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方言は心のふるさと “伊予弁”を語り続けて21年…次世代に繋げる「お伽座」

2025年1月16日 18:55
方言は心のふるさと “伊予弁”を語り続けて21年…次世代に繋げる「お伽座」

地域福祉などの分野で貢献のあった個人や団体に贈られる南海放送賞。3回シリーズで今年度の受賞者を紹介します。初回は、伊予弁を次の世代に継承しようと語り部活動を続ける松山市の「お伽座」です。

“方言”。それは「ある地方だけで使う共通語と異なる単語」。愛媛で生活する私たちにとって身近な“伊予弁”を次の世代に語り継ぐ活動を続ける人たちがいます。

松山市を拠点に60代から80代までの18人で活動する「お伽座」。1月7日、翌週に控えた「語りの会」に向けメンバーたちが集まりました。

グループを立ち上げた大亀昌子さん(82)です。大亀さんは、およそ30年前自宅の一室を開放し高齢者生きがいサークル「青春友の会」を結成。そこで行っている語り部活動の発表の場をつくろうと、2003年に誕生したのが「お伽座」でした。

これまで21年間、のべおよそ50人のメンバーで月に8回程度、小学校や公共施設で愛媛に伝わる民話や昔話を伊予弁で語る活動を続けてきました。

座亭・大亀昌子さん:
「(こだわりは)『できるだけ愛媛の方言を使ってやりましょう』と。皆さん出身母体が違うので、東・中・南予弁でやっています」

メンバー:
「あるところにぶつという奇妙な名前の男の子がおったんと」

語りの題材は、メンバーが郷土史から掘り起こしたり地域のお年寄りから聞き取ったりした昔話で、それを伊予弁に書き換え、みんなで表現や発音を確認する作業を重ねます。

メンバー:
「1行目の“奇妙な”というのがあるでしょう。だいたい“いなげな”って言うんですよね」「東予では“いなげな”とは言わない。“妙な”と」

「方言と思っていたのが標準語だったりとかいろいろあるから。これ作るときにね」

表現に迷ったときに開くのは、お伽座が去年7月に発行した「伊予の方言辞典」です。6年がかりで完成させたこの辞典には、お伽座がこれまで語ってきたおよそ1200話から拾い集めた伊予弁、2200語あまりが記されています。

座亭・大亀昌子さん:
「伊予西条の玉之江に正直でぎょうはん(大変)働きもんのお百姓が住んどったんじゃ」

この日のリハーサルでは、およそ3時間かけ細部にわたって修正点などを確認しました。

メンバー:
「21周年の語りの会を本当に成功させましょうね。頑張りましょう!」

迎えた本番当日、会場はおよそ90人の観客でいっぱいに。いよいよ、「お伽座21周年新春語りの会」が開演です。

メンバー全員の「語り」の披露の場として毎年この時期に開催している語りの会。今年はそれぞれが選んだ17の昔話を3分から7分ほどで語ります。

座亭・大亀昌子さん:
※久妙寺の坂の下のおい蔵さん
「丹原の久妙寺に差し掛かったときのことよ。坂の下の辻にひっそりと立っとるおい蔵さんを見つけたんよ」

どこか懐かしみのある伊予弁のやわらかな語り口に観客も聞き入ります。

会長・伊賀澄子さん:
※立神様の恋物語
「立神様いうんわな、ヘビの神様ですらい。そこまで来たとき娘はなんぞ不吉なことを感じましてな後悔したんですがの。もうそのときは遅うてそのきれいな男衆の子をみごもっとったんよな」

およそ2時間の語りの会は大きな拍手に包まれて幕を下ろしました。

来場者:
「表情豊かに皆さんただ読むとかではなくて演じ切っているような感じで。私たちもだんだん薄れてきていますけど、やっぱり来て話を聞くと、子どもの頃のことなんかも思い出すような感じですごく懐かしい思い」

座亭・大亀昌子さん:
「伊予弁を聞いていると“心のふるさと”ではないけど『原点に戻ってきたな』と。“人生の伴走者”のような感じ。お伽座とともにこれまで歩んできたんだなって」

会長・伊賀澄子さん:
「私たちの役目は”次の世代に繋げたい”ということで、若い人たちにもぜひ興味をもっていただいて一緒に活動してくれる方がいたら嬉しいなと思う」

最終更新日:2025年1月16日 18:55
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