まるで“森”のよう!建てられたのは約30年前、環境に特化したエコなビルの秘密に迫る!“守ること”で受け継がれてゆく想い「それが一番の持続可能」

名古屋の町中に立つ、環境と共生するビル。建設から約30年、最近はビルの“老朽化”が目立ってきました。立ち上がったのは、このビルを使う人々。今あるものを“守りたい”と思う気持ちこそ、持続可能な未来を築くための第一歩なのかもしれません。
都会に立つ“森”のようなビル
花や野菜が育てられている“屋上菜園”。実はここ、都会に立つビルの屋上なんです。
1997年、名古屋市北区に建設されたビル『グリーンフェロー』。環境に特化したビルで、2010年には公益財団法人都市緑化機構より、「生物多様性保全につながる企業のみどり100選」に選定されました。
“エコの先駆け”となったこのビル。その秘密を探っていきます。
まずはビルの外からチェック!建物の壁を植物で覆う「壁面緑化」が施されていました。夏は涼しく、冬はあたたかい断熱・保温効果が期待できます。
さらに、トイレなどに使用する電気を発電する「ソーラーパネル」も発見。今は家庭で取り入れている人も多いですが、このビルが建てられた約30年前は、世の中にまだ浸透していなかったアイテムです。
環境に対する関心が、今ほど高くはなかった1997年。なぜ、このような環境に特化したビルが建てられたのでしょうか。
キッカケは、同ビルのオーナー、牧村 好貢さんの環境に対する思い。2009年のインタビューにて牧村さんは「緑がたくさんあると、ヒートアイランドの解消になる。メリットは限りない」と、ビルに込めた思いを明かしていました。
床下には「雨水タンク」を設置
緑に覆われた壁や花や野菜が育つ屋上菜園など、町中で“森”のような存在感を放つ『グリーンフェロー』。3階には、フェアトレードのお菓子やコーヒーを揃えた「顔のみえる店 FAIR TRADE 風"s」をはじめ、同ビルの“環境へのやさしさ”に惹かれたというテナントも入っています。
1階にあるのは、子どもたちが通うプリスクール「Sky Garden Pre-school」。実はこの部屋にも、このビルならではの秘密が隠されていました。
それは、床下に設置された「雨水タンク」。庭に降った雨を浸透するタイルによって、床下のタンクにためているといいます。
しかし、オーナーの妻・牧村 初穂さんによると、現在は故障中。屋上菜園やトイレに使用していた雨水ですが、整備が行き届かず、今は非常用としてためているだけになっているといいます。
建設から約30年。故障した風力発電、壁面から落ちた葉など、ビルのあちこちで“老朽化”が目立っていました。
受け継がれる環境への想い「使う人が守る」
そんなビルを手入れしているのは、毎日ここに通う子どもたちやテナントの人たち。「みんなで気にして、みんなで守っていこう」という思いのもと、落ち葉ひろいなどに取り組んでいます。
環境と共生する『グリーンフェロー』。その魅力について、フェアトレード店の店長・六鹿 晶子さんは、「室内も木を使っている。ビルなのに木造の匂い、魅力ですね」と話します。
オーナー・牧村 好貢さんの環境に対する思いが込められたビル。その思いはビルを使う人たちによって受け継がれ、そんな人々が今、“ビルを守りたい”という気持ちでつながっています。
ビルの老朽化に立ち上がった、テナントの人々。オーナーの妻・初穂さんは、そんな人々の行動に「ありがたい。それが一番の持続可能なのかなと思う」と感謝を述べます。
時を重ねることで、朽ちていく緑や道具。ビルの設備も、いつか壊れてしまう日がくるかもしれません。
しかし、“守りたい”という人たちがいる限り、ビルに込められた思いは時代を超えて、受け継がれていくのです。