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衆院のみで所信表明演説 異例の幕開け

2012年10月29日 21:51
衆院のみで所信表明演説 異例の幕開け

 臨時国会が29日に召集されたが、前の国会で野田佳彦首相の問責決議が可決された参議院では野田首相の所信表明演説が行えないという異例の幕開けとなった。衆議院だけで行った所信表明演説で、野田首相は「明日への責任を果たす」として政権の維持に意欲を表明したが、本会議場には激しいヤジが飛び交った。

 野田首相は衆議院の所信表明演説で、「まだ宿題が残ったままです。『明日への責任』を果たすために、道半ばの仕事を投げ出すわけにはいきません。やみくもに政治空白を作って、政策に停滞をもたらすようなことがあってはならない」と述べ、衆議院の早期解散に否定的な考えを示唆した。また、11月30日までの今国会では、前の国会で成立させられなかった赤字国債発行法案の成立、衆議院の「一票の格差」是正を含む選挙制度改革にも「結論を出す」として野党に協力を呼びかけた。

 これに対し、野党は冷ややかな反応を示している。

 自民党・安倍晋三総裁「この演説を聞いていて、野田内閣には明日はないという確信をした」

 公明党・井上義久幹事長「既にレームダック、死に体になった野田内閣に、それらの課題をやり遂げる力もないし、また資格もない」

 野党側は年内の衆議院解散を求め、31日の代表質問を手始めに野田政権を厳しくただしていく方針。

 重要法案の行方と解散が密接に絡む展開になりそうだが、野田首相が年内の解散に追い込まれる可能性について、自民党の有力幹部は「まだ可能性はある」とみている。自民党は赤字国債発行法案などをめぐり、審議には応じて協力する方向にかじを切りつつある。これには、野党が協力してそれでも野田首相が解散しなければ、批判の矛先は野田首相に向かうという思惑もある。

 また、民主党では消費税増税法に反対した熊田篤嗣、水野智彦両衆議院議員が29日、離党届を提出した。あと6人が離党すれば衆議院で与党過半数割れの事態となり、内閣不信任決議案の可決も現実味を帯びてくる。年末にかけてさらに離党者が出る可能性もささやかれており、33日間の今国会は野田首相にとって極めて厳しいものになりそうだ。