シリーズ「こどものミライ」難しい歯磨き・散髪…自閉症の子どもが抱える日常の困りごと “感覚過敏”にどう寄り添う 福岡
8月、自閉症の子どもが見ている日常生活を疑似体験するワークショップが、福岡市で開かれました。福岡市のNPO法人などが主催したもので、自閉症の子どもの親や療育関係者などおよそ20人が参加しました。用意されたのは、VR(仮想現実)のゴーグルです。
■財津ひろみアナウンサー
「自閉症のお子さんが見ている日常生活を、VRで体験してみます。」
小学校の授業を受ける自閉症の男の子の立場になり、見えている光景や聞こえる音を表現しています。話し合いの授業では、周りの話し声や黒板消しの音が、均等に大きく聞こえるため集中できません。まわりの人には聞こえないような蛍光灯のわずかな音がうるさく感じたり、光がまぶしく感じたりして、耐えられず走り出してしまいます。
■財津アナウンサー
「私が体験したのは数分間でしたが、ゾワッとしたり全然集中できなかったり。これが常に日常にあるかと思うと、すごくストレスを抱えているかもしれないと思いました。」
■参加した人
「自分がそう感じないので、そんなことないよ、大丈夫よってつい言ってしまうけど、そんなことはないんだなと。」
様々な刺激に対して過度に敏感であることを「感覚過敏」といいます。生まれつきの脳機能の障害である自閉スペクトラム症は、周囲の人と同じ感覚情報を受け取っても、脳が異なる捉え方をすることがあるため、多くの人にこのような感覚の異常があるとされています。日本では、自閉スペクトラム症は100人に1人いると報告されています。
「感覚過敏」による日常の困りごとは、どのようなことがあるのでしょうか。
「何か理由があるのかなと少し思ってもらえたら」
前田朋里さんと息子の前田朔太郎くん(7)です。朔太郎くんは、自閉スペクトラム症と知的発達症と診断され、福岡市の特別支援学校に通っています。
私たちが取材している最中、朔太郎くんはおむつ一枚になっていました。
■前田朋里さん
「触覚過敏で (衣服を)脱いでしまう癖があるので、(肌に)触れるものと、ぎゅっときつい服がきらいなのかな。」
そのため、いつもゆったりとした、つなぎの服を着せています。
口の中の触覚過敏により歯磨きを極端に嫌がるため、2週間に1回、障害児歯科に通って磨いてもらわなければなりません。
また「聴覚過敏」による困りごともありました。
■朋里さん
「突然大きな音がすると、すぐしゃがんだり行動を停止してしまったり。人の多い公園で子どもの声が苦手だったりすると、急に走り出したりて『あぶないやろ!』って(他人から) どなられているのを見て悲しくなって。」
特に朋里さんが難しく感じているのが「散髪」です。そのため、子ども専用の美容室に行っています。
椅子に座った瞬間、突然、店の外に飛び出しました。店内の様々な刺激に敏感になったようです。その後も何度か走り出しました。
■店員
「お耳ふさいでおこうか、お願いします。」
バリカンやハサミの音をさえぎるため、朋里さんが朔太郎くんの両耳をふさいであげると、この日は比較的落ち着いて散髪することができました。
このような外出の時に、朔太郎くんは必ず「ヘルプマーク」をつけています。見た目ではわからなくても、援助や配慮を必要としていることを周囲に伝えるためのマークです。
■朋里さん
「自閉症や感覚過敏がある人もヘルプマークを使っている人がいると知ってほしい。変わった行動や問題行動をしていても、何か理由があるのかなと少し思っていただけたら、親としてはうれしい。」
自閉症の子どもが感じる日常生活のVRを作成した、発達障害支援アドバイザー協会の白石浩一さんです。白石さんは、感覚過敏を我慢させるのではなく、例えば部屋の電気をつける時には「今からつけるよ、きつくなったら手を挙げて」と声掛けをするなど、まわりが寄り添っていくことが大切だといいます。
■発達障害支援アドバイザー協会・白石浩一さん
「知ることによって、変わる支援があったり伴走といわれる寄り添いがあるので、自分自身は関係ないんだではなくて、支援の輪が広がっていくといいと思います。」
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年9月26日午後5時すぎ放送