防衛省幹部ら“前代未聞”の大量処分……海自元幹部が語る「潜水手当」不正の背景【バンキシャ!】
防衛省は12日、相次いで発覚した自衛隊の不祥事を受け、幹部ら218人を処分しました。海上幕僚長など幹部6人に加え、特定秘密の不適切な取り扱いで113人、潜水手当の不正で懲戒免職11人を含む74人を処分。前代未聞の事態はなぜ起こったのか?【バンキシャ!】
13日、バンキシャが向かったのは和歌山市にある港。行われていたのは海上自衛隊の(呉地方隊創設70周年記念)イベントだ。
そこでみつけたのが…
バンキシャ
「目の前には…うわー、これはこれは。海上自衛隊の護衛艦『あきづき』って書いてある」
防空能力に優れた護衛艦「あきづき」。一般公開された、その護衛艦に乗り込む。
バンキシャ
「すごい人ですね。人気がありますね」
海上自衛官
「ありがたい限りです」
海上自衛官
「一般の方に来ていただけると、やりがいを感じるところが多くあります」
訪れていた海上自衛隊のファン。防衛省による一連の不祥事をどう思うのか。
海上自衛隊ファン
「まずは残念だなと思いました。たぶん一生懸命やられている方もいると思うので」
海上自衛隊ファン
「国防に携わる人が何をやっているのかなって。そういう不正は良くないよなって感じで」
防衛省は12日、特定秘密の不適切な取り扱いなどをめぐり、幹部を含む218人を一斉に処分。極めて異例の事態となった。
中でも海上自衛隊による潜水手当の不正受給については、懲戒免職11人を含む74人の隊員が処分された。不正の額は調査した6年分で約4300万円にのぼる。
海上自衛隊で一体何が起きていたのか?
元海上自衛隊 海将
「もし潜水艦が沈んだ場合は、助けることのできる人がいないということ」
***
11日、神奈川県横須賀市にある海上自衛隊の基地。その近くの海で、バンキシャがみつけたのは…
バンキシャ
「船首に404と書かれています。これが潜水艦救難艦の『ちよだ』です」
懲戒処分となったのは、この「ちよだ」の乗組員33人と、同じ潜水艦救難艦である「ちはや」の乗組員32人。
主な任務は、事故などを起こした潜水艦から乗組員を救助すること。
2023年4月、沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが墜落し、10人が死亡した事故では「ちはや」が現場で活動した。
――「飽和潜水が始まるのでしょうか。いま機材を海に沈めようとしています」
深海に潜る特殊技術、「飽和潜水」で捜索をしていた。
潜水手当の不正受給は、すべてこの飽和潜水の訓練に関わるものだった。どうやって不正が行われたのか――。
***
日本テレビで以前(2001年)取材した飽和潜水の訓練の様子。潜水員が入ったのは加圧室だ。
潜水員
「ハッチ閉め」
深海の高い水圧でも活動できるよう数時間かけて体を慣らしていく。その後は潜水服を着て同じように加圧された水中エレベーターで深海へ。
――「深度105メートル」
飽和潜水では、この「(潜水の)深さ」が手当に大きく関わってくる。
例えば、深さが20mまでだと1時間あたりの手当は310円。深くなるにつれ支給額は上がり、深さ450mを超えると1時間あたり1万1200円が支給される。
仮に450mを超える深さで3日間潜り続けると80万円以上になる。
今回の不正では、「実際より深く潜った」と申請したり、「やっていない(架空の)訓練をやった」と申請したりするなどしていた。
潜水手当は本来、訓練の計画、潜水実績の記録、その記録のダブルチェックなど、複数のステップを経て支給される。しかし今回は、訓練を計画する立場の人物が、手当を支給する人物に直接不正を指南。実績と違う支給を受けた隊員も黙認していたという。
防衛省によると、「先輩がやっていたので、ダメではないかと思いながら踏襲してしまった」と話す隊員もいたという。
なぜ、このような不正が起きたのか?
12年前まで海上自衛隊に所属していた元幹部は、可能性の1つとして“予算を減らされたくない”という思惑を挙げた。
元海上自衛隊 幹部 文谷 数重さん
「(予算を)消化しなければならないっていう役人の本能がありますので」
「潜水手当は潜水手当以外に使えないんですよ。その潜水手当が他の予算科目に転用できないとなると、もうこれはこれで使うしかない」
***
防衛省の幹部ら218人が処分された前代未聞の事態。海上自衛隊の元海将は“今後の自衛隊の活動に影響が出るのでは”と危機感をにじませた。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「異例の多さであるのは間違いないですよね」
「潜水艦の救難艦といって、潜水艦がもし沈んでしまった時に助けるための船です。そのメンバーの主要メンバーが懲戒免職になっているということは、もし潜水艦が沈んだ場合は助けることのできる人がいないということ」
潜水手当の不正受給については、組織内の風通しの悪さが原因ではないかと話す。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「いまの手当では満足していない人たちが、本来は上司に言って、そもそもの金額を変える交渉をすればいいんだけど、そうではなく不正に走ってやってしまったと」
「風通しが悪い。ということが起きているのかなと思います」
――体制が大きく変わることになった海上自衛隊。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「私は次の海上幕僚長に期待します。もっと上下間の風通しのいい組織に作り替えてくれる人だと思います」
「そうすると、もっと下の人たち自ら『もっと変えましょう』という形になる。それが発揮される組織に変わればいいと思います」
*7月14日放送『真相報道バンキシャ!』より
そこでみつけたのが…
バンキシャ
「目の前には…うわー、これはこれは。海上自衛隊の護衛艦『あきづき』って書いてある」
防空能力に優れた護衛艦「あきづき」。一般公開された、その護衛艦に乗り込む。
バンキシャ
「すごい人ですね。人気がありますね」
海上自衛官
「ありがたい限りです」
海上自衛官
「一般の方に来ていただけると、やりがいを感じるところが多くあります」
訪れていた海上自衛隊のファン。防衛省による一連の不祥事をどう思うのか。
海上自衛隊ファン
「まずは残念だなと思いました。たぶん一生懸命やられている方もいると思うので」
海上自衛隊ファン
「国防に携わる人が何をやっているのかなって。そういう不正は良くないよなって感じで」
防衛省は12日、特定秘密の不適切な取り扱いなどをめぐり、幹部を含む218人を一斉に処分。極めて異例の事態となった。
中でも海上自衛隊による潜水手当の不正受給については、懲戒免職11人を含む74人の隊員が処分された。不正の額は調査した6年分で約4300万円にのぼる。
海上自衛隊で一体何が起きていたのか?
元海上自衛隊 海将
「もし潜水艦が沈んだ場合は、助けることのできる人がいないということ」
***
11日、神奈川県横須賀市にある海上自衛隊の基地。その近くの海で、バンキシャがみつけたのは…
バンキシャ
「船首に404と書かれています。これが潜水艦救難艦の『ちよだ』です」
懲戒処分となったのは、この「ちよだ」の乗組員33人と、同じ潜水艦救難艦である「ちはや」の乗組員32人。
主な任務は、事故などを起こした潜水艦から乗組員を救助すること。
2023年4月、沖縄県宮古島沖で陸上自衛隊のヘリコプターが墜落し、10人が死亡した事故では「ちはや」が現場で活動した。
――「飽和潜水が始まるのでしょうか。いま機材を海に沈めようとしています」
深海に潜る特殊技術、「飽和潜水」で捜索をしていた。
潜水手当の不正受給は、すべてこの飽和潜水の訓練に関わるものだった。どうやって不正が行われたのか――。
***
日本テレビで以前(2001年)取材した飽和潜水の訓練の様子。潜水員が入ったのは加圧室だ。
潜水員
「ハッチ閉め」
深海の高い水圧でも活動できるよう数時間かけて体を慣らしていく。その後は潜水服を着て同じように加圧された水中エレベーターで深海へ。
――「深度105メートル」
飽和潜水では、この「(潜水の)深さ」が手当に大きく関わってくる。
例えば、深さが20mまでだと1時間あたりの手当は310円。深くなるにつれ支給額は上がり、深さ450mを超えると1時間あたり1万1200円が支給される。
仮に450mを超える深さで3日間潜り続けると80万円以上になる。
今回の不正では、「実際より深く潜った」と申請したり、「やっていない(架空の)訓練をやった」と申請したりするなどしていた。
潜水手当は本来、訓練の計画、潜水実績の記録、その記録のダブルチェックなど、複数のステップを経て支給される。しかし今回は、訓練を計画する立場の人物が、手当を支給する人物に直接不正を指南。実績と違う支給を受けた隊員も黙認していたという。
防衛省によると、「先輩がやっていたので、ダメではないかと思いながら踏襲してしまった」と話す隊員もいたという。
なぜ、このような不正が起きたのか?
12年前まで海上自衛隊に所属していた元幹部は、可能性の1つとして“予算を減らされたくない”という思惑を挙げた。
元海上自衛隊 幹部 文谷 数重さん
「(予算を)消化しなければならないっていう役人の本能がありますので」
「潜水手当は潜水手当以外に使えないんですよ。その潜水手当が他の予算科目に転用できないとなると、もうこれはこれで使うしかない」
***
防衛省の幹部ら218人が処分された前代未聞の事態。海上自衛隊の元海将は“今後の自衛隊の活動に影響が出るのでは”と危機感をにじませた。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「異例の多さであるのは間違いないですよね」
「潜水艦の救難艦といって、潜水艦がもし沈んでしまった時に助けるための船です。そのメンバーの主要メンバーが懲戒免職になっているということは、もし潜水艦が沈んだ場合は助けることのできる人がいないということ」
潜水手当の不正受給については、組織内の風通しの悪さが原因ではないかと話す。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「いまの手当では満足していない人たちが、本来は上司に言って、そもそもの金額を変える交渉をすればいいんだけど、そうではなく不正に走ってやってしまったと」
「風通しが悪い。ということが起きているのかなと思います」
――体制が大きく変わることになった海上自衛隊。
元海将 金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパス 伊藤 俊幸 教授
「私は次の海上幕僚長に期待します。もっと上下間の風通しのいい組織に作り替えてくれる人だと思います」
「そうすると、もっと下の人たち自ら『もっと変えましょう』という形になる。それが発揮される組織に変わればいいと思います」
*7月14日放送『真相報道バンキシャ!』より