【政治解説】党内から「全ての責任がとれるのは岸田首相ひとり」の声も 国民の政治不信高まる“政治とカネ” 2024年2月 最新世論調査解説
4ヶ月連続の支持率20%台 続く “危険水域”
【竹内】
岸田内閣の支持率は先月1月から横ばいの24%でした。4ヶ月連続で20%台ということで、危険水域といわれる水準が続いています。
この間、続いているのが政治とカネの問題ですよね。岸田首相もこの問題には対処しようとしていて、自民党として聞き取り調査やアンケート調査をしました。ただ、今回の世論調査では、この調査が「実態解明につながると思わない」が77%。あまり評価は高くありません。
岸田首相が会長だった岸田派が先頭を切って決めた派閥の解散も、「信頼回復につながると思わない」が76%と、これも国民に響かないという結果になりました。
自民党の対応は “中途半端なアリバイ作り” “出来レース”との声も
【菅原】
自民党の調査や派閥の解散は、なぜ評価されなかった、ダメだったのでしょう?
【竹内】
私が世論に敏感だなと思う、経験豊富な自民党議員によると、「国民の期待と違うことをやっている」と。「国民は、やはり自民党がちゃんと議員に対して処分をするのではないかと見ている。今回の党の調査なんていうのは、中途半端でアリバイ作り、“出来レース”に見える」とまで言っています。また、「しっかり調査をやるのであれば、もっと第三者中心でやらなければいけない」と話しています。
また、「客観的な、ちょっと引いた目で見るということが、今の岸田政権にはできていないのではないか」という指摘もあります。首相周辺は、「岸田首相はこれまでになく焦っている」と言っています。「何かやらなきゃいけない」と焦っている。その結果として評価されないという悪循環になっているのではないかという見方があるんです。
“支持政党なし” が約11年ぶりに50%超え 政治不信が加速
自民党の政党支持率も下がってきてますよね。今回の世論調査では24%。
【竹内】
そうなんです。2012年に当時の民主党から政権を奪回して以来、最低を更新してしまいました。先月も最低でしたが、さらにそれを下回ってしまったわけですね。これは、岸田首相の率いる政府、内閣支持率とは別に、自民党も信頼を失っているということの表れです。さらに深刻なのは、自民党の問題だけではなくて、野党も受け皿になれていないというところにあると思います。というのも、「支持する政党がありません」と答えている人が、今回52%と50%を超えてしまいました。“支持政党なし”が50%を超えるのは、2012年の11月以来で、なんと約11年ぶりです。もし自民党の支持率が下がっても、代わりに野党に頑張ってもらおうと思えば、野党の支持率が上がるはずです。ただ、今回は野党の支持率も上がっていません。これは、国民の政治不信の高まりを表していると思います。
信頼回復に求められる “2つのこと”
【菅原】
自民党がこれまでやってきたことが、全く響いていないわけですよね。信頼回復には何が必要と考えますか?
【竹内】
取材と世論調査の両方から見ていきたいと思います。自民党議員に取材をすると、“2つのこと”を挙げている人が多い印象です。一つは、やはり“説明”が必要だということ。もう一つは“けじめ”を取ることが必要だということです。
まず、1つ目の“説明”について。世論調査では、「自民党の派閥幹部らが十分に説明していると思うか」という質問に対して「思わない」が、前回は92%で、今回も93%と相当高い数字です。9割以上の人が同じ回答するということは、なかなかないことです。やはり収支報告書にちゃんと記載していなかった。さらにはそのお金を何に使っていたのかということに対して、今のところ“すとんと落ちるような説明”がないから、こんなにもたくさんの人が「納得できない」「説明が十分じゃない」と思うわけです。一部の議員は記者会見を開いたりしていて、「だから私は説明したんだ」と主張をする議員もいますが、もしそれが本当に納得される内容だったら、こういう数字は出てこないわけです。ある野党幹部は「自民党の調査にしても説明にしても、何にしても極めて不十分だし、国民の不信や不満に応えるものにはなっていない」というふうに指摘をしています。
【菅原】
これは決して厳しい指摘ではないと思います。自民党が所属議員に対して行ったアンケートでも、公表は匿名でしたよね。その時は、自民党内からも「こんなの意味ない」というような声も上がっていました。やはり、いかにオープンにするか、というところが足りてないという気がします。
【竹内】
今、国会の政治倫理審査会で説明をしようという動きがありますけれども、どういう場でどういう形でやるにせよ、しっかりと説明をしないといけないと思います。
もう一つの“けじめ”の方は、ここにきて、急速に声が高まっています。
自民党支持も“厳しい処分すべき” 81%
【菅原】
“けじめ”というのはつまり“処分”ですよね。
【竹内】
そうです。政権の中枢も、「安倍派幹部への処分を何もやらないわけにはいかない」と話しています。総理に近い閣僚経験者も「たとえ安倍派に恨みを買っても、思い切って処分をやらないと政権が立っていられない」と話しています。多くの人は、「この問題で誰かが責任を取らなければならない、そうでないなら自民党として処分をしないと区切りがつかない」という見方を示しています。それは世論調査にも表れています。今回、「安倍派幹部らに厳しい処分をすべきだと思いますか」と聞くと、「思う」が81%でした。実は自民党支持層でも72%が「処分すべきと思う」と答えています。自民党の支持層ですらやはり何らか“けじめ”をつける、処分をするということが必要だと考えているわけです。私は、本来なら誰かに処分をするといわれるのではなく、自分で自分の身を処するということが望ましいのではないかと思います。けれど、それが示されないと、どんどん信頼が失われていってしまうので、こうなると、もう党として何らかの処分をせざるを得なくなるのではないかと見ています。
党内からも厳しい声「政権が倒れる」「責任を取れるのは首相ひとりしかいない」
「恨みを買いたくないから厳しい処分は難しい」という見方もあります。実際、岸田首相は、政治力があると言われる二階元幹事長であったり、安倍派5人衆の処分をきちんとできますか?
【竹内】
確かにそういう見方はあります。やはり、年上の人とか、力のある人に物申すというのは、なかなか普通に考えても、ちょっとおっかなかったりするじゃないですか。ただ、自民党内には「もうできるか、できないかじゃないんだ」という指摘もあります。もうそれぐらい厳しいということです。実際、ある中堅議員は「もっと危機感を持たないといけない。危険水域なんてとうに過ぎていて、本当にヤバイところまで来ている」と話しています。また、先ほども少し触れましたけれど、首相に近い議員でも「もう処分をするという方向に決断しないと、立っていられない」。つまり、「政権を維持することができない」と話していますし、もう長年、自民党の中枢にいた関係者は「すでにもう無理だ」と。「全ての責任をとれるのは、首相ひとりしかいない」とまで言っています。
【菅原】
それは岸田首相が辞める、退陣するということ?
【竹内】
そうなんです。もう、首相が辞めるということぐらいでしか、高まった政治不信を払拭するケジメのつけ方はないということです。これはかなり厳しい見方ではありますけども、そういうことを言う人もいます。
ただ、考え方を変えれば、「辞める気になればさまざまなことができるのではないか」ともいえます。もう辞めざるを得ないぐらい厳しいのであれば、ここはやはり、政治の信頼を回復するために、きちんと厳しい対応をとって、政治に対しての信頼を取り戻す。「もう一度政治家に政治を任せてもいい」と思ってもらえるように、ここはやはり岸田総理は決断をしたほうが良いのではないかと私は思います。
(日本テレビ 政治部 竹内真デスク 菅原薫解説委員)
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