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「7日で地球1周」首相の強行出張…裏側解説

2023年1月15日 20:10
「7日で地球1周」首相の強行出張…裏側解説

「7日で地球1周」岸田首相の“強行日程”での出張。知られざる、フランス・イタリア・イギリス・カナダ・アメリカでの「裏側」を同行記者が解説。

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■フランスの「裏側」…“異例”の会見

最初の訪問地フランス。今回の外国訪問は「ドタバタ感」(同行筋)が否めない訪問だった。9日から15日という7日間で「地球1周」という強行日程。

出発した時点で、翌日に控えた最初の目的地フランスの首脳会談でさえ「夕刻」というだけで、詳細の時間が発表されない“異例の形”(政治部ベテランデスク)。結局、発表されたのはフランス到着後。

しかも、通常の外交日程は「首脳会談」を行って、その成果を「共同会見」で伝えるのが“慣例スタイル”の中、フランスでは「共同会見」を先に行い、「夕食会」と「首脳会談」を後に行うという“あまりないスタイル”(外務省関係者)からのスタートとなった。

同行している政府関係者も「会談をまだしてないのに、記者会見で成果を話すってなかなかないですよね…」とポツリ。

■イタリアの「裏側」…滞在5時間?“異例”イタリアの街に降り立たず…

2番目イタリアは「最もドタバタ」の訪問となった。到着したのが、現地時間午前11時40分。空港から記者団は直接、作業用のホテルへ。すぐに記者会見が始まり、原稿を出稿、そのままバスで再び空港へ。

次の目的地へ出発したのが現地午後5時4分。たった「5時間24分」の滞在となった。

筆者は、空港・ホテルの往復だけで、ちょっと楽しみにしていたローマの街には足を踏み入れることもなく、「時間があればパスタでも…」という夢もかなわず、街の空気を移動中のバスから吸うだけの訪問となった。

■イギリスの「裏側」…“異例”の会談場所

3番目の訪問地イギリスでは、スナク首相の「粋な演出」(外務省関係者)が待っていた。それは、会談場所。普段は首相官邸で行われる事が多い中、今回、首脳会談は「ロンドン塔」で行われた。

ロンドン塔はイギリス有数の観光名所でもある世界遺産。政府関係者によれば「スナク首相流のおもてなし」だという。

確かに、安倍元首相がプーチン大統領を地元・山口に招いたり、トランプ前大統領が安倍元首相をフロリダの別荘に招いたり、と「会談場所で相手への距離感がわかる」(外務省関係者)というもの。

会談後、スナク首相の案内でロンドン塔ツアーも実施されたという。

■カナダの「裏側」…「極寒」の地で、人気はカップラーメン

4か国目。カナダで「異例」のことは…。

ある外務省関係者は、「カナダは外交では『懸案がないことが懸案』」というくらい会談は順調に終了。あえて言及するとすれば…、5か国訪問の中で最も寒かったのがカナダ。

最低気温はマイナス15度を記録したオタワ。雪が降る中での共同会見となったが、次の移動地までの政府専用機の中ではこれまでにない光景が…。

同行記者、随行員が寒さに耐えかねたのか、日本食が恋しくなったのか、こぞってカップラーメンを食べる姿が…。

■アメリカの「裏側」…なぜ?共同会見ないまま

最終目的地アメリカ。ここでの裏側は「共同会見」が見送りになったこと。フランス、イタリア、カナダでは首脳会談の前後に、両トップが揃って会見を行い成果を強調した。

アメリカでも「共同会見」があるのか注目されたが…。結果、開かれることはなかった。なぜか?その理由は首脳会談の冒頭撮影で判明する。

バイデン大統領、岸田首相の挨拶が終わるや否や、アメリカメディアから“怒号”に近い質問がバイデン大統領に浴びせられた。質問の中身は、バイデン大統領の事務所から機密文書がみつかった問題だ。

ある政府関係者は、「記者会見を開くと、バイデン大統領に機密文書の問題の質問が集中するため、アメリカ側が記者会見を拒否した」と、その理由を明かした。日本としては、アメリカと共同会見で成果をアピールしたかった中で、アメリカ側の事情で共同会見は幻となってしまった…。

「7日間で地球1周」の強行出張。筆者が計算したところ、実におよそ2日間、45時間が飛行機での移動という日程。政府関係者は「岸田総理は国内にいるより外国訪問中のほうが生き生きしている」と話しているが、帰国後は通常国会が控える。

防衛費の増額、それにともなう増税の問題などをめぐり、野党側からの厳しい追及にどう説明していくかが問われることになる。