【解説】議員本人への聴取どこまで…聴取のハードルと捜査のポイント【バンキシャ!】
自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題。特捜部の捜査はどこまで広がるのか、議員の逮捕はあるのかなど、日本テレビ報道局・社会部の下川美奈部長に聞きます。(真相報道バンキシャ!)
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松野前官房長官、高木国対委員長、世耕参院幹事長、萩生田政調会長、西村前経済産業相、塩谷座長、橋本元五輪・パラ担当相、大野参院議員、池田衆院議員、谷川衆院議員――。「裏金疑惑」が浮上している主な安倍派の議員です。関係者によりますと、松野前官房長官や西村前経産相、そして金額が多いのは5000万円超の大野参議院議員、4000万円超の池田衆議院議員と、谷川衆議院議員です。安倍派議員99人のうち、大半が何かしらの収支報告書に記載のないキックバックを受け取ったとみられています。
――聴取はどこまで行われるのでしょうか?
下川社会部長
「キックバックの金額が大きいということは、悪質性が高い可能性があるので、金額が大きい議員から順次聞いているようです。金額が小さい議員についてどこまで聞くのか、詳しくはわかりませんが、たとえば2019年参院選での河井克行元法務相の大規模買収事件では、現金を受け取ったとされる地元議員ら100人を聴取しましたし、捜査を尽くすという意味でもかなり広く聴取が行われるものとみられます」
――議員への聴取は、具体的にどんなことを詰めていくのでしょうか?
下川社会部長
「すでに秘書の聴取や資料の任意提出は行われていますので、そういった材料をもとに、不記載やキックバックの金の使い道などについて、議員本人の関与や指示、共謀がどこまであったのか、議員が言っていることが資料や秘書の証言と矛盾しないか、そのあたりを詳しく聞くものとみられます」
――政治家への聴取は何か難しさというものはあるのでしょうか?
下川社会部長
「やはり国会議員の聴取となると、国民に選挙で選ばれ、国民の信託を受けて国政を担っている人物に犯罪に加担していないかなどと問うわけですから、捜査の行方に大きく関わりますし、特捜部にとっても非常に神経を使うところです。勝負でもありますから、通常、捜査にたけたベテラン検事が聴取にあたることが多く、今回も全国から副部長クラスのベテラン検事が多く集められています。今は供述頼みの捜査ではなく、客観証拠重視の捜査になっていますが、それでも客観証拠に照らし合わせる供述をいかに引き出せるかは、捜査の大きなポイントになると言えます」
――こうした聴取を経て、議員を罪に問うという可能性はありますか?
下川社会部長
「最近の似たような政治資金関連の事件では、去年、当時自民党の議員だった薗浦健太郎氏がパーティー券収入などを3年間で4000万円以上記載せず略式起訴され、その後、罰金100万円と公民権停止3年の有罪が確定しています。事前に秘書から過少記載の報告を受けていた、つまり共謀していたことを認めたため、略式起訴になったんです。ただ、この事件は議員個人の政治団体のパーティー券の話でした。今回は派閥のパーティー券の問題で、捜査対象が膨大ですから、たとえ共謀があったとしてもどこまで立件するのか、その線引きの判断も注目されるところです」
◇
その派閥の指示があったのかについて、安倍派の宮沢前防衛副大臣は、「不記載は派閥の指示だった」「長年やってきているなら適法なのかなと」と説明しています。
――議員本人がカメラの前で明かしていますが、下川さんはこれをどう受け止めていますか?
下川社会部長
「派閥の指示があったのであれば、違法な裏金づくりが組織的に行われていたことになりますから、その指示系統やいつから行われていたのか、そして何に使われていたのか、ということを解明することが捜査の大きなポイントになります」
――議員の逮捕に至る可能性はあるのでしょうか?
下川社会部長
「今回の捜査は、派閥側の不記載の処理と、派閥側からキックバックを受けた議員ごとの不記載の処理、この2つの流れでそれぞれ立件の可否が検討されることになります。いずれにせよ、議員の逮捕ありきという見込み捜査があってはなりませんし、あくまで悪質性のほか、証拠隠滅や逃亡の恐れがある時に逮捕されるわけですが、捜査態勢などをみると、会計責任者の処罰だけでは終わらせない、派閥の悪しき慣習を徹底的に調べようという特捜部の「やる気」は感じられると言えます」
特捜部は、週明けにも派閥の関係先への家宅捜索をするなどして、実態解明を進めていくものとみられます。
(12月17日放送『真相報道バンキシャ!』より)
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松野前官房長官、高木国対委員長、世耕参院幹事長、萩生田政調会長、西村前経済産業相、塩谷座長、橋本元五輪・パラ担当相、大野参院議員、池田衆院議員、谷川衆院議員――。「裏金疑惑」が浮上している主な安倍派の議員です。関係者によりますと、松野前官房長官や西村前経産相、そして金額が多いのは5000万円超の大野参議院議員、4000万円超の池田衆議院議員と、谷川衆議院議員です。安倍派議員99人のうち、大半が何かしらの収支報告書に記載のないキックバックを受け取ったとみられています。
――聴取はどこまで行われるのでしょうか?
下川社会部長
「キックバックの金額が大きいということは、悪質性が高い可能性があるので、金額が大きい議員から順次聞いているようです。金額が小さい議員についてどこまで聞くのか、詳しくはわかりませんが、たとえば2019年参院選での河井克行元法務相の大規模買収事件では、現金を受け取ったとされる地元議員ら100人を聴取しましたし、捜査を尽くすという意味でもかなり広く聴取が行われるものとみられます」
――議員への聴取は、具体的にどんなことを詰めていくのでしょうか?
下川社会部長
「すでに秘書の聴取や資料の任意提出は行われていますので、そういった材料をもとに、不記載やキックバックの金の使い道などについて、議員本人の関与や指示、共謀がどこまであったのか、議員が言っていることが資料や秘書の証言と矛盾しないか、そのあたりを詳しく聞くものとみられます」
――政治家への聴取は何か難しさというものはあるのでしょうか?
下川社会部長
「やはり国会議員の聴取となると、国民に選挙で選ばれ、国民の信託を受けて国政を担っている人物に犯罪に加担していないかなどと問うわけですから、捜査の行方に大きく関わりますし、特捜部にとっても非常に神経を使うところです。勝負でもありますから、通常、捜査にたけたベテラン検事が聴取にあたることが多く、今回も全国から副部長クラスのベテラン検事が多く集められています。今は供述頼みの捜査ではなく、客観証拠重視の捜査になっていますが、それでも客観証拠に照らし合わせる供述をいかに引き出せるかは、捜査の大きなポイントになると言えます」
――こうした聴取を経て、議員を罪に問うという可能性はありますか?
下川社会部長
「最近の似たような政治資金関連の事件では、去年、当時自民党の議員だった薗浦健太郎氏がパーティー券収入などを3年間で4000万円以上記載せず略式起訴され、その後、罰金100万円と公民権停止3年の有罪が確定しています。事前に秘書から過少記載の報告を受けていた、つまり共謀していたことを認めたため、略式起訴になったんです。ただ、この事件は議員個人の政治団体のパーティー券の話でした。今回は派閥のパーティー券の問題で、捜査対象が膨大ですから、たとえ共謀があったとしてもどこまで立件するのか、その線引きの判断も注目されるところです」
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その派閥の指示があったのかについて、安倍派の宮沢前防衛副大臣は、「不記載は派閥の指示だった」「長年やってきているなら適法なのかなと」と説明しています。
――議員本人がカメラの前で明かしていますが、下川さんはこれをどう受け止めていますか?
下川社会部長
「派閥の指示があったのであれば、違法な裏金づくりが組織的に行われていたことになりますから、その指示系統やいつから行われていたのか、そして何に使われていたのか、ということを解明することが捜査の大きなポイントになります」
――議員の逮捕に至る可能性はあるのでしょうか?
下川社会部長
「今回の捜査は、派閥側の不記載の処理と、派閥側からキックバックを受けた議員ごとの不記載の処理、この2つの流れでそれぞれ立件の可否が検討されることになります。いずれにせよ、議員の逮捕ありきという見込み捜査があってはなりませんし、あくまで悪質性のほか、証拠隠滅や逃亡の恐れがある時に逮捕されるわけですが、捜査態勢などをみると、会計責任者の処罰だけでは終わらせない、派閥の悪しき慣習を徹底的に調べようという特捜部の「やる気」は感じられると言えます」
特捜部は、週明けにも派閥の関係先への家宅捜索をするなどして、実態解明を進めていくものとみられます。
(12月17日放送『真相報道バンキシャ!』より)