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2020年12月28日 7:03

イージス・アショア断念でどうなる安全保障

イージス・アショア断念でどうなる安全保障
(c)NNN

■突然のイージス・アショア配備断念

日本にとって最も差し迫った脅威である北朝鮮の弾道ミサイル。2020年の動向は比較的静かな一年だったが、着々と新型兵器の開発も進めていることは明らかで、その脅威はなお深刻なままだ。

こうした状況下、弾道ミサイル防衛の切り札とされていたのが「イージス・アショア」。2020年、東北地方の候補地選定を改めて行ったうえでの再始動を目指していたが、6月15日、河野防衛相(当時)が突然「配備プロセス停止」を表明、そのまま配備断念となった。

迎撃ミサイルを発射したのち切り離す「ブースター」が、配備候補地の演習場の外に落ちてしまう可能性が否定できず、その改修には長い時間と巨額の費用が見込まれるから、というのが理由だった。

■評価と不評と

それまでの防衛省の不手際などもあり、この決定自体は世論の一定の評価を得たいっぽう、防衛省内でもごく限られた者だけが極秘のうちに配備断念を決め、次なる策の方向性も示さなかったことに、自民党国防族のいらだちは募った。

河野防衛相(当時)や防衛省に対し「次の道筋をつけてから発表すべき」「NSC(国家安全保障会議)や与党に丸投げか」「役所の補佐不足」といった批判が相次いだ。

■アショア以外の「あるべき方策」の模索へ

イージス・アショアの白紙撤回を受け、自民党ではミサイル防衛のあり方を検討するチームが設けられ、いわゆる敵基地攻撃能力の保有の是非なども議論した。

これには「一足飛びに敵基地攻撃能力の保有は論理の飛躍があるのではないか」との慎重論を唱える防衛相経験者も。しかし検討チームは2020年8月4日、直接的な表現を避けながらも、いわゆる敵基地攻撃能力を、事実上保有するよう求める提言を安倍総理大臣(当時)に手交した。

これを受けた安倍総理は「しっかりと新しい方向性を打ち出し、速やかに実行していく」と述べたが、その月末、突然の退陣を表明。辞任直前の2020年9月11日、ミサイル阻止に関して「今年(2020年)末までに、あるべき方策を示す」とする談話を、次の菅政権への「宿題」のように発出した。

■巡り巡って、イージス艦2隻の建造に

代わって発足した菅政権は、2020年12月18日、新たなミサイル防衛システムの整備などについて閣議決定した。民間の造船企業に委託した調査の中間報告を受け、イージス・アショアの代替策としては、イージス・システム搭載艦2隻を整備し、海上自衛隊が保持することになった。

この艦船は弾道ミサイル対処が主たる任務。当然自艦防護の能力や防空性能は備えるが、対艦、対潜の装備をどこまで備えるかは引き続きの検討となる。

■いわゆる「敵基地攻撃能力」の議論は先送り

他方で、ミサイル阻止の議論は深まることなく、閣議決定では、いわゆる敵基地攻撃能力の保有は、「抑止力の強化について、引き続き政府において検討を行う」という表現にとどめ、事実上先送りとなった。検討をまとめる時期も示されていないことから、自民党内からは「今やらなくていつやるのか」「これは何もしないという意味だ」と不満も漏れる。

他方で、敵の脅威の外からの攻撃を可能とする「スタンド・オフ・ミサイル」の国産での研究開発を進めることも明記され、2021年度予算案には335億円が新たに計上された。

■2021年に積み残した課題は多い

2020年の後半を費やした、イージス・アショア代替策とミサイル防衛のあり方を巡る議論だが、生煮えの感も否めない。イージス・システム搭載艦は、従来のイージス艦より大きくなるほか、どの程度の性能を持たせるかによって結局は高コストになる恐れも指摘されている。

また、新造配備から退役までのライフサイクルコストも明らかにされていない点は、与党の国防族議員も問題視している。イージス・アショア用から転用する予定のレーダーやイージス・ウエポン・システムは、アメリカ海軍が導入予定のイージス艦の装備と異なるため、「アメリカ軍との連携に不安を残す」と指摘する海上自衛隊幹部もいる。

さらに、もともとイージス・アショアを陸上自衛隊に導入することで海上自衛隊の負担減が期待されていたのに、2隻の艦船を新造するのでは「負担は更に増してしまう」と海自幹部はこぼしていて、慢性的に不足している要員の確保が急がれる。

いっぽうのミサイル阻止力についても、スタンド・オフ・ミサイルの開発が進めば、いわゆる敵基地攻撃の是非を論じる前にその手段になりうる装備だけが先行導入されることになりかねないとして、野党からは問題視する声も上がっている。

2021年はこれら積み残した課題に対し、どこまでの解を得られるかが焦点だ。日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増す中、合理的かつ多くの国民の理解を得られる方策を打ち出せるか。年が変わっても検討の道のりが厳しいことに変わりはなさそうだ。