内閣支持率よりも自民が「一番ショックだった」数字とは 世論調査を徹底分析 石破政権は“まだ大丈夫”なのか?

今回の世論調査(※NNNと読売新聞が14~16日に実施)の結果で、石破内閣を支持すると答えた人が31%。石破政権の発足後、最低の数字となりました。
政治部・竹内真デスク:
率直に言って、「思ったより下がらなかった」「持ちこたえたな」と思いました。商品券問題が発覚した直後の調査。もっと厳しい結果になるかなと思っていました。
報道局・菅原薫解説委員:
私も内閣支持率が20%台になっちゃうかなと思いました。岸田政権の最後の方は25%ぐらいで推移していましたが、そのぐらい厳しい支持率になってもおかしくないかなと。
竹内:石破首相は周囲に対して、「30%であれば結構だ」「もっと低くなってもおかしくないと思っていた」と言っていたといいます。首相の“一番の側近”と言われる人も「20%台じゃなくて良かった」という感想でした。
とは言え、支持率が8ポイントも下がっています。与野党問わず、かなり厳しいという受け止めは多いです。政権の中核幹部でも「もうこれは黄色信号」と政権運営は厳しいということを言っています。これまで支えてきたベテラン議員も「支えようという気持ちが萎えてしまう」と言っていたんですよね。
■商品券 自民支持層も64%が「問題だと思う」
森:石破首相が自民党議員に10万円相当の商品券を配っていたことについては75%が「問題だと思う」としています。
竹内:「自民党を支持する」と答えた人だけに限ってみると、64%の人が「問題だと思う」と答えています。石破さんは、政治とカネの問題について、クリーンな人だと思われていました。にもかかわらず、自民党の中の「ほかの議員」なら話は違ったかもしれないが、石破首相「本人」の問題が起きてしまった。
菅原:いま、ちょうど政治とカネの問題について国会審議をやっている最中。裏金問題を受けて、企業・団体献金をどうするのかと野党とやっている時、なぜこんな疑いを持たれるようなことをしたのか。そんな批判も当然あると思います。
石破内閣を支持するという人を対象に、「支持する理由」も聞いていて、そのなかに「総理が信頼できる」という選択肢があります。これが、15%で前回に比べて9ポイントも下がりました。“裏切られた”と思う人が結構いたのかもしれません。
竹内:今回の調査では、内閣支持率以外にも、自民党にとって厳しい数字が出ています。参院選の比例代表の投票先について一番多かったのは自民党で25%でしたが、2番目は国民民主党で17%でした。8ポイントしか差がない。政治や世論調査を長く見ている人間からすると、「あれ、随分差が小さいな」というふうに感じます。
菅原:私もびっくりしました。選挙が近くなってくると野党の数字が上がる傾向にはあります。ただ、ここまで上がる、しかも野党第1党ではない党が上がるっていうのは驚きました。
森:とはいえ、自民党が比例代表の投票先としては一番手を保っています。今後の政権について、有権者にはどういう意識があるんでしょうか。
竹内:今回の世論調査で、多くの自民党議員が「一番ショックだった」という数字があります。「どういう政権のあり方が望ましいか」と定期的に聞いていますが、去年10月の衆院選以降で初めて、「野党中心の政権に交代した方がいい」という回答(46%)が、「自民党中心の政権を継続」(36%)を逆転、上回ったのです。
しかも逆転しただけでなく、10ポイントも差がついてしまった。これは「石破さんでは選挙が戦えない」というような議論が出てくるような数字です。
菅原:このワードが出てくると、政権も末期ということが多いのです。
■今すぐ辞められると野党は「おいしくない」
竹内:自民党内では動揺が広がっていて、「勝ち目がないから公認を返上して、立候補を辞退しようか」という人もいます。選挙に出ると、お金もかかるし、当然体力や家族の負担とか、多くのことが犠牲になります。勝てもしない選挙にそれだけの犠牲を払うのはしんどいから、やめておこうかな、という人がもう出てきているんです。
森:それだけ大きな意味を持つ数字が、今回の調査で出てしまった…。
竹内:2009年、政権交代で民主党政権が誕生しました。そのときは、直前の麻生内閣が不評で内閣支持率は10%台になったこともあり、30%台を回復することはなかった。政党支持率も民主党が自民党を上回っているときもあったのです。
森:逆に、政権交代はそうならないと起きないということですね。数字としては(その兆候が)顕著に表れ始めているということで、となると、今後、石破首相はどうなるんでしょうか。
菅原:今、与党も野党も、参院選を見越して動いているところがあります。じゃあ、簡単に石破さんを辞めさせるかっていうと、意外とそうでもないのです。
野党側は、石破首相が“生殺し”みたいな状態で参院選まで続いてもらった方が戦いやすい。普通だと野党は「商品券配布問題の責任を取って辞めろ」と言ってもおかしくないけど、野党にとっては石破首相にすぐ辞められても「おいしくない」んですよ。なので、(17日の)予算委員会の集中審議でも質問もあまり出ていませんでした。
菅原:一方の自民党も、夏に参院選を控えている議員とかは「できれば人気のある首相で戦いたい」という気持ちはあるものの、すぐには替えられない事情もあるんです。
竹内:まず一つは、石破さんに代わったばかりだから。まだ半年も経ってない。さらに言うと「石破さんがダメなら、もうこの人しか…」という人がいないんです。自民党内でも、ベテラン議員は「石破だからこそ野党ともうまく折り合いがつくのに、他にそんなことができるやつがいるか」という声もあるんです。
森:替わる人がいない…。となると、参院選まで石破さんで行くことになるんですか?
竹内:その可能性もあります。なぜかというと、「(首相を)替えたら状況が良くなるのか」という声もあるからです。自民党自体が政治とカネの問題で不信感を持たれているのに、新しい人に替えたからと言って、国民の理解を得られるのかと。公明党幹部なんかは「自民党の体質が問題であって交代に効果はない」と言っています。首相を替えること自体を疑問視する人が多いんですね。
菅原:次の人にとっては手を上げづらい、リスキーなタイミングというのもありそうですね。自民党の支持率もこれだけ下がっていて、少数与党で野党と向き合いながら国会運営をしていかなきゃいけない。非常に厳しい環境にあるわけです。
自分が苦労することは目に見えているし、やりたい政策を実現をするとしても、少数与党ではこれまで通りどんどん実現していくことは難しい。躊躇するような雰囲気はあるのじゃないかなと思います。
■「青木の法則」で見る 石破政権は“まだ持ちこたえられる”
竹内:政治記者の「目安」のひとつに「青木の法則」があります。青木幹雄・元官房長官が言い始めたもので、「内閣支持率と自民党支持率を足した数字を見て、政権の体力を計るバロメーターにする」というものです。足して「50」を超えていれば、政権はなんとかなる。逆に50を割り込むと危険水域に入ってくると。
例えば、2024年1月の岸田政権は内閣支持率が24%で自民党支持率が25%。あわせた数字は「49」でした。岸田首相は2024年に基本的に「50」を超えられない状況が続いて、「総裁選に出ない」と言わざるを得なくなってしまったんです。
それからすると、今月の石破内閣の支持率は下がったとはいえ31%ある。自民党の支持率も26%。あわせて「57」なので、「青木の法則」でいえば持ちこたえられる。そんな数字の解釈ができるのですね。
菅原:石破政権はまだ大丈夫、体力があるという状況だと思います。今回、内閣支持率が思ったより下がらなかったこともプラス。さらに、野党がそこまで石破首相の首を取ろうとしていなかったり、自民党の中でも様々な思惑が交錯して、“石破おろし”を加速させようという動きも出ていなかったりします。そういうこともあって「もう少しもつかも」と、この数字から見えると思います。
ただ今後、内閣支持率が浮上する要素が何かあるかというと、これは結構難しいと思うんです。
政治とカネの問題、この商品券の問題もそうですが、この後、政府は年金改革関連法案というのを出そうとしています。これは、一時的にサラリーマンの受給額がちょっと下がったりとか、将来的に追加で2兆円ぐらい財源が必要になってきて、その分何か国民負担が増えるかもなんていう話になったら、余計逆風になると思うんですよね。
政権にとってはここを切り抜けていけるのか。厳しい状況が続くことは変わらないと思うんですが、「低空飛行でどこまで行けるか」というな感じになるんじゃないかなと思います。