【解説】防衛省…なぜ不祥事相次ぐ? 大量218人処分
防衛省は、特定秘密の不適切な取り扱いなどの一連の問題について、調査結果を明らかにし、隊員218人を処分しました。木原防衛相は、給与1か月分の自主返納を表明した上で、自らのリーダーシップで「防衛省・自衛隊を早急に立て直す」としました。政治部の防衛省担当、細川恵里記者が解説します。
防衛省は12日、4つの問題について処分を発表しました。
まず、安全保障上の特定秘密を不適切に取り扱ったとして113人が処分されました。
そして、不正に潜水手当を受給した問題では、懲戒免職11人を含む海上自衛隊の隊員74人が処分されました。確認された不正の額は約4300万円にのぼります。
パワハラでは、「背広組」と呼ばれる政策立案などを行う内部部局の幹部3人が処分されました。内部部局でのハラスメントによる懲戒処分は初めてです。
さらに海上自衛隊の隊員が基地の食堂で費用を払わず、不正飲食を繰り返していた問題では、22人が処分されました。
これらの問題を受け、酒井海上幕僚長ら幹部6人を含む、あわせて218人が処分されました。
森圭介キャスター
「今回の処分について、防衛省の関係者はどのように受け止めているのでしょうか?」
政治部防衛省担当 細川恵里記者
「ある自衛隊幹部は、『ひとつ一つが非常に大きい事案。処分人数のインパクトだけで終わらせず、丁寧な再発防止が必要だ』と、あせりをにじませていました」
「一方で、別の職員からは『組織についての自浄作用が働いた。自分で調査してうみを出すことはできた』と評価する声も聞かれました」
森キャスター
「200人規模という大きな規模で一斉に行われたのは、なぜだったのですか?」
政治部防衛省担当 細川恵里記者
「今回の処分については、ある防衛省幹部は『一気に出して処分して、人事も刷新することで、信頼を回復する狙いがあったのではないか』と話しています」
「発表時期については『国会での追及は避けたい。本当は、国会が閉会してすぐに出したかったが、調査などが間に合わなかったようだ』と話していました。ただ『もっと早く出せる処分もあったのに、在庫一掃セールのようだ。海上幕僚長に責任を負わせたと見られても仕方ない』と話す自衛隊幹部もいました」
森キャスター
「特定秘密だったり不正受給だったりと処分の内容が多岐にわたっています。そもそも、なぜこのような不祥事が起きるのですか?」
政治部防衛省担当 細川恵里記者
「今回明らかになった問題の多くは、海上自衛隊で起きています。特定秘密の問題については、何が漏えいに当たるのか正しい認識がなく、教育も行われていなかったという、組織的な問題があったと説明しています」
「また、潜水手当の不正受給については、『組織ぐるみとまでは言えない』としながらも、人事異動などで人員がかわっても不正の方法などが踏襲されていました」
「事実上の更迭となった酒井海幕長は『隊員の順法精神の欠如や、組織としてのガバナンスの欠落がある』と話していましたが、組織風土に問題があったとみられ、自衛隊全体として改善していくべきとの声があがっています」
森キャスター
「気になるのは特定秘密の漏えい問題です。他国との防衛協力に影響が出るのが心配なんですが、どうでしょうか?」
政治部防衛省担当 細川恵里記者
「特定秘密については、外部への漏えいは確認されていません。ただ、ずさんな体制が発覚したことで、アメリカとの関係を心配する声も聞かれます。そもそも2014年に施行された『特定秘密保護法』は、アメリカなどから情報の保全体制の脆弱(ぜいじゃく)性を指摘され、機微な情報も日本に共有してもらうために整備したという背景があります」
「ある自衛隊幹部は『北朝鮮や中国などについての情報は、アメリカに依存しているところが大きく、情報が提供されなくなれば、北朝鮮からのミサイル防衛にも影響が出るのでは』と懸念を示していました。一方で防衛省幹部は『現時点ではアメリカからの懸念は耳にしていない』と話していました」
■川崎重工との“裏金問題”は?
森キャスター
「海上自衛隊の不祥事ですが、川崎重工との潜水艦の修理契約を巡っての裏金問題が、まだ残っていると考えていいんですよね?」
政治部防衛省担当 細川恵里記者
「そうなんです。防衛省で、一般事故調査委員会とともに、特別防衛監察が行われています、ある幹部は『全容がまだみえない』と話していて、今後どのような事実が発覚するかが焦点です」
「木原大臣は12日、自らのリーダーシップで『防衛省・自衛隊を早急に立て直す』と述べましたが、これらの問題が大臣の進退問題にまで発展する可能性があるのか、まだまだ注視していく必要があります」