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都議選、最多の女性候補者…“3割の壁”は

2021年7月4日 22:07
都議選、最多の女性候補者…“3割の壁”は

任期満了に伴う東京都議会議員選挙の投票は、4日午後8時に締め切られました。今回の選挙で「女性候補者」は過去最多となりましたが、女性議員は増えるのでしょうか。小西美穂解説委員が解説します。


■“3割の壁”に注目

ジェンダーギャップが大きい日本は、特に政治分野での女性進出が遅れています。そんな中、今回の都議選で女性議員の3割の壁がどうなるのかが注目されていました。

まず前回の都議選は女性の躍進が際立った選挙でした。小池都知事が「都民ファーストの会」を結成し、女性候補者を積極的に擁立したからです。全体で女性36人が当選し、都議会での女性議員はおよそ3割となりました。

2019年末現在の都道府県議会の女性議員比率(出典:内閣府男女共同参画局 2019年12月31日現在)を見ると、1位:東京(29.0%)2位:京都(21.7%)、3位:神奈川(18.1%)、最下位は山梨(2.7%)と、東京都議会はトップです。全国平均は11.4%なので、2倍以上となっています。

実はこの3割が、意味のある数字なんです。


■“3割”の意味──クリティカル・マス理論

組織における女性の割合を議論するときに、クリティカル・マスという理論があります。これは「決定的多数」という意味で、女性議員が1割や2割だと過度なプレッシャーがかかったり、発言しにくかったりして男性に埋もれてしまいますが、3割を超えると無視できない勢力になり、セクハラやヤジがやりにくくなり、議論の中身や政策の優先順位が変わると考えられています。

首都・東京の議会で、この女性3割の流れが維持できるのか注目されました。

今回は女性候補者が少なくとも74人いて、前回2017年選挙の65人を上回り、過去最多となりました。女性を擁立しようという機運の高まりがみられたのです。

2000年以降の女性当選者と女性候補者と当選者の推移を見ると、いずれも増加傾向となっています。

<東京都議選の女性当選者数(定数127)>
2001年 19
2005年 22
2009年 24
2013年 25
2017年 36
2020年  ?

<東京都議選の女性候補者数>
2001年 44
2005年 40
2009年 52
2013年 53
2017年 65
2020年 74以上

前回、女性候補者は65人で、今回、74人以上に増えていて、当選者は前回の36人、つまり3割のラインを超えるか、後退するかがポイントとなったわけです。


■女性候補擁立、各党でばらつき

ただ今回、女性候補者は全体では増えたましたが、党別にみると、かなりばらつきがあるんです。

<主な党の候補者数の内訳>※()内は候補者総数
 都民…18(47)38%
 自民… 9(60)15%
 公明… 3(23)13%
 共産…18(31)58%
 立憲… 8(28)29%

主な党の候補者数の内訳を見てみますと、女性候補者の比率が最も高かったのが共産で58%。次に都民ファーストで38%、立憲が29%。一方、自民は15%、公明は13%と低くなっています。総数は過去最多であっても、各党の姿勢にはばらつきがありました。

自公で女性が少ないので、自公が勝つと3割は厳しいし、積極的に擁立している都民ファなどが勝つと3割になる可能性高まるわけです。


■自公が女性候補擁立に消極的な背景は

自公が女性候補擁立に消極的な背景にはなにがあるのか、佐藤圭一政治部長は、以下のように分析します

 「自民党でも女性国会議員を中心に女性の候補者を増やすよう求める動きはありますが、なかなか進んでいません。一言で言えば『しがらみ』。地元で政治活動を続けている勝てそうな有力な候補者がいる場合、その人を外して女性に替えるということはなかなかできません。その証拠に、野党が強い選挙区では女性候補を立てるケースはよくあります。今回の都議会議員選挙の場合、前回4年前に小池旋風にあおられて落選した候補者が復活を目指して、リベンジで立候補しているケースも多く、なかなか女性候補に替えるということができなかったのではないでしょうか」


■女性議員“3割”で都議会に変化はあったのか

女性議員が3割近くに増えたことで、都議会では変化があったのでしょうか。

ある女性都議は、「議会に当事者の視点が入るようになった」と話しています。もちろん男性議員でも子育て政策に尽力しますが、そこに女性が入ることで、当事者だからこそ気づいた視点が入っていったといいます。

2017年、都議会では会議規則が改正され、議員の欠席理由に「家族の看護や介護」が追加されました。子育て中の女性議員が子どもの急な病気などで休みがとりやすくなったそうです。これも女性議員が3割になったことで議会活動の環境づくりが進んだともとれます。


■政治が足を引っ張る日本のジェンダーギャップ指数…今後は

あらためて日本のジェンダーギャップ指数を見てみると、総合順位は156か国中120位ですが、分野ごとに見ると、教育:92位、健康:65位、経済:117位、政治:147位。特に政治が足を引っ張っています。

2018年施行された「候補者男女均等法」は、国会や地方議会の選挙で、男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に求めています。均等、つまり半数を女性にということです。

しかし、努力目標にすぎず、女性候補を3割にすることすらできない政党が多く、いまの政治が抱える問題でもあります。

秋までに行われる衆院選で、政党が女性候補者を増やす努力をどこまで本気でするのか、試されます。