“中国の脅威”の最前線 “国境の島”与那国島で進む“台湾有事“想定の計画
5月15日に、沖縄の本土復帰50年を迎えます。安全保障の最前線であり続ける沖縄は今、新たな課題に直面しています。台湾からわずか100キロの沖縄・与那国島では、“台湾有事”を想定した住民の避難計画が進められていました。
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日本で一番西側にある沖縄・与那国島。島の展望台からは、天気がいいと、台湾が見えるといいます。台湾を身近に感じる国境の島です。与那国島の主な産業の一つが、漁業です。住民の生活を支えるその海で、最近ある異変が起きたといいます。
与那国町漁協 嵩西茂則組合長
「去年12月と(今年)1月に、すごい爆撃音のような音を多くの人が聞いています。私も聞いてびっくりしたんですけども」
深夜に爆音が島を揺るがしました。
与那国町漁協 嵩西茂則組合長
「おそらく台湾軍の夜間演習ではないかなと見ていますけども」
台湾国防部は、与那国島の南西にあたる公海上などで、頻繁に射撃訓練を行っています。これには中国が台湾への軍事侵攻もちらつかせながら、圧力を強めていることに対抗する狙いがあります。
一方、中国も5月に入り、台湾の東側の海域で空母「遼寧」が連日、戦闘機を飛ばしています。与那国島の周辺で中国・台湾のつばぜり合いが続いています。
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取材中、オーストラリアの記者に出会いました。
豪フィナンシャル・レビュー紙 マイケル・スミス記者
「私たちは、日本がどう中国の脅威に対応しているのか、とても興味をもっています。与那国島は中国の脅威の最前線になるでしょうから」
与那国町には、アメリカやイギリスなど欧米メディアからの取材依頼が相次いでいます。
与那国町 糸数健一町長
「みんな異口同音に聞いてくることは、中台問題。悲しいかな、好む、好まざるに関係なく、そういう要衝にあるのが与那国島なんです」
中国が台湾に侵攻した場合、与那国島など日本の南西諸島も攻撃を受ける可能性が高いと指摘されています。島の人たちはどう感じているのでしょうか。
――危機感は?
島で働く人
「東京にいた時のほうが、ニュースとか見てたんで、それは意識してましたけど、こっちにきてなんか忘れられるというか。逆に考えなくなりましたね」
漁師
「そんなの考えていないんじゃない。そこまで考えていないですよ」
住民
「テレビで見る度に、気になります」
農家
「尖閣諸島もすぐとられそうな感じですよね。日本もやられるんじゃないかと思って」
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与那国町は今、ある計画の策定を進めています。それは、台湾有事を想定した住民の避難計画です。
――与那国島に敵が上陸する可能性があるというのを想定されている?
与那国町・防災担当 田島政之 課長補佐
「はい。はい。今は、島内避難までは一応作ってあります。一時避難場所に集まって、そこから港・空港まで行くというところまでは策定してあります」
有事の際には地区ごとに指定した広場や駐車場などに住民を集め、その後、民間の旅客機やフェリーで島の外に避難させる計画です。しかし、課題が山積みだといいます。
田島政之 課長補佐
「1700人の住民を避難させるといったら、単純に見積もっても3~4日かかるので、冬だった場合に飛行機・船が果たして出せるのかという不安もあります」
冬の与那国島周辺は海が荒れ、たびたび定期便が欠航になるため、避難に何日かかるか予測がつかないといいます。さらに、住民の避難先は国が指定することになっていますが、具体的な場所は示されていません。
備えなければならない最悪のシナリオ――
田島政之 課長補佐
「最近、テレビで結構、台湾有事やっていて、うちの息子がこれを見て、泣き出してしまいまして。『次は与那国なの?』と泣いて、テレビも見られなくなって。あの姿を見たときには外交でどうにか、とにかく外交でやってほしいなと思いました」
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「避難計画が役立つ日は、永遠に来ないで欲しい」、切なる願いです。