2022年も外交のネックはコロナ
夏に参議院選挙を控える2022年。得意の外交で成果をあげたい岸田首相。アメリカ・バイデン大統領との首脳会談や停滞している近隣諸国との外交など、取り組むべき課題は山積みだが新型コロナが「対面外交」の壁として立ちはだかる。
■日米首脳会談 約束の早期開催は?
22年、岸田政権にとって最初の外交課題となるのが、アメリカ・バイデン大統領との対面による会談の早期開催だ。岸田首相は就任直後にバイデン大統領と電話で会談し、対面による会談を早期に開催することを確認していた。
21年11月、初の外国訪問となった気候変動問題を話し合う「COP26」では、異例の8時間滞在という強行日程の中、バイデン大統領と短時間、懇談したが、会談には至らなかった。
その後も日本政府は、臨時国会の召集前のタイミングなど、2021年中の首脳会談の開催を目指したが、アメリカの内政状況や新型コロナの変異株「オミクロン株」の感染拡大などにより、具体的な日程調整は難航している。
■「核兵器のない世界」
一方、広島出身の岸田首相がライフワークと位置づけ取り組むのが「核兵器のない世界」の実現。21年1月に発効した核兵器禁止条約の締約国会議が、22年3月に開催される。日本に対してオブザーバー参加を求める声もあるが、この条約には核兵器の保有国が1か国も参加していない。
岸田首相は国会で「唯一の同盟国、世界最大の核兵器国である米国を動かすことを日本としてやらなければならない。信頼関係をしっかり築いた上で前進を図っていく」と述べ、オブザーバー参加には慎重な姿勢を示している。
一方、核軍縮や核不拡散に関する国際的な枠組みである、核拡散防止条約(NPT)の再検討会議は、22年1月にニューヨークでの開催が予定されていたが、新型コロナの感染拡大を受け、延期が決まった。前回行われた2015年の会議には、岸田首相が当時外相として参加をしていたが、合意文書を採択することができず決裂に終わった経緯がある。会議が開催された際には、合意文書を採択できるかが焦点となる。
■クアッド首脳会合、日本開催へ
日本・アメリカ・オーストラリア・インドの4か国の枠組みである「クアッド」の首脳の初会合は、21年9月にワシントンで開催された。各国首脳は首脳会合を毎年定例化することで合意しており、2022年は日本での開催で調整されている。中国が海洋進出を強める中、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け連携を確認しているが、メンバーの日本とオーストラリアはアメリカと同盟関係であるのに対し、インドは非同盟国である。日米豪とインドの間の温度差をいかに調整していくかも焦点となる。
■課題だらけの近隣諸国外交 鍵は夏の参議院選挙
一方、難しい状態が続いているのが近隣諸国との間の外交だ。事態を打開するには政権の体力が求められるため、夏の参議院選挙が終わるまでは身動きが取りづらい状況となっている。
まず2月に北京五輪を控えた中国との間では、日中国交正常化50周年を迎える。しかし、延期となったままの習近平・国家主席の国賓来日の再調整に向けた動きも滞り、膠着状態が続いている。
また、北京五輪を巡っては、新疆(しんきょう)ウイグル自治区などでの人権侵害を理由に、政府高官らを派遣しない、いわゆる「外交的ボイコット」をアメリカなどが表明する事態となっており、日本も閣僚の派遣は見送り、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長と日本オリンピック委員会の山下泰裕会長、そして日本パラリンピック委員会の森和之会長が出席することにとどめた。
次に韓国は、3月に実施される大統領選挙の行方が注目される。いわゆる元徴用工や慰安婦を巡る問題の解決のメドは立たず、韓国で開催予定の日中韓サミットも開けない状態が続いている。
さらに、北朝鮮による拉致問題、ロシアとの間の北方領土交渉など、一朝一夕にはいかない課題が山積している近隣外交。打開に向けた動きが本格化するのは参議院選挙後、22年後半になるとみられ、どの国を優先して関係改善に踏み切るのか注目される。
■得意の外交でアピールなるか コロナが阻む対面外交
参院選を控えた22年を「積極的に首脳外交を推し進める1年にしたい」と意気込む岸田首相だが、再び、新型コロナの感染拡大が、対面外交の壁として立ちはだかる。
21年11月末に突如現れた変異株、オミクロン株が世界で感染拡大を続けている。オランダはロックダウンに踏み切り、イギリス・ロンドンでは安全保障や公衆衛生上深刻な結果の発生のおそれがある場合に出される「重大事態宣言」が出された。
外務省幹部は対面での外交について「個人的な信頼関係」を築くことができる場と、その重要性を説明する。ただ、対面外交の実施には新型コロナの感染状況が落ち着くことが不可欠で、「外交の岸田」の本領を発揮できるかはコロナ次第の不透明な状況になっている。