「多くの国立大学の経営は限界」熊本大学の授業料 来年度以降引き上げ検討の可能性
大学の授業料の値上げについて、東島大記者とお伝えします。
(東島記者)
ことの発端は、東京大学が来年度から授業料を値上げする方向で検討に入ったと報道されたことです。引き上げ額は年間10万円以上。額も大きいです。
(緒方キャスター)
国立大学の授業料は誰が決めるのでしょうか?
国立大学の授業料は文部科学省の省令で年間53万円と決められていますが、20%を上限に大学の判断で増額が認められています。日本を代表する東京大学が授業料の値上げに踏み切れば、全国の大学に広がるという見方が広がっています。
では、熊本大学はどうなのでしょうか。小川久雄学長は5日、今年度いっぱい状況を見極め、来年度以降、授業料引き上げの検討に入る可能性に言及しました。
■熊本大学 小川久雄学長
「学生の教育環境、これをどこまで確保できるか今見極めているところです」
小川学長はこのように述べ、多くの国立大学の経営は限界に来ているとしました。その一方で、熊本大学で学ぶ学生の10%が経済的な理由で授業料を減免されているほか、奨学金を受けている学生も40%にのぼっていて、授業料を引き上げれば影響が極めて大きいとしました。
■熊本大学 小川久雄学長
「TSMCとの共同研究も始めますし、熊本大学は非常にそういう意味では恵まれている。それでも厳しいのは確かです。学内で会議があっても、もうその話題で大変な状況。非常に皆さん苦しんでる」
Q見極めにかかる時間は?
「具体的には難しいんですが、少なくとも今年いっぱいはみてみないとわからないだろうと」
小川学長はこのように述べ、状況が改善しなければ来年度以降授業料引き上げの検討に入る可能性に言及しました。
(緒方キャスター)
どうしてそんなに国立大学の経営は厳しいのでしょうか?
(東島記者)
国立大学の予算の根源となる国から交付されるお金、運営費交付金は国立大学が法人化されてから20年ずっと減らされていて、熊本大学でもこの8年で10億円減っています。
そのため、大学の研究者は自分で研究費を調達するための手続きなどに追われ、20年前より35%も研究時間が削られていることが、文部科学省の調査でわかっています。
(畑中香保里キャスター)
日本の研究力の低下につながっているということですね。
(東島記者)
熊本大学が今いちばん恐れているのは、この夏からの電気代の値上げだそうです。
そこで授業料値上げという話が出てくるのですが、熊本のように地方の場合、学費が上がれば大学進学をあきらめてしまう子どもたちが増える可能性が高いと言われています。
(緒方キャスター)
実際、授業料減免や奨学金を受給している学生が半分を占めていますよね。
(東島記者)
大学経営と教育機関との使命の板挟みの中、熊本大学を始め、全国の大学関係者は東大の授業料値上げの推移を固唾を呑んで見守っています。