。

ふだんは花火大会などのイベントに活用されていますが、災害が発生すると、それぞれの自治体から駆けつける仕組みです。

発災翌日の1月2日正午過ぎに七尾市から派遣要請があり、京都府亀岡市のトイレトレーラーがただちに出発、移動中も道路状況などについてLINEで他の自治体に情報共有しながら、その日の午後11時過ぎに現地に到着してすぐに利用が始まりました。

その後も北海道沼田町、大阪府箕面市、高知市、神奈川県鎌倉市、福岡県須恵町など全国20近くの自治体から支援の申し出が続き、七尾市、輪島市、珠洲市、能登町の4市町に派遣されています。

■し尿問題が難航

今、大きな問題はし尿の回収と処理です。仮設トイレの設置が相次ぐ中でし尿の回収が追いつかない状況が続いてきましたが、環境省は1日1回以上のし尿回収を目指し、バキュームカーなどを被災地に追加で配備しました。ただ、バキュームカーが運ぶ先のし尿処理施設も被災して稼働できなくなっているところが多く、そのまま一時保管するほかありません。

石川県内の断水は復旧までにまだ時間がかかりそうです。輪島市、穴水町、能登町、志賀町では2月末から3月末に仮復旧の見込み、珠洲市では2月末から順次、仮復旧の見込み、七尾市では3月末から4月以降になる見通しです。

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