「一筆書きで書ける図形のルール」とは?元数学教師が「一筆書きアート」で数学の魅力を表現
宮崎市在住の元数学教師、渡邊陽平さん(35歳)は、「一結-ichiyui-」というアーティスト名で一筆書きアートの制作活動を行っています。
渡邊さんが手掛けるアートは、普通の絵のように見えますが、実はプログラミング技術を活用して描かれた一筆書きアート。
使用するのは一般的なボールペンで、途切れることなく一筆で描かれる線が作品の特徴です。
この一筆書きアートの工程は、描きたい画像をコンピュータに取り込み、色をシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック(CMYK)に分解。その後、画像を点に変換し、点と点をランダムに結びつけるプログラムを使用して線を描いていきます。
濃い部分ほど多くの線が集まり、薄い部分は少ない線で表現されるため、立体的な表現を楽しむことができます。
渡邊さんはCMYKの分解には「Python(パイソン)」、一筆書きには「Processing(プロセッシング」のプログラミング言語を駆使し、4色の線を重ね合わせて一つのアート作品を完成させているのだそうです。
一筆書きアートを始めたきかっけ
渡邊さんは高校で8年間数学を教えていましたが、受験や就職活動のための数学に偏ってしまっている現状に疑問を感じていました。
「本来、数学はもっと面白いものだ」と伝えたいという思いから、一筆書きという数学的なジャンルを取り入れたアート制作を始め、この活動を通じて、数学の楽しさをより多くの人々に伝えたいと考えています。
数学の楽しさを伝えるYouTubeチャンネルを開設
渡邊さんはYouTubeチャンネル「おけいさんといっしょ」も運営していて、数学の授業を公開しています。
動画では、クラスの中に同じ誕生日の人がいる確率や、微分・積分など高校数学を楽しくわかりやすく説明しています。
元々は自分の生徒たちのために始めたこのチャンネルですが、視聴者は全国に広がり、今では登録者数が1万人を超える人気チャンネルとなっています。
特に大人からの反響が大きく、「学生時代にわからなかった微分が今になって理解できた」などのコメントが寄せられているのだそうです。
番組のために一筆書きができる図形のルールについても教えてもらいました。
一筆書きが可能な図形は、奇数本の線が出ている点(奇点)が0個または2個であることが条件です。
このようなシンプルなルールを学ぶことで、誰でも一筆書きを楽しむことができ、数学的な思考を深めるきっかけにもなります。
教育現場の課題をテクノロジーの力を使って解決
渡邊さんは現在、教育関連のアプリを開発する会社に勤務しながら、リモートでデータ分析などの仕事を行っています。
教師としての経験やスキルを活かし、教育現場の課題をテクノロジーで解決する取り組みについて「データと数学を使って社会にどのような価値を提供できるのかという挑戦の意味もある」と話します。
また、個人を尊重してくれる会社なので、教員の頃にできなかった事に挑戦することができていることも魅力で、一筆書きアートや数学のオンラインレッスンも提供するなど、教育活動とアートの両立を目指しています。
渡邊さんが提供するオンラインレッスンでは、単なる公式の暗記ではなく、数学の本質を理解することに重点を置いています。
オンラインレッスンを受講する京都府在住の高校生は、「こういう解き方があるんだという気付きや面白さ、自分の解法があっているかを全部教えてくださるからおもしろい」と話します。
渡邊さんは「数学やプログラミングはあくまでツールであり、相手のことを考えてどう伝えるかが重要。大人になって学ぶことで見つかることもあるし、子供がビジネスを学ぶこともできるし、大人も子供も一緒に学ぶ社会、垣根のない社会を作りたい」と話します。
作品の一つの線が「人と人との絆を結ぶ」というコンセプトを表す一筆書きアート。
渡邊さんは、オーダーメイドで記念写真をアートに仕上げるサービスも行っていて、特別な一筆書きアートを制作することもできます。
U-dokiのために作っていただいた作品
拡大してみると、一筆書きであることがわかります!!
今後も、数学の楽しさやアートの魅力を幅広い世代に伝えるために活動を続けていく渡邊さんにご注目です。
数学が苦手な学生や、大人も楽しめる数学の体験レッスンも実施中。