「手取り増」実現できる?「103万円の壁」引き上げで働き控えは?約7.6兆円の税収減も…【#みんなのギモン】
●働き控えは?「103万円の壁」
●「7.6兆円」税収減…どうする?
「まずは、総選挙で躍進した国民民主党の政策を、自民党はどこまで受け入れるのか? 注目の会談が行われました。31日午前、自民党と国民民主党の幹事長らが会談。自民党としては安定した政権運営に向け、国民民主党の政策を取り入れる形で協力を取り付けたい考えで、その政策を協議するための場を設けましょうと提案しました」
「これに対して、国民民主党の榛葉幹事長は『我々、案件ごとに対応を考えますと。各党と“等距離”で政策実現にあたるために、特別な会議体ではなく、案件ごとに対応するということを申し上げ、ご了解いただきました』と、あくまで協議の場は設けず、政策ごとに協議するスタイルをとるということになりました」
鈴江奈々キャスター
「国民民主党は“政策にこだわる”ということを言い続けています。31日の発言は、どのように捉えたらいいでしょうか?」
菅原解説委員
「榛葉幹事長は『各党と等距離で』と言っていましたよね。つまり、与党とだけ協議するわけじゃない、与党とだけ仲良くするわけでもないという姿勢を示したものとみられます」
「自民・国民両党は新たな経済対策をめぐる政策協議を始めることや、11月に党首会談を行うことで合意しました。今後は、国民民主党が掲げる『103万円の壁』の引き上げなどの政策を自民党がどこまで受け入れるかが焦点となります」
菅原解説委員
「焦点になっている『103万円の壁』なんですが、毎年、この壁を超えないようにパートやアルバイトの人たちが『働くのを控える』のが問題になっているんですよね」
森圭介キャスター
「昔のことですが、うちの母も年末年始になると、そろそろ…と計算していたのを思い出します」
菅原解説委員
「改めて、103万円の壁とは何で、どうなる可能性があるのか?というところから見ていきます」
「まず、いわゆる『103万円の壁』とは、1年間の収入が103万円を超えると『所得税』などが発生するボーダーラインのことです。103万円を超えたのが配偶者や子どもなら『扶養から外れる』ため、扶養している側、例えば『子どもを扶養している親』が控除を受けられなくなり、税金も上がることになります。そのため、この103万円を超えないように、本当は働きたいのに働けない大人や学生も多いのが実情なんです」
「では、国民民主党の主張では、この壁をどうしようとしているのか。『103万円』から『178万円』に一気にこの壁を上げよう、と先の衆院選の公約に掲げていました」
桐谷美玲キャスター
「この公約を見て国民民主党に投票した人もいると思います。103万円から178万円は、かなり大きな引き上げですが、なぜこの額なのでしょうか」
菅原解説委員
「現在の103万円の壁になったのは1995年です。そこから約30年がたっていますが、この間に、パート・アルバイトも含めた『最低賃金』は、約1.73倍に上がりました。一方で、103万円の壁の方は、1円も上がっていない、ということで、これを最低賃金と同じく約1.73倍して、178万円まで上げようというのが国民民主党の主張なんです」
「物価が上がっているのに30年も壁が上がっていないのはおかしいじゃないか、ということで、選挙中から玉木代表たちはこれを、現実に合わないまま放置されてきた『ゾンビ税制』と名付けて批判してきたんです」
忽滑谷こころアナウンサー
「内容は死んだも同然なのに、まだ生きている制度、ということで『ゾンビ税制』だと思うのですが、改めて見てみると、変わっていないのがおかしいなと感じますね。もし103万円から178万円に引き上がった場合は、年収の壁を気にせずに働ける人も増えると思いますが、実現は可能なのでしょうか?」
菅原解説委員
「気になりますよね。ここまで良い面をお伝えしてきましたが、もう1つのポイントを見てみましょう」
菅原解説委員
「103万円の壁を引き上げることに政府与党内には批判的な意見もあります。まず『壁を引き上げると、高所得者の方が得をすることになり、不公平感が出る』という意見です。収入が多い人ほど、控除の金額が大きくなり、減税の恩恵を大きく受けるということなんです」
鈴江キャスター
「それだけ多くの税金を納めているから…ということでもありますよね」
菅原解説委員
「また、玉木代表が言うように、納税者全員の壁を75万円ずつ引き上げた場合、政府の試算によると税収が『約7.6兆円』減収となる見込みだということなんです。では、その穴埋めとなる財源は一体どうするのか。まさにそこが今後の焦点となりそうです。また、別の閣僚経験者からは『非正規(で働く人)がどんどん増える』という声も出ています」
菅原解説委員
「ただ、政府与党内は国民民主党の案を『のまざるを得ない』という雰囲気になっています。過半数割れした与党が政権を運営していくには仕方がないということなんですよね。ある政権幹部は『これが選挙で出た国民の声なら、躊躇(ちゅうちょ)する理由はないだろう』。また、厚生労働大臣の経験者は『のみ込まなきゃいけない、これが今の現実だ』と話しています」
鈴江キャスター
「政府の試算では『約7.6兆円』減収ということですが、この試算には、働き控えをしていた人が働くようになって、経済効果としてプラスになる部分というのは入っていないんですよね? そういう意味で、この政策がどう働くのか、注視していきたいですね」
菅原解説委員
「まさに、私たちの生活に大きな影響を与える政策ですから、これをどう実現していくのか、財源も含めて国民が納得する話し合いと結論を望みたいです」
(2024年10月31日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
【みんなのギモン】
身の回りの「怒り」や「ギモン」「不正」や「不祥事」。寄せられた情報などをもとに、日本テレビ報道局が「みんなのギモン」に応えるべく調査・取材してお伝えします。(日テレ調査報道プロジェクト)