【全文】 物価高の追加策「9月上旬をめどに取りまとめ」松野長官会見(9/1午前)
松野官房長官は、1日の会見で、食料品やエネルギー価格の高騰などに対応するため、追加の対策を「9月上旬をめどに取りまとめるべく、関係省庁で対応策の具体化を進めている」と強調しました。
<会見トピックス>
▽コロナ対策の見直し
▽オミクロン対応ワクチン
▽物価高対策
▽国連ウイグル報告書
▽サハリン2
▽宮島訪問税
▽都市ガス利用制限
▽ザポリージャ原発
▽ロシア軍事演習
▽知床沖観光船事故関連
▽安倍元首相への豪勲章授与
▽宮内庁のSNS発信・会見
会見の概要は以下の通りです。
○松野官房長官
新型コロナに関わる水際措置の見直しについて申し上げます。
水際対策については、引き続き感染状況を注視しつつ着実に社会経済活動を回復していく観点から、昨日総理が発表された通り、9月7日からさらに2点の緩和を行うこととします。
まず1点目は、外国人観光客の入国について、添乗員を伴わないパッケージツアーについても認めることとし、対象国、地域も全ての国・地域に拡大することとします。
また2点目として入国者総数の管理について、1日5万人をめどに引き上げることとします。
これらの緩和措置を行うほか、検疫手続きのシステムを改善し、MySOSを活用したファストトラックの利用者について空港検疫において全ての登録手続きを事前に行うことを可能とすることで、入国手続きの円滑化を図ることとしました。
これについては、9月中旬ごろの開始を予定をしています。
これらの措置の詳細については後ほど事務方から説明をいたします。
また先日発表した通り、9月7日以降に入国する方のうち、ワクチン3回接種完了者に対しては陰性証明書の提出を求めないこととします。
これにより、海外で検査を受け、陰性証明書を入手する必要がなくなり円滑に入国できるようになります。
これから海外渡航を予定されている方は若い方を含め、できるだけ早く3回目接種を受けることをご検討いただきたいと思います。
今後も水際対策については、内外の感染状況やニーズ、主要国の水際措置の状況等を踏まえながら、G7並みの円滑な入国が可能となるようさらに緩和を進めてまいります。
当然のことながら、新たにWHOで懸念すべき変異株として指定されるような事態が発生する場合にはこれに機動的に対処してまいります。
次にこのたび内閣官房に科学技術イノベーション政策に関する重要課題について知見を有する非常勤の科学技術顧問を置くこととし、本日付で、お手元の資料のとおり、橋本和仁国立研究開発法人科学技術振興機構理事長を任命いたしました。
今後は内閣総理大臣から指示を受けた事項について科学技術イノベーション政策に関する情報の提供及び助言を行っていただきます。
詳細については内閣官房へお尋ねをいただきたいと思います。
また本日付の内閣官房参与の人事はお配りをした通りであります。
私からは以上です。
――岸田総理は昨日の会見で、陽性者の自宅療養期間の見直しや、新たな療養体制の全体像について、おおむね固まっていると説明した。
第7波を乗り越えていくことが優先としているが、具体的に今後どのような感染状況になれば全体像を公表できるのか
○松野官房長官
新型コロナの現状について、新規感染者数は先週のお盆明け以降の増加傾向から再び減少に転じているものの、全国的には高い感染レベルが継続をしており医療提供体制の厳しい状況が継続することが懸念されます。
政府としてはさらなる病床の確保をはじめ、保健医療体制の確保に引き続き取り組んでいるところです。
加えて、ウィズコロナの新たな経済社会に向けた対応として専門家や現場の意見も踏まえ、全国ベースでの発生届け出の対象の見直し、陽性者の自宅療養期間の見直し、健康フォローアップセンターを含めた新たな療養体制などの全体像検討し、移行の準備を進めています。
新たな段階への移行の全体像については、きのう総理が会見で発言された通り感染状況の推移などを見ながら今後適切なタイミングで公表する考えであります。
――先ほど冒頭の発言でも3回目接種にできるだけ早い接種を呼び掛けていらっしゃいましたが、コロナワクチンについて総理が昨日オミクロン株に対応した新たなワクチン接種の前倒しを表明されましたが、3回目接種は国民の6割程度で特に若い世代にはなかなか進んでいないのが現状です。
新たなワクチン接種に当たって接種率の向上についてどのように取り組みをされるかお聞かせください。
○松野官房長官
オミクロン株対応ワクチンについては、10月半ばに接種開始予定としていたところですが、その開始をさらに前倒しすることとしたところであります。
具体的な接種対象者やスケジュール等については、厚生労働省の審議会において、議論をされていくものと承知をしています。
今後、議論の結果等を踏まえながら接種体制の構築に向けて自治体に対しても早め早めに情報提供するなど、自治体と密に連携をしていくとともに、さまざまな媒体を用いて、国民の皆さまにワクチンの有効性や安全性などを分かりやすく発信をしてまいりたいと考えております。
また現在実施中のワクチン接種の対象となっている方については現在の感染状況を踏まえると、オミクロン株対応ワクチンの開発を待つことなく、従来型のワクチンでの接種を検討いただきたいと考えています。
政府では3回目接種や4回目接種について、総理が若者への接種を呼び掛けた動画配信を始め、リーフレットやSNSなどさまざまな媒体による広報強化を図っており、引き続き積極的な広報に努めてまいりたいと考えております。
――物価について。
原材料価格の高騰などで今月も暮らしに身近な食品などの値上げが相次ぎ、年内に値上げする予定の食料品は累計で2万品目を超えるとも言われている。
日銀は今の物価上昇は、賃金の上昇を伴っていないとしている中で、家計の負担が一段と大きくなりそうだが、こうした状況についての見解、今後の対応を伺う。
また、今月上旬を目処としてきた物価・賃金・生活総合対策本部での追加策の取りまとめ、具体的にいつになるのかを合わせて伺う。
○松野官房長官
最近の物価上昇は国民生活に欠かせない食料品とエネルギー価格の上昇が大半を占めています。
こうした物価上昇がマインドの悪化や実質購買力の低下を通じて民間商業を下押しするなど景気に与える影響については十分注意する必要があり、また物価が上昇する中で賃上げを持続させていくことが重要と考えています。
政府としては総合緊急対策等を着実に実行するとともに、物価・賃金・生活総合対策本部において、切れ目ない対応を講じてきたところであります。
さらに、総理からは食料品、エネルギー、地方創生臨時交付金の3点の政策を中心とした追加策を策定すること。
持続的な賃上げに向けた取り組みを進めることについて、指示があったところであります。
追加策については、9月上旬をめどに取りまとめるべく、関係省庁で対応策の具体化を進めているところであります。
内容が固まり次第、本部でお示しをいたします。
その後についても、物価・景気両面の状況に応じて迅速かつ総合的な対策に切れ目なく取り組んでいく考えであります。
――国連人権高等弁務官事務所が、中国新疆ウイグル自治区に関する報告書を発表し、ウイグル族に対する身柄拘束について「人道に反する罪に相当する可能性がある」と指摘した。
中国は「内政干渉だ」などと反論しているが、報告書に対する政府の受け止め、評価を伺う。
○松野官房長官
9月1日バチェレ国連人権高等弁務官による中国の新疆ウイグル自治区に関する報告書が公表されたと承知をしています。
同報告書が公表されたことを評価をいたします。
新疆ウイグル自治区に関しては、重大な人権侵害が行われているとの報告がこれまでも数多く出されています。
我が国は新疆ウイグル自治区等の人権状況について深刻に懸念しており、国際社会における普遍的価値である。
自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要であると考えています。
我が国としては、引き続き中国に対し、透明性のある説明を含め、さらなる前向きで具体的行動をとることを強く求めていく考えであります。
――三井物産と三菱商事がサハリン2の新たな運営会社に参画することとなり、検疫の維持に向けて前進しました。
政府としての所感を伺う。
○松野官房長官
三井物産および三菱商事がロシア政府へサハリン2の新会社への参画同意の申請を行い、ロシア政府が参画を認める旨の決定を行ったことは承知しています。
本決定は、我が国のエネルギー安定供給の観点から非常に意義があることと考えています。
今後、株主間で様々な議論が行われると認識をしていますが、引き続き、状況を注視し、官民一体となってLNGの安定供給に万全を期してまいりたいと考えております。
――世界遺産の島、宮島のある広島県廿日市市が、宮島を訪れる観光客から1人100円を徴収する宮島訪問税を来年10月に導入すると発表。
観光客の受け入れに向けた環境整備などにあてる考えですが、観光客に負担を強いる側面もあります。
こうした観光促進目的の税徴収は全国的に広がっているが、政府としての見解を伺う。
○松野官房長官
法定外税は地方税法に基づき、各地方団体が条例により地域の実情に応じて導入することができる税であり、各団体において活用進めているものであります。
ご指摘の宮島訪問税は、宮島への多くの観光客等の来訪によって発生増幅する行政需要に対応するため、訪問者に課するものとして広島県廿日市市が法定外税として創設したものであり、廿日市市においてこれを財源として増加する観光需要に対応するものと聞いています。
――経済産業省は都市ガスの需給がひっ迫した場合に備えて、使用量の多い企業などの利用を強制的に制限したり、ガス会社による調達が困難になった場合に国が支援したりできるようにするため、秋の臨時国会で必要な法改正を目指す方針を固めたと一部報道がある。
政府の現在の検討状況を伺う。
○松野官房長官
現在ガスの需給逼迫は生じておらず、都市ガスの消費節約が必要な状況ではありませんが、国際的なエネルギー情勢の変化など、今後のLNG供給のリスクも想定をして万一、逼迫が生じた場合に必要な対策が実施できるよう経済産業省の審議会において有識者による検討を行っているものと承知をしています。
政府としては、現時点で方針を決めたという事実はありませんが、いずれにせよ、今後、経産省の審議会において、必要な需給対策について整理を行うものと認識をしています。
――先程発表された辞令について。
防衛政策担当の内閣官房参与に島田前防衛事務次官をあてると発表した。
島田さんに期待することなどは
○松野官房長官
個別の人事について、お答えすることは差し控えたいと思いますが、人事は本人の人格、識見を踏まえ適材適所の考え方で行っています。
その上で島田氏は安倍元内閣総理大臣秘書官、防衛省大臣官房長、防衛省防衛事務次官等の要職を務めるなど防衛政策分野を中心に幅広い経験を積まれております。
――ウクライナ南部ザポリージャ原発について伺う。
国際原子力機関=IAEAの調査団は本日1日から調査を始める予定です。
ザポリージャ原発はロシア軍に占拠されてるうえ、相次ぐ砲撃で原子力危機の災害も高まっている。
IAEAの調査にどのような成果を期待するのか政府の見解を伺う。
○松野官房長官
国際原子力機関IAEAのミッションがザポリージャ原子力発電所での活動をまもなく開始する予定と承知をしています。
我が国はウクライナにおける原子力施設の安全等の確保に向けた、IAEAの継続的かつ不断の努力を評価しており今般の訪問を歓迎をします。
IAEAのミッションが安全に任務を遂行し、ザポリージャ原子力発電所の安全等が確保されることを期待します。
今般の発表を受け先月29日、ザポリージャ原子力発電所における原子力安全と核セキュリティに関するG7不拡散局長級会合声明を発出しました。
引き続き、G7各国と緊密に連携しつつIAEAの取り組みを後押しをしていきたいと考えています。
いずれせよ、繰り返し述べている通り、ロシアによる原発の占拠を含め、ロシアの一連の行為は決して許されない暴挙であります。
東電福島第一原子力発電所事故を経験した我が国として強く非難します。
ロシアに対しこのような蛮行を即座に停止するよう求めるところであります。
――ロシアサハリン州西部のトマリ地区沿岸で男性の遺体が見つかり、ロシア側から連絡があったとの報道がある。
知床沖で沈没した観光船の乗船者であったかどうかを含めた事実関係と今後の手続きについて伺う。
また、既に北方領土国後島とサハリン州南部で発見されている男女計3名の遺体の引き渡しについてロシア側との日程調整など進捗状況もあわせて伺う。
○松野官房長官
8月31日午前、ロシア側から外交ルートを通じて8月28日にサハリン島トマリ地区沿岸で日本人男性と思われるご遺体一体が発見されたとの連絡を受けました。
現在のところ、知床遊覧船事故の行方不明者との関連は不明であり、全く関係のない方の可能性もあるところであります。
関係を確認をしています。
これ以上の詳細についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
またロシア側が発見した、国後島の2体のご遺体およびサハリン島の1体のご遺体の引き渡しについてはこれまでもその時期や方法について鋭意調整を進めてきたところであります。
現時点で引き渡しの具体的なめどを申し上げられる段階にはありませんが、人道的観点から可能な限り早くご遺体の引き渡しが実現するようロシア側との調整を加速したいと考えております。
――ロシアの軍事演習について伺います。
ロシアの軍事演習ボストークが9月1日から7日までの日程で行われる予定で、演習地域には北方領土も含まれます。
ウクライナ侵攻の影響で4年前の前回より規模が大幅に縮小されるとの指摘もありますが、演習についての受け止め、評価を伺います。
また、演習には中国やクアッドの一角でもあるインドも参加します。
中印両国の参加についてそれぞれ見解を伺います。
○松野官房長官
ご指摘の演習については、7月26日にロシア国防相が北方領土を演習地域に含む形で実施すると発表したことを受け、7月27日、外交ルートを通じてロシア側に対して北方領土においてロシアによる軍事演習が実施されることは北方領土に対する我が国の立場と相いれず、到底受け入れられない旨、抗議をし、当該演習の実施地域から北方四島を除外するよう強く申し入れを行いました。
またロシアのウクライナ侵略が続く中、我が国周辺でロシア軍がその活動を活発化していることについても、懸念している旨、申し入れました。
さらに8月29日付のロシア国防省の発表において、本件演習への中国およびインドの参加に言及があったことは承知をしております。
日本政府としては中国政府およびインド政府との様々なやりとりの中でこうした我が国の立場を伝達をしています。
インド側からは北方領土における軍事演習には参加しない旨の説明を受けています。
各国の参加も含め本件演習について日本政府として引き続き関連の情報収集等を行っているところであり、適切に対応していく考えであります。
――宮内庁が、皇室に関する正確な情報を広く伝えるため、担当の幹部職員を置いてSNSなどで積極的に発信していくことを明らかにしました。
初めてSNSの活用を検討し、皇室に関する正確な情報を積極的に発信していくということではあるんですが、SNSは一方的に発信するものではなくて交流サービスということがありまして、ユーザーの意見に対しても答えなくてはいけない局面もあるかと思います。
現状から言えば、いわゆる炎上も想定する必要がありますけれども、SNSの性質や構造、ユーザーのニーズ、これに伴うリスクを宮内庁が十分理解されているのか非常に疑問があります。
官邸などとは大きく異なる皇室という特殊性を持ってですね、そもそもSNSを活用する必然性はどこにあるとお考えでしょうか。
○松野官房長官
宮内庁において広報活動にSNSを活用すると決定した事実はなく、皇室に関する情報をより積極的に発信するためにどのような手法があるかについて今後検討を行っていく旨、先般宮内庁から説明が行われたものと聞いています。
ご指摘のようなSNSの特性やリスクなども踏まえた上で、宮内庁において適切に検討が行われるものと承知をしております。
――今、長官がおっしゃる通りだと思うんですが、情報発信ということであれば、むしろこれまで記者クラブに限られていました会見を雑誌記者やフリーランス等にもオープンにして、宮内庁長官や広報担当者などが頻繁に会見を開いて、真摯に記者の質問に答えるといった段階的な対応を取るといったことがまず必要だという考え方もあると思いますが、これについてのご所見を。
○松野官房長官
繰り返しになりますけれども、SNSを活用するということを決定した事実はないと承知をしており、皇室に関する情報をより積極的に発信するためにどのような主張があるかについては今後、宮内庁において適切に検討が行われるものと承知をしています。
――オーストラリア政府が安倍晋三元首相に同国の名誉勲章を授与すると発表しました。
外国籍の市民に授与される勲章としては最高位になるとのことですが、これについて政府の受け止めを伺います。
○松野官房長官
8月31日、オーストラリア政府が安倍元総理の日豪二国間の関係の卓越した功績をたたえ、オーストラリア勲章を一般部門の名誉コンパニオン賞を授与する旨発表したと承知をしています。
当該勲章は外国人に与えられる最高位の勲章であると承知をしております。
安倍元総理の逝去に際しては、その業績を称える観点から諸外国において議会の追悼決議や服喪の決定、公共施設のライトアップを始め、各国でさまざまな形で国全体を巻き込んで敬意と弔慰が示されてきました。
今般の叙勲は安倍元総理が総理在任時に、日豪関係を特別な戦略的パートナーに押し上げるなど、様々な分野における外交上の功績等を踏まえたものと承知をしております。
政府としては安倍元総理の遺志を継いで日豪関係の一層の強化のためにまい進をしていく考えであります。