胡蝶蘭で就労支援 障害者の自立へ向けて栽培技術を訓練 北九州市の会社が新たなビジネス
14日、北九州市の農園で、障害者が栽培した胡蝶蘭(こちょうらん)が初めて出荷されました。花の栽培を通じて、障害者の雇用確保と企業の社会的責任の達成につなぐ、新たなビジネスモデルを目指しています。
北九州市小倉南区の農園「Aimowl(アイモール)ガーデン」です。去年12月に開設された就労継続支援B型の事業所で、現在、知的障害や精神障害がある10人が胡蝶蘭を栽培する技術を学んでいます。
■馬渡隆史さん(38)
「いつもより長めにやるのですが、(水やりを)7秒でやっています。毎日楽しく作業しています。」
馬渡隆史さん(38)はここで働く前、いわゆる“夜の仕事”や物流倉庫での作業などをしてきましたが、いずれも長続きしませんでした。5年前には、発達障害と双極性障害と診断されていました。
■馬渡さん
「うつになると、どうしても働けなくなって辞める。その繰り返しだった。絶望的な、どこに頼っていいか分からないような状況に置かれたこともありました。今ここで働けるのが本当にありがたいです。」
農園では14日、30鉢の胡蝶蘭が初めての出荷の時を迎えました。
■馬渡さん
「門出という感じです。ここで終わりじゃない。これからまた新たなスタートを切る花なので、とてもうれしいです。」
3億円以上をかけてこの農園を立ち上げたのは、北九州市小倉南区に本社があり、家庭用浄水機器を製造・販売する「タカギ」の社長です。
国は、従業員40人以上の事業所に対し、障害者を雇用するよう法律で定めていますが、法定雇用率を達成している企業は半数にとどまっています。
この農園では、将来的に胡蝶蘭を育てる技術を身につけた障害者を社員として雇用した企業に農地を貸し出し、年間2万本の胡蝶蘭を出荷する新たなビジネスモデルの構築を目指しています。
■アイモール・高城いづみ社長
「(障害者が)自立できるように、ここでB型でしっかり訓練をしながら、貸し農園の方に移って企業に就職していただくのが最終目的です。北九州市のみならず、いろんな企業の方たちと助け合いながら、社会の一端になればいいなと思っています。」
■馬渡さん
「お昼のお弁当の時間も1人で食べることもありましたし、孤独が自分の中につきものだったので。今まで生きてきた中で。ここで支えてくれたスタッフ、仲間、病院の先生、親、友達、全員に恩返しするという意味でも、社会復帰が目標です。」
企業としての社会的責任を果たし、障害者の経済的自立を支援する新たな胡蝶蘭ビジネスが、北九州市で産声を上げようとしています。