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特集「キャッチ」コンサート?ダンスホール?いいえ、デイサービスです 利用者にもスタッフにも笑ってほしい「エンタメ介護施設」の挑戦 北九州市

2024年10月5日 7:53
特集「キャッチ」コンサート?ダンスホール?いいえ、デイサービスです 利用者にもスタッフにも笑ってほしい「エンタメ介護施設」の挑戦 北九州市
“笑い”を大切にした介護施設
特集「キャッチ」です。北九州市に「笑い」をテーマにしたユニークな介護施設があります。目指すのは「介護とエンターテインメントの融合」です。利用者とスタッフの笑顔のために、挑戦を続ける女性を追いました。

おじいちゃんの手にはペンライト。みこしを担ぐノリノリのおばあちゃんも。

ダンスホールを思わせるきらびやかな空間、実はここ、介護施設なのです。北九州市八幡西区にある、その名も「アマリリスエンターテイメントデイサービス」です。80代後半を中心に、最高齢は96歳までが利用しています。

趣向をこらしたレクリエーションに、利用者からは自然と笑顔がこぼれます。

■利用者
「おもしろいね。腹抱えて笑うけんね。」
「いいところですね。もう帰りたくない。」

「死んだ方がマシという声が刺さった」

目指すのは「笑い・ワクワク・ワンダフル」という“3W”の介護です。その仕掛け人がド派手な衣装を身にまとう、理事長の西村博子さんです。

■アマリリスエンターテイメントデイサービス・西村博子 理事長
「まず心を元気にしたい。心の元気と体の元気はつながっている。」

西村さんは15年前から介護の現場と向き合ってきました。介護とエンタメを融合させたデイサービスに本格的に取り組み始めたわけは、新型コロナが猛威を振るっていた時に耳にした利用者の声でした。

■西村さん
「コロナの自粛中に利用者さんたちの元気が本当になくなって、一日一日を無駄に過ごしていたら死んだ方がマシという声が一番刺さった。」

退屈な日々を過ごして死を待つだけの場所にしてほしくない。刺激的な毎日を過ごしてもらう方法を模索するなかで、手応えを感じたのが“笑い”でした。

■西村さん
「ちょっと利用者さんを笑わせようと思って、食事を配膳するときにメイド服を着て配膳してみたんですよ。そこからがスタートで、利用者さんがすごく喜んでくれて。」

この経験をきっかけに西村さんは、暗いイメージがつきまとう介護の現場に、エンターテインメントの要素を取り入れはじめました。

辞めたスタッフは3年間でゼロ

お手玉や丸めた紙など、さまざまなものをペアにして渡していく「もの運びリレー」や、しゃもじにのせたお手玉を落とし合う「落ちたら負けよ、しゃもじ相撲」。ゲームには自然と体が動く仕掛けがちりばめられていて、楽しみながら手足の可動域やバランス感覚を鍛えることができます。

■利用者
「見ての通りでございます。明るいもの、みんな。分かるでしょう。」
「ここに来ることを楽しみにしています。みんなと会えるし、競技するし、いろんなおしゃべりができるし、いろんな話を聞いたりして楽しんでいます。」

日に日に進化を遂げてきたレクリエーションは、SNSでも話題になっています。笑顔で元気なおじいちゃん、おばあちゃんの日常が投稿され、毎日会うことができない利用者の家族にも安心感を与えています。

■利用者の家族
「動画とかTikTokであげてくれるから、来ていないときも見ることができる。それを家族で共有して見て、孫たちも、おじいちゃんが笑顔であることがうれしいなと言ってくれるから、家族としても安心。」

■西村さん
「なんか変化ほしいよね。一回したことあるものだったら、これにどういう変化をつけてやるか。」

次の日のレクリエーションの内容を考える会議では、利用者を楽しませるアイデアが次々と生まれていました。

■介護スタッフ
「午後は体を動かすので、午前中は頭も使いながら体も動かせるのがいいかな。頭を使いながらも体を使う。」
「指先とかね。」

昨年度の全国の介護職員の離職率は13.1%でした。年間、7人に1人が辞めている介護の現場ですが、アマリリスではこの3年間で辞めた人はゼロです。

スタッフも、利用者を楽しませることにやりがいを感じています。

■介護スタッフ
「きつくても楽しい。きつくても明日の仕事に結びつけていこう、もっと利用者を楽しませたいというのが根底にあるんですね。」

この日、西村さんは、介護が必要な人が入院する病院を訪れていました。

■西村さん
「今から、紹介いただいた入居前のご本人面談をさせていただきます。」

西村さんは、"笑い"を大切にしたデイサービスがあることを直接伝えます。

■西村さん
「一人でするのではなくて、みんなでするので大丈夫です。楽しんでできると思います。」

■面談を受けた人
「これを見て、まあ楽しそうな所に見える。」
■介護スタッフ
「よかった。」
■西村さん
「見えるんじゃなくて、楽しいんです!」

利用者もスタッフも笑顔に

退院後の生活に不安を抱える患者にとって、アマリリスは大切な拠り所になっています。

■新生会病院 理学療法士
「患者さんが一番求めているところだと思うで、なかなか病気で苦しい思いをされていると笑うことができなくなったとか、笑うことを忘れている患者さんが多いので、そういう明るい施設だとすごく喜ぶと思います。」

ことし6月には、韓国から介護事業者が見学に訪れるなど、笑いをテーマにしたアマリリスの介護は海外からも注目されています。

西村さん自身も、県外の介護施設に出向いて「出張レクリエーション」に取り組んでいます。

■西村さん
「まだまだいろいろ改善できるな、介護業界というふうに思ったので。まだまだ新しいことにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。」

利用者もスタッフも笑顔に。新たな介護のかたちが北九州から広がりを見せています。

※FBS福岡放送めんたいワイド2024年10月2日午後5時すぎ放送

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