【挑戦】登頂なるか !? 事故で両足と右腕失い富士山頂へ 山田千紘さんの挑戦 『every.特集』
12年前、駅のホームから転落し電車にひかれ両脚と右腕を失った山田千紘(ちひろ)さん32歳。現在、都内で会社勤めをしながら、一人暮らしをしている。そんな山田さんにはこの夏、富士登山にチャレンジするという目標があった。そこには長年抱き続けてきたこんな思いが…。
「僕は手足3本ないけどそれ以外みんなと変わらない気持ちで生きている。日々を楽しめるそんな人になりたい」
今回、義足や義手の力を借りて、残された左腕一本で富士山に挑む。山田さんが登るのは、岩場や段差が少ないとされる「プリンスルート」。1日目は6合目まで、2日目は8合目へ、そして3日目に頂上を目指す。
義足メーカーの支援を受けたこのチャレンジ。サポートするのは、明治大学山岳部のOBや、医師など10人。転ばないようロープをつなぎ前方と左右をサポートメンバーに支えられながら、足場の悪い山道を進んでいく。初日は、あいにくの雨模様だったが順調に進み、予定よりも早く山小屋に到着した。
2日目は8合目に夕方までには着きたいと午前4時前に出発。サポートメンバーがライトで足元を照らしながらの登山となった。3日間のうちで、最も長い距離をのぼる2日目は体力勝負。しかし、火山灰に足が取られて思うように進まない。さらに、転倒する場面も。急な斜面にペースが一気に落ちていく。
スタートから5時間半。標高3000メートルを過ぎると次第に疲労の色が見えてきた。思った以上に足が動かないという山田さん。それでも30分ごとに休憩をとりながら登っていく。歩き始めて6時間半。8合目が近くに見えてきた。「行けるってこと見せてやる」と自分を奮い立たせ、力を振り絞り歩いていく。
およそ8時間かけて、この日のゴール8合目の山小屋に到着した。すると…休憩中、ある登山者から「元気と勇気をもらった。ありがとう」との言葉がかけられた。その言葉に山田さんは「(事故の後)迷惑かけてばっかりの人生だと思っていたけど、自分が誰かの為になっているんだと思うと頑張る活力になる」と話し、涙をこぼした。
最終日。午前3時半に山小屋を出発、目指すのはいよいよ山頂だ。太陽が昇るころには、朝焼けで赤く染まった雲海が広がる。一歩一歩、最後の行程を進んでいく。まわりの登山者からは「頑張って! あともうちょっと!」と声がかかる。
「あとは自分との勝負だ」と日本最高峰地点を目指し、歩みを続ける山田さん。最後に立ちはだかるのは、およそ30度の急斜面。サポートメンバーに支えられながらゆっくりと登っていく。しばらくすると富士山の巨大な火口が目の前に。最高峰地点までは、あと少し。そして、ついに…「日本最高峰来たよ! 片腕1本で来たよ!」と声をあげた。
「最初は夢物語だった。寄り添ってくれた人たちのおかげで今ここに立てている。感謝しかない」
大きなチャレンジを成功させた山田さんだが、これで歩みを止めることはない。「ウインタースポーツもやってみたい。いろんなチャレンジをして可能性を広げていきたい」と話した。
※詳しくは動画をご覧ください。(2023年9月29日放送「news every.」より)