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産直市などで販売される手作りの漬物や梅干しがピンチ 食品衛生法の改正に伴う生産者の悩み【徳島】

2024年4月22日 20:00
産直市などで販売される手作りの漬物や梅干しがピンチ 食品衛生法の改正に伴う生産者の悩み【徳島】
今、産直市などで販売されている手作りの漬物や梅干しがピンチです。

食品衛生法の改正に伴い、漬物の販売に許可が必要になるためですが、長年、製造を続けていた生産者は「残念」と肩を落としています。


梅干しを作る 三木清子さん(78)


徳島県つるぎ町貞光の農家・三木清子さん(78歳)は、約30年前から手作りした梅干しを町内の産直市に出荷してきました。

(梅干しを作る 三木清子さん(78))
((Q.いつ漬けたものですか?)去年の6月。(Q.1年でどれぐらいの量?)120kgぐらい。塩は1割5分で、言い伝えで習って、それをそのまましていっきょる。昔から代々そうやってしてきたけんな」

三木さんは、長年、梅干しやらっきょうの漬物を作ってきました。

利益はあまりなく、手作りの味を多くの人に食べてもらえればとの思いで続けてきましたが、2024年5月いっぱいで出荷をやめることにしました。

(梅干しを作る 三木清子さん(78))
「もう来月いっぱいで許可がなかったらできんって言うけんな。もう高齢で歳が歳やけん、一生懸命つくって出しよったけど、出荷ができんようになったら寂しいけど、それもしょうがない」


なぜ、漬物の製造・販売に許可が必要に?


つるぎ町の道の駅にある産直市です。

地元で採れた新鮮な野菜だけでなく、手作りの漬物がお目当ての人もたくさん訪れます。漬物はこれまで、許可がなくても製造・販売することができましたが、2021年に食品衛生法が改正されたため、それ以降は一定の基準を満たした上で保健所の許可が必要になりました。

改正前に製造していた人を対象にした経過措置期間も、5月で終了します。

しかしなぜ、漬物の製造・販売に許可が必要になったのでしょうか?

(県安全衛生課 吉田理恵課長補佐)
「平成24年に札幌市の会社が製造した白菜のお漬物で、腸管出血性大腸菌O157による食中毒が発生し、死者の方が出たり、入院の方も多数出るという事件が起こりました。で、今回、食品衛生法の改正に伴って、食中毒のリスクや過去の食中毒をふまえて、新たに今回漬物の製造に許可が必要となりました。一般的なもので言えば、たくあん漬けとか、白菜漬けとか梅干しとかが有名と思うけど、どんな風に作る、どんな原材料を使ってどんな風に販売するかによって、どんな営業許可が必要かが変わってくるので、食品を作る場合には保健所の方にご相談いただきたいです」

許可を得るには、一定の基準を満たす専用の製造場所が必要です。


漬物を作る 磯貝ハマ子さん(76)


つるぎ町貞光の雑穀農家・磯貝ハマ子さんは、梅干しを年間120kgほど作り、地元の産直市で販売しています。

法改正後も販売を続けようと、2024年に専用の作業場を構えました。

(漬物を作る 磯貝ハマ子さん(76))
「ここが梅干しの部屋になります」

磯貝さんは、2023年、申請に必要な書類を保健所に提出し、2024年1月に自宅横の敷地に作業場を新設しました。

その後、保健所の職員が施設の確認を行い、3月、許可を得ることができました。

(漬物を作る 磯貝ハマ子さん(76))
「たくわんとからっきょう、そんなのをつけようかなと思って。決まりは、この手洗い場と流し台、これは絶対いる。約60万円ぐらいいっとる、これだけの施設で」

製造場所には手洗い専用の洗い場と、調理などに使う流し台が必要で、作るものによっては換気扇や冷蔵庫なども必要になってきます。

磯貝さんは、町の補助金制度を利用して25万円の補助を受けることができましたが、それでも大きな負担であることには違いありません。

しかし、磯貝さんは、跡を継ぐ息子夫婦のために漬物作りを続けることを決めました。

(漬物を作る 磯貝ハマ子さん(76))
「家の味をみんなに食べてもらいたいで。んで今、うちも若いしが跡を継いでくれよるから、やっぱりしようかなと思った。そうでなかったら私らの代だけでは諦めようかと思うけど」


漬物を作る森野智恵子さん(75)


施設を作る費用が重荷となり、販売をやめる人もいます。

つるぎ町の森野智恵子さんは、15年前からたくあんやキムチを町内の産直市に出荷してきました。

(漬物を作る森野智恵子さん(75))
「ボケ防止で手も動かせるし、家でずっと百姓するよりは、週に1~2回車で出入りして、みんなにも会えるし、それで楽しみにしてた。作業場建てないかんでしょ、そのお金絶対に取り返せんと思う。それでやめるようにしました」

森野さんの家で採れた大根で作るたくあんや、韓国の唐辛子を使ったオリジナルレシピのキムチは、産直市の中でも人気があったそうです。

(仲宗根義典記者)
「そんなに唐辛子きつくないですね、やっぱりご飯に合う味ですね」

売り上げは多い時で年間30万円ほどありましたが、利益はそのうちの3分の1ほど。

森野さんは、お金よりも、食べた人が「おいしい」と言ってくれることが何よりも楽しみだったと言います。

(漬物を作る森野智恵子さん(75))
「利益ってあんまりない、実際のところ。(今後も)作るのは作るけど、キムチでもするんやけど、友達にあげたり、いろんな人にあげた方がええかなと思って」

貞光ゆうゆう館では、多いときは10軒ほどが梅干しやたくあんなどを出荷していましたが、許可が必要になる6月以降は、3~4軒に減るかもしれないと、担当者は不安を口にします。

(産直市の客)
「(Q.なくなったら困りますか?)困るね、昔のおばさんが漬けたような、美味しいわ」
「昔ながらの味がなくなっていくのは残念ですよ」

時代の流れの中でまた一つ、大切なものが失われようとしています。

県安全衛生課によりますと「記録のある限り、県内で漬物を原因と断定した食中毒はない」ということです。

また、「漬物に当てはまるもの」や「許可を得るための製造所の基準」などは、個人での判断は難しいので、保健所へ気軽に相談してほしいと呼びかけています。
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