【解説】岸田首相“譲歩”で成立へ前進 決断の背景は? 政治資金規正法改正案
政治部官邸キャップの平本典昭記者が、3つのポイントを解説します。
1. 岸田首相“譲歩”のワケ
2. 決断 政権にプラス? マイナス?
3. 自民党内に不満 どう打開?
鈴江奈々キャスター
「5月30日は公明党・山口代表の衝撃発言。そして31日は岸田首相の驚きの決断となりました。なぜ岸田首相は譲歩したのでしょうか?」
政治部官邸キャップ 平本典昭記者
「自民党幹部は『大きな譲歩をせざるを得ない状況まで追い込まれた』と分析しています。追い込まれた大きな要因は、連立パートナーである自民党と公明党との『すれ違い』だったと思います」
「当初は、自民党が出した修正案に賛成すると思っていた公明党が、30日に態度を一変させました。トップの山口代表が『賛成できない』とノーを突きつけたわけですが、連携にヒビが入ったことで一時、ある自民党幹部は『先が見えなくなった』と話すなど、閉塞感が漂いました」
「そこで岸田首相は、局面打開には『トップの決断による大幅な妥協しかない』と判断したとみられます」
鈴江キャスター
「30日の山口代表の発言は、支持者から『自民党案は甘い』と突き上げを受けたことも判断に影響していましたが、岸田首相も世論を意識したのでしょうか?」
平本キャップ
「ある自民党幹部は『自民党の反対がある中で、岸田総理がトップの決断で厳しい規制を決めた構図を作りたかったのだろう』と解説しています。政権の支持率低迷が続く中で、世論を意識した面はあったと思います」
鈴江キャスター
「6月23日に会期末が迫っているとはいえ、このタイミングで決断をした理由は、何かあるのでしょうか?」
平本キャップ
「決断の背景には『交渉の行き詰まり』と『タイムリミット』があったとみています。自民党と公明党との交渉は、茂木幹事長を中心に行われていましたが、交渉が行き詰まったのを見て、首相周辺は『もう幹事長レベルでは駄目だと思い、総理が動いた』と話しています」
「そして『タイムリミット』ですが、岸田首相は来月中旬、サミットへ出発する前の法案成立を目指していました。そこから逆算すると、そのためには、ここ数日で合意点を見つけなければいけないというタイムリミットが迫っていたのです」
鈴江キャスター
「この決断で政治資金規正法は成立に大きく前進しました。31日の決断は、政権運営にプラス、マイナス、どちらが大きいのでしょうか?」
平本キャップ
「両方あると思います。まず、プラス面ですが、ある政権幹部は法案成立にメドがついたことを『濃い霧が晴れた』と喜んでいました。規正法がもし成立しなければ『内閣総辞職も』などという声もあったわけで、岸田首相サイドとしてはとりあえず一安心、という面はあったと思います」
鈴江キャスター
「一方でマイナスはどうでしょうか?」
平本キャップ
「それは、自民党内の不満がさらに高まっていることだと思います。ある自民党幹部は今回『党内議論を無視した独断だ』と批判しています。ある現職閣僚の1人は『議員活動が厳しくなる議員が出てくる』と話しています」
「というのも、パーティー券購入の公開基準の5万円超への引き下げは、収入の減少につながります。今回の決定は自民党議員の財布に直結しますから、岸田首相への不満が高まるのは必至だと思います」
鈴江キャスター
「自民党内の不満も高まっているということですが、支持率も低迷する中で、次の政権運営のポイントはどこになるのでしょうか?」
平本キャップ
「今回の改正をめぐっては、岸田首相は2つの選択を悩んでいたと思います。1つは、厳しい規制を求めていた公明党、日本維新の会をとるのか。もう片方は、そこまで厳しい規制は現実的でないとした自民党です」
「今回の決断は公明党、維新、そして世論を味方につけようという戦略だったわけですが、一方で、自民党内の敵を増やし政権運営の不安要素は増したといえます。この局面を打開するために、次にどんな一手を打てるのかが、今後のポイントになるとみています」