2分解説 北方領土交渉2島“優先”のワケ
14日夜に行われた日露首脳会談で、歯舞群島・色丹島の引き渡しを明記した「日ソ共同宣言」を基礎に、平和条約交渉を加速させることで合意した。北方領土の交渉はなかなか進展しなかったが、どのように打開しようとしているのかを、政治部外務省担当の天野英明記者に聞いた。
◆「日ソ共同宣言」
プーチン大統領は、1956年の日ソ共同宣言にこだわってきた。これは「平和条約を締結した際には、歯舞・色丹の2島は日本に引き渡す」というもの。一方、日本政府は公式な立場として、「4島の帰属の問題を解決して平和条約締結を目指す」としていた。
なかなか折り合いがつかない中、日本は今回、「日ソ共同宣言を基礎にする」、つまり、2島の返還を優先して交渉を進めるという方針を示した形。
◆日本側は国後、択捉の2島はあきらめたのか?
あくまでも、歯舞・色丹の2島の返還を先行させた上で、国後、択捉を含む、帰属の問題の解決に向けて、引き続き交渉していくとしている。ただ、ある官邸関係者は、「4島全部返還といえば、交渉はストップしてしまう」と話している。2島返還の先には、国後、択捉島も含め、経済分野での協力などを模索していくという見方もある。
◆安倍首相がこうした決断をしたのはなぜか?
安倍首相は、通算23回にもおよぶ首脳会談をこなし、プーチン氏との関係も良好。安倍首相としても、この機会をとらえ、戦後外交の総決算、まさに「レガシー」にしたいという狙いがある。
ただ、交渉相手はプーチン大統領。返還に向けて、さまざまな難しい条件をつけてくる可能性もある。歯舞・色丹に米軍基地を置かないよう確約を求めてくるだろうし、その場合は、アメリカとの協議も必要。年明けの首脳会談に向け、どこまで前進できるのか。厳しい交渉が続くとみられる。