特集「キャッチ」SNS型投資詐欺を防げ! “堀江さん”偽広告で1200万円被害の男性が体験した巧妙な手口 堀江さん本人に聞いた「さらなる問題」 福岡
■被害に遭った60代男性
「有名な人で、ちゃんとした広告で顔出してやってるんで、まさか詐欺だとは思わなかったですね。」
趣味として20年以上投資を続けてきたという福岡県内の60代の男性は、ことしに入って1200万円をだまし取られました。きっかけは、スマートフォンのアプリ内で目にとまった、ある広告でした。
「株で一緒にもうけましょう」こう呼びかけていたのは、実業家の堀江貴文さんを名乗る人物です。
有名人の名前にひかれ、軽い気持ちで広告にアクセスしたところ、“堀江”さんのLINEアカウントを追加する画面が現れ、やりとりが始まりました。
「はじめまして、私は堀江貴文です。最近、優良株や投資戦略を求めて、多くの人が私のLINEを追加しています。」
その後、この“堀江”さんから「資産倍増」という名前の投資グループに招待されました。
グループには40人あまりが参加し、株の値動きや、もうけた話が飛び交っていたといいます。
■被害に遭った男性
「株の情報で、これが急騰するという株を紹介してくれて実際に上がったので、ちゃんと分析して教えてくれているんだと思った。」
あの“堀江”さんが投資の指南をしている。男性が疑うことはありませんでした。
LINEのやりとりを始めて数日後、堀江さんのアシスタントを名乗る女性から、さらなるもうけ話として、原油の投資を持ちかけられました。
■被害に遭った男性
「4回で50万、150万、800万、200万。一番最初は50万ぐらい振り込んで。600ドル(約9万円)ぐらい増えたのかな。」
「取引に必要だ」とインストールを指示されたアプリ上では大きな利益が出たことになっていて、実際にお金を引き出すこともできたといいます。
さらに、男性が信用した理由は、もうけが出ていたことだけではありません。
■被害に遭った男性
「わざと写真を送ってきたり、いろいろしていましたよね。顔写真。」
男性が見せてくれたのは、女性アシスタントとのやりとりです。
■やりとりの文面
「おやすみなさい。早めに休んで、体調に気をつけてくださいね。」
投資に慣れた男性にとって、このようなアプリでのやりとりは初めてでしたが、徐々に相手に親近感がわき、疑う気持ちはなかったといいます。
詐欺だと気づいたのは、ささいなことがきっかけでした。
振り込んだお金を引き出せないことから問い合わせると、その後、急に連絡が取れなくなったといいます。男性はあわせて1200万円をだまし取られたとして、警察に被害を届け出ました。
その後、アシスタントとされた女性の顔写真も、全く別人のものを使っていたことがわかりました。
ニセの広告に名前や写真を使われた堀江貴文さん。福岡を訪れた堀江さんに直接取材することができました。あらわにしたのは憤りでした。
■堀江貴文さん(51)
「迷惑ですよね、いろんな意味で。詐欺広告が出てるから、僕が経営していたり投資している会社の広告も詐欺かもしれないと思われたり、僕がお金をもらって広告宣伝しているCMまで疑われていたり。それの評判も悪くなっている。」
堀江さんは4月、実業家の前澤友作さんと、自民党の会合で対策の必要性を訴えました。
SNSの運用事業者側も対策を進めていますが、その対策が堀江さんにさらなる問題を引き起こしているといいます。
■堀江さん
「僕が出ている広告は(審査のために)AI(人工知能)を使っていると言っているが、自動的に僕が出ている広告をとりあえず消そう、僕の顔を使った広告を出しているのはみんな詐欺師だと。正規の広告もウソの広告も、全部まとめてだめにした。審査してないんですよ。」
直接会うことなく言葉巧みに相手を信用させ、金をだまし取るSNS型投資詐欺。福岡県警によりますと、その被害は去年10月ごろから急増し、ことしに入り2月までに49件、被害額は7億4000万円に上ります。
インターネット犯罪に詳しい専門家は、日常的に接するSNSの中に詐欺のきっかけが潜んでいる危険性を指摘します。
■日本大学 危機管理学部・木村敦 教授
「気軽にアクセスできる情報源としてSNSがあるので、それが詐欺の入口でもあるというところが非常に脅威になっている。いったんアクセスしてしまうと、なかなか自分だけで見破ることが難しい。そういった危険な詐欺の加害者も潜伏しているんだということを強く認識し、慎重に利用することが重要。」
わずか1か月で1200万円もの大金を失った福岡県内の男性。最後に訴えたのは、犯人に対する怒りの言葉です。
■被害に遭った60代男性
「人の金をだまして取るっていうのは許せない。 汗水たらして稼いだお金をだまし取るとか最低だと思っています。」