病院幹部「半分は勉強や」 同僚が改善求めた音声入手 医師の過労自殺…遺族が提訴 兵庫・神戸市
兵庫県の病院で若手医師が過労自殺した問題で、過去に同僚が何度も過酷な勤務を改めるよう、病院に訴えていたことがわかりました。
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2年前、自ら命を絶った26歳の医師・高島晨伍さんが書き残した遺書。
「知らぬ間に一段ずつ階段を昇っていたみたいです。おかあさん、おとうさんの事を考えてこうならないようにしていたけれど限界です」
遺族は2日、晨伍さんが勤務していた神戸市の「甲南医療センター」を経営する「甲南会」と具英成理事長に対し、2億3000万円あまりの損害賠償を求めて提訴しました。
高島晨伍さんの母 淳子さん
「私たちだけでは物事が動きません。みんなが気づいて広めていただくことで、物事が変わると思っています」
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2022年4月。「甲南医療センター」で専門的な研修を受ける専攻医になった晨伍さん。労働基準監督署によると、時間外労働は“過労死ライン”とされる月80時間を大幅に上回り、100日間休みがない勤務をしていたのです。
しかし、病院側は…。
甲南医療センターを運営 甲南会 具英成理事長(去年8月)
「病院として過重な労働を負荷していたという認識は持ってございません」
取材に応じた複数の元専攻医たちは、病院側から業務時間を調整するよう、“圧力”があったと証言しました。
起訴状によると、晨伍さんが亡くなる直前、1か月間の時間外労働は労働基準監督署が207時間と認定していますが、晨伍さんが病院に申告したのはわずか7時間でした。
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晨伍さんが亡くなる1年前に、同僚の専攻医が病院に嘆願書を提出しました。このときの病院幹部とのやり取りを記録した音声を入手しました。
専攻医(2021年5月)
「4月の専攻医の平均残業時間は100時間をこえていたと考えています。このままでは患者さんの命に関わると考えられますので業務緩和をお願いします」
病院幹部(2021年5月)
「忙しい忙しくない、何が忙しいのか難しいところやけど、それぞれの役割があって、その辺のバランスをとって考えながら…そういう経過の中で今があるので」
要望は聞き入れられませんでした。
病院幹部(2021年5月)
「言いたいことは、僕らも昔の世代で、先生(専攻医)と意識が違うんやけど、主治医してると(週末でも)『今日あの人どうしてるかな?』と見に行きたいとき、あるじゃないですか。主治医として、あるいは興味として、自分の入れた薬、例えばカリウムが上がっているか下がっているか見たいやん? 半分は勉強や。自分を鍛えるための」
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2日の会見で、遺族は次のように話しました。
高島晨伍さんの兄
「どうすれば晨伍は死ぬことなく、今も医者を続けることができたのか。若手医師だけではなく管理者が、この甲南医療センターの問題に目をむけて、関心を持ち推移を見守ること。これ自体が医師の労働への意識を高めるきっかけになるのではないか」