卒業式はマスクなしOK?電車内や映画館は?政府が検討中の“案”とは…
マスク着用について「個人の判断に委ねる。今後、効果的なマスク着用のケースを周知する」と岸田首相が発表して1週間。卒業式でのマスクの着用を巡り、文科相が釈明に追われるなか、政府が検討する着用緩和の“ガイドライン”とは、どのようなものになるのか。
■「家庭で判断」5時間後に一転「決めた事実なし」
「現時点では卒業式などのマスクの取扱いについて、決めたという事実はない。いずれにしても、文部科学省としては、政府全体での検討を踏まえ、卒業式等を含めた学校におけるマスクの着用に関して、今後どのような対応をしていくか、検討してまいりたい」
3日に行われた衆議院の予算委員会で、永岡文科相はこうした答弁を繰り返した。事の発端は、2日の予算委員会で、永岡文科相が、学校の卒業式でのマスク着用について「家庭での議論を含めてマスクをしなければ嫌というお子さんはマスクをし、マスクは外すと家庭で決めた方は外しての参加となると思う」と述べたこと。
着用の判断は「家庭に委ねる」としたことに、「家庭に責任を丸投げしている」「まだ政府として緩和の開始時期を決めていない」などの意見が相次ぎ、約5時間後に、急きょ会見を開き、「取り扱いを決めた事実はない」と述べるなど、釈明に追われた。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを5月8日から5類に引き下げることを正式に決定した1月27日、岸田首相は、マスク着用のルールについて「屋内、屋外を問わず、個人の判断に委ねることを基本とする。今後、効果的なマスク着用のケースを周知することを検討する」と述べていた。
では、いつ、どのような内容の“ガイドライン”が示されるのか。
1.時期
時期について、政府内では、5類引き下げにあたり、医療費の公費負担や医療提供体制などの具体的な方針を示す3月上旬よりも前に、マスク着用の“ガイドライン”を示すという共通認識がある。
ある厚労省幹部は、学校の卒業式を念頭に「2月15日頃までには示したい。卒業式より一定期間前に示し、周知を図る狙いがあるため」と話す。また、別の幹部も、来週開催が予定されている、新型コロナウイルスの感染状況を分析する厚生労働省の専門家会議で議論した後に、“ガイドライン”を示したいと意気込む。ただ、日程の見通しはまだ立っていないという。
2.内容
ある政府高官は「『個人の判断』という大きな枠は変わらず、『感染防止に有効な場所や場面』を提示することになると思う」と説明する。別の政府高官は「マスクをこういう場面では着用した方がいいという事例を示す」と話す。
さらに、「永岡大臣の答弁で卒業式のマスク着用が注目されるが、卒業式の扱いだけを議論してるわけではない。その他の学校生活や、全体的にどうするのかを議論している」(政府関係者)といった声もあがっている。
関心が高まっている卒業式の扱いについては、複数の政府関係者によると、体育館などで換気に配慮することでマスク着用を推奨しない案や、全般的なルールの実施に先行する形で「特例」としてマスク着用を推奨しない案などが検討されているという。
一方、マスク着用を推奨することが検討されている具体例もわかってきた。医療機関や高齢者施設、介護施設など、感染予防の必要がある場所だ。さらに、着用については「個人の判断」を基本としている中で、感染リスクが高いとされる満員電車や飛行機の機内、映画館など、細かい場面をどこまで列挙するかも検討されているという。
ただ、マスク着用ルールの見直しについては、マスクを外すこと自体に抵抗感のある人が一定数、存在する。政府関係者は「若い世代ではマスクを外せるようにしてほしいという声が多いが、高齢者を中心に今の状態を変えたくないという人もいて、年代や環境などで意見が二分化されてしまう」と解説する。
「外していいのかダメなのか、早く決めて欲しい」
こうした不満が日々高まる中、社会的に関心のある問題だけに政府としても判断ミスは許されない。わかりやすく納得のいく“ガイドライン”をなるべく早く示すことが求められている。