×

【政治解説】“ポスト岸田”に小池東京都知事の名前も… 5か月連続支持率20%台で泥沼の岸田政権 2024年3月 最新世論調査解説

2024年3月30日 13:10
【政治解説】“ポスト岸田”に小池東京都知事の名前も… 5か月連続支持率20%台で泥沼の岸田政権 2024年3月 最新世論調査解説
2024年3月 NNN・読売新聞世論調査
岸田内閣の支持率は5か月連続20%台と、危機的な状況が続いています。首相自らが出席した政倫審や、自民党の党則の改正も国民の理解は得られていません。そのようななか、上川外相が“ポスト岸田”の上位に急浮上。そして、小池東京都知事に期待する声もささやかれています。NNNと読売新聞が行った最新の世論調査を日本テレビ政治部の竹内デスクと菅原解説委員の同期コンビが徹底解説します。

岸田内閣支持率 “泥沼”の5か月連続20%台

【竹内】
岸田内閣の支持率は25%。これで5か月連続の20%台ということで、低迷は泥沼化しているといっても過言ではありません。
【菅原】
政倫審などやりましたが、結局、“政治とカネ”の問題を払拭するには、全く足りていなかったということでしょうか。

【竹内】
そうですね。前回の調査から今回までの1か月間に、岸田首相が“政治とカネ”の問題について手を打ったことが2つありました。ひとつが「政倫審」。安倍派の幹部、二階派の幹部、そして、岸田首相も自ら説明しました。しかし、世論調査では、出席した議員の説明に「納得できない」と答えた人が81%でした。
【菅原】
結局、あの場では真相解明に至らなかったということを考えると、仕方ないかなという感じもします。
【竹内】
本来でしたら理解がありそうな自民党の支持層に限っても、「納得できない」と答えた人が80%ですから、かなり厳しく見られているということです。

もうひとつ動いたのが、「自民党の党則改正」。会計責任者が逮捕や起訴された時に、議員にも厳しい処分を下すことができるように変えました。しかし、世論調査では、これが「信頼回復につながると思う」と答えた人は28%にとどまりました。

岸田政権にとっての“次の節目”

【菅原】
ここ数か月、「ぎりぎり」とか、「崖っぷち」とか、色々な言葉でお伝えしてますが、この状況はまだ続きそうですか?
【竹内】
多くの人が節目になるとにらんでいるのは、衆議院の補欠選挙です。東京15区、島根1区、長崎3区の3つの選挙区で、4月28日に投開票が行われます。
【菅原】
自民党には‟厳しい“と言われていますね。
【竹内】
はい。そもそも東京と長崎は事件絡みで自民党の現職の議員が辞めたところから補欠選挙になりました。長崎は“不戦敗”になりそうですし、東京も独自の候補者を立てるのはもう間に合わないのではないかといわれているんです。
【菅原】
全部落とした場合は、さすがに‟岸田おろし”ということになりそうですか?
【竹内】
可能性はあると思います。「岸田さんでは選挙を戦えない」ということがわかりやすく示されるのは、やはり実際に選挙をやった時ですよね。補欠選挙で3つとも負けるようなことになれば、やはり、「自分たちの選挙の時にも岸田首相では負けてしまうかも」と思うと、“岸田おろし”が始まる可能性はあります。ただ、岸田首相にとって幸いなのは、今年、必ずしも衆議院選挙や参議院選挙をやらなければいけないわけではないということです。参議院に関しては来年ですから。そういう意味では、直ちに“岸田おろし”が本格化するかというと、そうではないのでないかという見方もあるんです。

“ポスト岸田”に急上昇の上川陽子外相。そのワケは…。

【菅原】
今回の世論調査で、“ポスト岸田”についても聞きましたよね。
【竹内】
はい。今回はちょっと動きがありました。1位、2位は石破元幹事長、小泉元環境相で変わりませんでしたが、これまで3位が定位置だった河野デジタル担当相が4位に下がり、上川外相が3位に入りました。

【菅原】
このいわゆる‟ポスト○○”の調査では、上川外相は本当に最近になって出てきたという印象ですよね。
【竹内】
きっかけは、1月に麻生副総裁が講演の中で上川外相のことを持ち上げたことでした。
【菅原】
容姿いじりをして批判が出ましたよね。

《麻生副総裁 1月28日 福岡県の講演での発言》
上川陽子は大したもんだぜ。俺たちから見ていても、ほぉ、このオバサンやるねと」

【竹内】
結果的には、これをきっかけに上川外相が注目された部分はあったと思います。日本では女性が首相になったことはないですから、自民党からすれば目先を変える、雰囲気を変えるというアピールをするためには、「上川さんがいいのではないか」という人が結構出てきたわけなんです。自民党のある若手議員は「自民党が変わったと国民に思ってもらうには女性が良い。そういうリーダーで選挙をやるのがとても良い」と話しています。そして、これは議員の本音が出ているなと思ったのが、自民党の中堅議員の話です。「選挙を考えるならば、女性や若いリーダーが望ましい。女性というと野田さんや高市さんもいるけれど、あの人たちは好き嫌いがあるじゃないか。その点、上川さんはそんなに好き嫌いが分かれるタイプでもないし、無難でいいんじゃないか」と話していました。
【菅原】
「女性だからいい」だとか「無難だからいい」というのは少し失礼な感じがします。
【竹内】
本当にそうだと思います。女性からすれば「女性であれば誰でもいいのか」となってしまいますよね。ただ、自民党もさすがに皆がそこまで短絡的に考えているわけではなくて、「女性というだけでいいのか」、「初の女性総理で刷新感を出すなんてことで国民はだませない」と話す人もいます。ただ一方で、野党もこの“上川総理”を警戒しています。立憲民主党の枝野前代表は講演で、このように発言しました。

立憲民主党 枝野前代表 枝野幸男氏のユーチューブより
「岸田文雄さんで解散をしてくれたら、自民党は自滅です。だから首をすげ替えて、もうちょっと、なんとなく良さげな人に切り替えて総選挙になるというのはほぼ間違いない。(中略)次の総選挙は、日本初の女性総理を相手にやります。(中略)次の総理は上川陽子(外相)」

【菅原】
名前まで出しているんですね。これは“潰すため”ではないですか?
【竹内】
そうなんです。だから、枝野前代表は繰り返し「女性初の総理だからといって騙されてはダメだ」と警告をしているし、「総理が誰であろうと自民党ではダメだ」と批判もしているんです。
【菅原】
“上川首相”というのは、ありえなくはないんでしょうけれども、すごく可能性が高いかというと、そうでもないという印象ですよね。
【竹内】
そうですね。だからやはり、自民党内でも「女性だからという理由で、上川さんにするのはどうだろう」という否定的な意見は多いです。そもそも、上川外相は岸田派の人だったわけですよね。だから、岸田首相と‟親分子分“のような関係なわけで、岸田首相が続けている間に、上川外相が「私がやります」ですとか、周りの人が「上川さんでやろう」とは、ちょっと言いにくいですよね。
【菅原】
そうなると、“ポスト岸田をどうする”というのは、なかなか見えてこないというか、‟手詰まり感“がありますよね。
【竹内】
そうなんです。何か決定的な策というのは、なかなかないです。ただ、古くから“政界は一寸先は闇”と言われるように、“ある人”の名前も出てきているんですけど、誰か分かりますか?
【菅原】
女性ですよね。‟キャッチーなことを言わせたら、天下一品”といわれる、“あの人”ですね。

自民党内には“あの人”の再登板への期待も…

【竹内】
そうです。東京都の小池百合子知事です。小池都知事は、希望の党でうまくいかなかったので、それ以降は国政から距離を取っていました。オリンピックもありましたし、都政に集中している印象でしたけれど、ここに来て存在感を示す出来事がありました。それが1月の東京・八王子市長選挙です。1月というと、‟政治とカネ”の問題で、東京地検特捜部の捜査が真っ盛りだった時ですよね。そのため、自民党と公明党は推薦候補を立てたものの、すごく苦戦していたんです。ただ、最後の最後で小池都知事が応援・支援に乗り出したところ、何とか紙一重、辛くも勝利を収めたんです。ですから、自民党内からは、「やはり小池さんは選挙に強い」という評判が立ったんです。そういう流れの中で、「4月の衆議院の補欠選挙で東京に小池さんが自ら立候補して、国政復帰を図るんじゃないか」という噂が流れたんです。ある自民党の議員は、「小池さんのセンは消えてない」と。「小池さんがもう一度トップを目指す可能性は消えてない」と言うんですね。そうはいっても、「小池都知事は自民党を出たし、どうするんだ」と聞くと、「そんな理屈は後からついてくるんだ」と。これは自民党らしいですけれど。
【菅原】
“最後は何でもあり”となると、本当におっしゃる通り、自民党らしい感じはします。でも、小池都知事というのも、まさかのまさかという感じですよね。
【竹内】
そうですね。本命ではないですよね。特に、噂のようなところもあるので、確度が必ずしも高いわけではないです。ただ、一つ言えるのは、こういう噂や情報が出回るぐらい、自民党が苦しい、追い込まれた状況だということではあると思います。
【菅原】
自民党が盤石であれば、そのような声も出てこないとは思います。結局、“政治とカネ”の問題の真相解明が行われない限りは、この苦しい状況は続くのではないでしょうか。

求められる岸田首相の“リーダーシップ”

【竹内】
本当にそうだと思います。問題がどこにあるのかを突き止めて、それに基づいて対策をする。そして、“けじめ”をつける。今回でいうと「処分」をするということが求められると思います。岸田首相はもちろん、それをやろうとしているとは思います。けれど、国民が「岸田首相は一生懸命やっている」と受け止めていたら、やはり今の評価にならないと思います。

過去にはこんな例もあります。ロッキード事件で田中角栄元首相に1審で実刑判決が出たとき、議員辞職を求める声がわきおこり、当時の中曽根首相は自ら田中元首相に議員辞職を求めました。田中元首相はそれでも議員辞職を拒否はしましたが、中曽根首相が自ら対応する姿勢は打ち出されました。当時、強い影響力をもっていた田中元首相に「辞めろ」というのは大変、難しいものだったと想像できます。でも、中曽根首相は自ら出て行って辞めるよう求めました。

今回ともちろん状況は全然違いますけれども、岸田首相も自らリーダーシップを示して、「この問題に取り組んでいるんだ」、「解決しようとしているんだ」というところを見せないと、やはり、国民の受け止めは変わらないのではないかと思います。

(日本テレビ 政治部竹内真デスク 菅原薫解説委員)

■NNN・読売新聞世論調査
(3月22日から24日 全国有権者に電話調査)
 固定電話 415人 回答率57%
 携帯電話 605人 回答率37%
 合計1020人が回答