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“過去最多”の倒産数…肉の価格上昇に立ち向かう、焼き肉店の経営努力とは?

2024年7月31日 18:17
“過去最多”の倒産数…肉の価格上昇に立ち向かう、焼き肉店の経営努力とは?

日本の焼き肉店が今、ピンチを迎えている。円安による輸入牛肉の価格高騰の影響で、焼き肉店の倒産件数は“過去最多”を記録。各地の焼き肉店では、苦境を乗り越えるべく様々な経営努力が行われていた。

過去最多のペースで焼き肉店が倒産

東海地方を中心に店舗を展開する『肉のよいち』。厚切りや中落ちなど牛タン一本を楽しめるメニューや、こだわりの米にあわせる“白米専用カルビ”などがオススメの人気店だ。

香ばしい匂いに食欲がそそられる「焼き肉」。しかし今、日本の「焼き肉」にある異変が起きているのだ。

帝国データバンクによると、全国の焼き肉店の倒産件数は、2023年は1年間で22件。しかし、2024年は上半期で20件を記録、過去最多のペースで焼き肉店が倒産しているのだ。

“換気がいい”というイメージから、コロナ禍でも出店が相次いだ焼き肉店。顧客の獲得競争が激化していることに加え、大きな要因となっているのが、「円安」による輸入牛肉の価格高騰だ。

愛知県を中心に展開する『煙力』。ほとんどの客が注文するという「タン」が人気を集める焼き肉店だが、使用している肉の5割が外国産。「円安」の影響が直撃していた。

タンの1㎏あたりの仕入れ価格は、去年と比べ、1,500円もアップ。『煙力』運営会社の山北真司さんは、「(タンは)1㎏で去年であれば4,300円、今年であれば5,800円ほどという感じ」と現状を明かす。

農畜産業振興機構によると、アメリカ産牛肉(ショートプレート)の1㎏あたりの卸売価格は上昇。去年5月は877円だったが、今年5月には1,436円にまで値上がりしていた。

肉が買えない!? 牛肉を巡る“日本の買い負け”

値上がりの原因について、『肉のよいち』の柳瀬雅斗社長が挙げたのは、日本の“買い負け”。「他の国が韓国とか中国とかも、アメリカの牛肉を買い占めている。取り合いしてるので、(価格が)上がっていくという感じです」と話す。

アメリカ産牛肉における“買い負け”。日本の焼き肉店で一体、何が起きているのか。

状況を探るべく向かったのは、韓国・ソウル。焼き肉店で使われている牛肉を見てみると、100%アメリカ産となっていた。

焼き肉店の店長曰く、「アメリカ産牛肉の消費量は増えてる」という韓国の焼き肉事情。店長によると、客は値段の高い韓国産の牛肉よりも、安いアメリカ産の牛肉を好んで食べているという。

韓国でも、国産よりも比較的安い値段で手に入るアメリカ産牛肉。大量に仕入れられることから韓国でも重宝されていた。

米国食肉輸出連合会統計資料によると、今年1月から4月にかけて、アメリカ産牛肉の輸出先の割合は、日本は20%、韓国は19%、メキシコは18%、香港・中国は16%。人口が日本の半分以下の韓国も、日本とほぼ変わらない割合で仕入れていた。

韓国政府はアメリカ産牛肉を巡る競争が、価格上昇の要因になっているのでは指摘している。

点火のタイミングを工夫してコスト削減

アメリカ産牛肉の値上がり。日本の焼き肉店では、さまざまな経営努力が行われている。

『肉のよいち』は、仕入れのタイミングを工夫。『肉のよいち』の柳瀬社長は、「年間で仕入れしてるんですよ。例えば、カルビですと、夏のバーベキューシーズンは高騰して、冬は安い。ロースは逆に冬が高くなる。すき焼きとかしゃぶしゃぶシーズンで。(ロースは)夏が安い」と、各部位の“安い時期”を明かした。

冷凍保存ができる肉。部位ごとに、最も安く仕入れられるよう時期を調整することで、仕入れの価格を抑えていた。他にも、集客を狙って、写真映えするメニューの開発もしているという。

また『煙力』では、“点火のタイミング”を遅らせることで、コスト削減を図っていた。

「もともとオーダーを取った後に火をつけていたが、光熱費が今すごく上がっているので。ドリンクを提供した時に、火をつけるという工夫に変えた」と話す、『煙力』運営会社の山北さん。

以前は、注文を受けた時点でロースターに火をつけていたが、1年前から、最初の飲み物を運んだ時に火をつけるよう、点火のタイミングを数分遅らせることにしたのだ。

対策の効果について、山北さんは「客数が多いので、“ちりも積もれば”じゃないですが、すごい額になるかなと」と話す。点火のタイミングのほか、従業員のシフトも工夫。コスト削減のため、運営方法をイチから見直していた。

今回取材した2店舗はいずれも、現時点でメニューの値上げは予定はしていないという。

その理由について、『肉のよいち』の柳瀬社長は、「仕入れが高くなったからって上げちゃうと、もう疲れちゃいますよね、値上げに。今むやみに値上げすると 本当の客離れになってしまう」と思いを明かした。

また、『煙力』運営会社の山北さんは、「不景気のなか、財布のひもが堅くなるより、気軽に来てもらうのが“煙力・大衆ホルモン”」と話し、「だから、値上げはしない」と力強く語った。

最終更新日:2024年7月31日 18:17
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