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「この仕事で何千頭と救っていける」27年間夢みた動物愛護センターが完成!開設に奮闘したある獣医師の願い

2024年5月16日 18:30
「この仕事で何千頭と救っていける」27年間夢みた動物愛護センターが完成!開設に奮闘したある獣医師の願い

犬185頭、猫544頭。これは昨年度、愛媛県松山市が保護・収容した犬と猫の数です。その数は、年々減少傾向にあるものの、本来あるべき姿である“ゼロ”からは程遠いのが現状です。

そんな中、松山市は独自の動物愛護センターを新たに設置しました。センターの開設を夢見て27年。奮闘してきた、一人の獣医師の思いに迫りました。

今年3月、松山総合公園に新たな動物愛護センターが誕生しました。関係者を案内するのは、松山市保健福祉部の木村新(あらた)副部長。獣医師であり、センター誕生の立役者です。

木村さん:
「ここには動物がいないのが本当はいいんです」

これまで市内中心部にあった収容室は動物への環境が整えられず

松山市内中心部にある松山市保健所の分室。センター完成前までは、この場所に、親から育児放棄された子猫、迷い犬などが保護・収容されていました。およそ50㎡の敷地に犬6頭、猫は30頭以上が収容されていたこともあります。

元々、犬や猫の収容を想定して作られた場所ではないため…

松山市生活衛生課 森貞完爾さん:
「戸を開けていたり、やっぱり夜とか吠える犬もいるので、鳴き声とかが近所のご迷惑になったり、そういうのが一番辛いというかご迷惑かけてるなと」

また、感染症などの治療で、隔離が必要なケースを除き、犬と猫の収容は同じスペース。

冷暖房はありますが、自分で体温調節ができない赤ちゃん猫と成犬では、適切な温度が異なるため、夏場は犬にとって大きなストレスになることも…

森貞さん:
「見ていただいたら分かるんですけど、(犬の)噛み跡ですよね。やっぱり狭いところに入れられて暗いと言ったらいけないんですけど」

松山総合公園の一角で新センターの建設を進めてきた

施設の老朽化と管理に限界を迎えつつある中、去年夏に始まったのが…松山市独自の動物愛護センターの建設です。松山総合公園の一角に設置された新たな施設では、犬は15頭、猫は86頭まで収容可能になります。

松山市生活衛生課 住友大輔副主幹(当時):
「木造の約200平方メートルの平屋の建物ができます。面積だけで言うと4倍近くぐらいになる」

初の獣医師として市役所に入庁 木村さんが夢に描いた施設

去年12月。センターのオープンを前に、その完成に長年夢を抱いてきた職員、木村さんが施設の中を案内してくれました。

木村さん:
「俺が入庁した時から旧施設だったからね。20何年間でやっとできました」

木村さんは1997年、獣医師として初めて、松山市役所に入庁した職員です。

木村さん:
「現実的(な構想)は3年やね。構想だけはいっぱいあった。色んな施設と複合的に、それぞれが単独であっても人は集まってこないので。色々な目的の人が通り抜けていく中で、教育の場として成り立っていくという場所に作りたかった」

「助けられる動物を自分たちで助けられる」念願の診察室も完備

獣医師として描いてきた夢。その大きな特徴の一つが…

木村さん:
「できたね。ここが診察室」

保護・収容された犬や猫の簡単な治療ができる部屋です。

旧施設はケガをした犬や猫の治療をできるスペースがなく、保健所内に獣医師はいるものの、本格的な治療や入院措置は、周辺の動物病院や県の動物愛護センターに頼るしかありませんでした。

木村さん:
「獣医が獣医らしく働ける。(治療が)できないということを今まで我慢してたので、それができるようになるというのは獣医としては本当に嬉しい。助けられる動物を助けられるんだもん、自分たちで」

行政機関に勤務する獣医師にとっても、新たな働き方が可能となる施設なのです。

木村さん:
「でもね、ここじゃないのよ!向こう向こう。メインは向こうなんよ!共に暮らしていくためにこういう場所にあって学んでいく。新たな動物愛護の世界」

「施設のメインは別にある!」と強調する木村さん。

果たして木村さんの言う新たな動物愛護の世界とは…。

「はぴまるの丘」としてオープン 動物たちが快適に過ごせる環境に

着工からおよそ7か月。

“はぴまるの丘”として、松山市の動物愛護センターの運用がスタートしました。

施設に入ってすぐのところに設けられたのは、収容された犬や猫と里親希望者がマッチングするためのスペース。

その奥には、犬と猫で分けられた広い収容室。犬の収容室からは、外に出られるスペースもあり、自由に運動することができます。

さらに、保護された犬や猫を洗うことができるトリミングルーム。

診察室にも必要な資機材がしっかり整えられていました。

木村さん:
「一応頑張ったらできました」
市民:
「ありがとうございます」
木村さん:
「長いことかかりましたけど。もう私は今年で退職です。あと数日」
市民:
「え?4月?」
木村さん:
「そうそう。でも(センターを)作って退職しますので」

「みんなで知識や気持ちを共有する場になればいい」木村さんの願い

3月末で、松山市役所を後にする木村さん。最後に取材班を案内してくれたのは、強調していたメインの施設です。

木村さん:
「ここが欲しかった。出来れば止まってほしいです」

公園内の管理棟に設けられた、啓発スペース。

パネルや動画などを使って、公園の利用者にペットを飼う心構えや防災対策を紹介しています。

ここが、木村さんが目指してきた新たな動物愛護への第一歩です。

木村さん:
「動物を保護する場所というのが教育の場に変わればいいかなと。みんなで知識や気持ちを共有する場になればいいかなと思っている。遊具に行く途中にこういうのがあるんだなって。その人たちに気づきを持ってもらって小さな子どもに『ここはこういうことが書いてあるのよ』って言ってくれればそれで十分。そのきっかけになるのが、ペットショップではないと思ってる」

センターのオープンからまもなく2か月。

女の子:
「ネコってこんなに鳴くん?」
職員:
「赤ちゃんだからね」
男の子:
「(この子は)どうしたんですか?」
職員:
「子ども産んでお母さんネコが飼育放棄したんじゃなかろうか」

休日には、様々な世代がセンターを訪れ、保護された犬や猫と触れ合います。

参加者:
「散歩ってハーネスでもいいんですか?」
講師:
「ハーネスでも全然いいです。ちょっと緩いんですよね」
参加者:
「あ、緩いんですかこれ」

広い敷地を活かして、犬のマナー講座が行われていました。

愛犬と親子で参加:
「楽しかったね。(はぴまるの丘を)身近に感じられるのでやっぱり意識が上がってくると思います」

愛犬と参加:
「こっち側に来ることはなかったので今日はすごく新鮮で(はぴまるの丘が)こうやって目に触れる場所にあることで、少し行きやすくなったんじゃないかなと」

松山市生活衛生課 吉岡祐郁主幹:
「(旧施設と比べて)利用者の数はかなり多くなっていると思う。ここの公園を活かして緑のある中で色々な教室を行うことで動物愛護の気持ちを養ってもらいたいし、ペットを大切にする気持ちを醸成してほしい」

「目の前のしんどさを乗り越えて」後輩獣医師へ託す夢のつづき

新たな“動物愛護の世界”を目指して、これからの道を後輩獣医師たちに託した木村さんが思うことは…

「長い目標を持ってやってほしい。想えば叶うので。この施設ができるとか僕の仕事で、動物を何千頭と救っていけるわけです。一頭一頭を積み重ねていく獣医とは違うんですが、命をしっかり守っていけるという仕事なので、そういう意味で(後輩の獣医師には)目の前のしんどさを乗り越えてほしい」

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