今月1日、愛媛県内ほとんどの高校で行われた卒業式。プリクラ機の無い街で叶えた卒業生の夢に…卒業生にサプライズの“動く”黒板アート！そして、105年の歴史に幕を閉じた高校も…県内の高校の「旅立ちの日」です。
デジタル技術で動く“黒板アート”で！後輩たちからサプライズ
卒業式を翌日に控えた東温高校です。教室で行われていたのは…
3年4組担任＆美術部顧問 井上真介先生：
「最後に何か贈りものができたらと思っていたんですけど、なかなか忙しくてできなかったところにサカワさんからこういうお話をいただいたので」
3年4組の卒業生に贈るサプライプレゼントの準備作業です。創業100年を超える東温市の黒板メーカー・サカワが、卒業生の思い出作りにと企画しました。
高校生と共同製作するのは‟デジタル版黒板アート”。横長の映像が投影できる黒板専用のプロジェクターを使い黒板に描いた絵と映像を組み合わせます。絵を描くのは美術部の1・2年生です。
使い慣れないチョークで描く絵に込められた思いは。
美術部 丹千尋部長：
「3年生の今までの思い出をひとつにまとめた感じ。後輩の私たちを先導してくれてありがとうございますと」
先輩への感謝と。
原画考案者1年生永山希さん：
「今から楽しい未来が待っていると、明るい雰囲気の絵にしようと思っている」
原画考案者2年生洲之内瑞芭さん：
「卒業後にみんなが華開いたらいいなと」
卒業後に始まる明るい未来への希望です。
ひとりひとり真剣な眼差しで描くことおよそ2時間。描いた絵に映像を合わせてみると…
生徒たち：
「顔がめっちゃリアルなんやけど」
「すげー」「すげー」「映画みたい」「イェーイ」
そして、迎えた卒業式当日。体育館で式が進む中、3年4組の教室では、黒板に描いた絵に映像を合わせるプロジェクターの最終調整が行われていました。
サプライズを前に。
サカワ企画事業部 黒河碧さん：
「ドキドキですね。昨日も夜おそくまで美術部の生徒が頑張って描いてくれたので成功するといいなと思っています」
そして、式を終えた3年4組の生徒が教室に戻ってきました。
生徒たち：
「えーすご！」「すご！」「えー！」「先生、睡眠時間1時間やろ」
驚く生徒たち。先生から生徒ひとりひとりに卒業証書が手渡され…。
井上先生：
「今からちょっとしたイベントを卒業の記念にしたいと思います」
いよいよ、卒業生に贈る黒板アートと映像がコラボした作品の上映がスタートです。
テーマは「明るい未来の扉が開く」。1ページずつめくれていく映像で表すのはあふれ出る高校生活の思い出。飛び交うサクラの花びらやシャボン玉に。打ち上げられる花火がこれから始まる華々しい未来を表現しています。
女子生徒
A「すごいキレイでした」
B「感動しました」
A「音楽も明るい感じで絵とマッチしていてすごいよかったです」
B「これから頑張ろうと思いました」
男子生徒：
「もう絵が完璧！最高！」
男子生徒：
「映像すごかったですね。髪の毛がゆらゆら揺らいで、鳥も飛んでシャボン玉もパチパチ。めっちゃすごかったです。感動した」
美術部の先輩：
「クラスのために私のために黒板アートを描いてくれて本当にうれしかったです。これからの自分が後押しされている感じでもっと頑張れそうです」
高校生と地元企業がコラボした卒業生への特別な贈り物。多くの感動を届けてサプライズ成功です。
サカワ企画事業部黒河碧さん：
「チョークと映像の融合で今までになかった新しい表現ができたと思います。学校の先生はなり手不足とも言われていると思うんですけど、こういったおもしろい企画を通して学校、先生、生徒の魅力をどんどん発信して、将来先生になりたい子たちを増やしていけたらないいかなと思っています」
80倍サイズの卒業証書が出現！発案したのは…
卒業式のサプライズは南予でも。およそ170人が卒業した八幡浜高校。
答辞 曽根美彩希さん：
「これまで、私たちを育ててくれた家族には、ありがとうの5文字では言い表せないほどの感謝の気持ちでいっぱいです」
卒業生に手渡された“卒業証書”。その3年間の思いの大きさを表すように…縦2.4メートル、横3.4メートル、“巨大な”卒業証書が高校内に設置されました。通常の卒業証書の80倍の大きさです！
卒業生：
「めっちゃすごいです」
「こんなの初めて。フォトスポットできて嬉しい」
女子生徒：「カメラスタンバイしてください」
保護者：「ジャンプしいや」
女子生徒：「せーの！（ジャンプ）」
この“巨大”卒業証書を発案したのは卒業生の札本日記さん。
八幡浜高校 札本日記さん：
「（八幡浜に）プリクラの機械がなくて。プリクラは、高校生にとっては思い出を形に残す大切な場所だったが、それがなくなってしまったと相談したところ、卒業生のためのフォトブースを作る企画を一緒に提案してくれて」
札本さんの企画に協力 デザイナー 中廣俊太さん：
「八幡浜には、商店街、通学路に5メートルぐらいの大きい学生服が吊るされている制服屋さんがある。そこにも負けないくらいのインパクトといったら、これぐらい大きくないとねっというところが」
札本さん発案の最後のアオハル大作戦。札本さんたちの思いに賛同した市内などの40社からおよそ50万円の協賛金が寄せられました。
プロジェクトは、巨大卒業証書だけでなく…その模様はのちほど紹介しましょう。
105年の歴史に幕…「宇和高三瓶分校」14人の最後の卒業生
この春、県内で最後の卒業式となった高校もあります。宇和高校 三瓶分校です。今年度での閉校が決まり、105年の歴史に幕を下ろします。閉校式を兼ねた卒業式。
見送る在校生はいませんが、会場には、かつての卒業生も出席し母校の最後の日を見守りました。卒業生は14人。胸元の木のコサージュは保護者や地域の人たちの手作りです。
児島万代光校長：
「私たちがバトンを託す後輩はいません。しかし私たちに引き継がれた三瓶スピリットという伝統のバトンは、三瓶で学んだ者。教えた者。関わった者。すべての人の心に宿り、その周りの人にも伝わり続けていくのだと思います」
卒業生お別れの言葉 井上望愛さん：
「みんなの顔を見るだけで、教室でくだらない話ができるだけで、しんどいことも乗り越えられました。こんなにも大切で信頼できる仲間がいたこと。これからも私の宝物です」
最後のホームルーム。卒業生から保護者へ。“感謝”の思いを伝えます。
卒業生A：
「18年間ありがとうございました」
保護者A：
「あなたを思う気持ちは少しも変わりません。これから頑張ってください」
卒業生B：
「本当に…3年間すみませんでした」
保護者B：
「就職は、こんな学校みたいに甘くないので、頑張ってください」
卒業生B：
「頑張ります」
卒業生C：
「元々、そんな話す方じゃなかったし。今ここで話しているのも奇跡だと思う。成長する機会をもらえたのは、このクラスのおかげかなと思っています」
プリクラ機が無いまちで“卒プリ”叶えたい！
卒業式も終わった夜。八幡浜市内のコワーキングスペースです。中に入ってみると…サングラスをかけ、ド派手なスタイルで記念写真を撮っているのは市内などから集まった卒業生です。
これは、八幡浜高校に設置した巨大卒業証書などを手掛けた札本さんのプロジェクトの一つ。プリクラ機がない八幡浜で、卒プリを実現させたい！
生徒：
「これめっちゃいい、これやな」
写真を選び…
スタッフ：
「卒業おめでとうございます」
卒業生：
「ありがとうございます」
その思いが叶いました。
卒業した生徒たち（川之石高校）：
「すごく楽しかったです。可愛くて小物いっぱいあって、今しかできないなって」
卒業した生徒たち（複数の高校）：
「最高です。もうヤバいです。離れるけんみんなが。最後にこの思い出ができて良かったと思います」
勇気を出して提案した卒業の日に叶えたかった夢。その夢を、地域の大人たちのサポートを受け、実現。
札本さん：
「もう、最高です。100点満点です。みんな、すごく頑張ってねという応援をして下さって本当に嬉しかったし、地域の方とこんなに直接関わることはなかったので、温かさを直に感じることができたし、すごくいい経験ができた。一生忘れられない思い出になると思います」
卒業生に聞いた！あなたの将来の夢は？
＜東温高校＞
保育士に：
「小さい子と接することが好きでそれが職業にできたらいいなと思って」
パティシエに：
「小さい頃からお母さんと一緒にお菓子作りをしていて、すごいそれが楽しくて今も趣味でつくるんですけど、それが仕事になったらいいなと思って」
美容師に：
「手先が器用なので。髪染めるのも好きやし今日いまから美容室行きます」
＜八幡浜高校＞
男子生徒：
「放射線技師になって、自分が苦労したので、その分、人に返せるように頑張ります」
男子生徒：
「あんまり決まってないんですけど、社会の役に立てたらいいなと思います」
札本さん：
「目標は、これから未来を担う世代のために、夢と希望を与えられる仕事をすることです」
＜宇和高校三瓶分校＞
女子生徒：
「赤ちゃんとお母さんの両方の命を救える助産師になりたいと思いました」
女子生徒：
「将来の夢は、ここ地元の三瓶町を活性化させることです。将来的には三瓶町に戻ってきたい」
卒業、おめでとう！
