死んだクジラ 今後どうなる?専門家に聞いた4つのケース
9日に大阪湾の淀川河口で見つかり、地元では「よどちゃん」の愛称もつけられた“迷いクジラ”は、死んでいることが4日後の13日に確認された。クジラの生態に詳しい国立科学博物館の田島木綿子研究主幹によると、「クジラの体長は15メートルほどのマッコウクジラとみられ、成熟したオスの個体ではないか」という。
今後、自治体が処分方法などを検討するということだが、いったい「よどちゃん」はこのあとどうなるのか。田島研究主幹に聞くと4つのケースがあるという。
◆ケース1 焼却
イルカなどの小さい個体であれば焼却することがあるという。廃棄物として最終処分場に運び、焼却できるサイズが前提となる。今回のクジラの体長は15メートルほどの個体のため、焼却するのは困難とみられる。
◆ケース2 埋設
埋設する場合は、船でえい航し、陸揚げしたのち、砂浜や埋め立て地などに掘った穴に埋める。埋設場所の提供にあたっては自治体などとの調整が必要になる。埋設時に専門家が解剖しながら一部をサンプルとして収集し、生態解明の資料にすることもある。
◆ケース3 海洋投棄
海洋投棄する場合は、沖にえい航し海流にのせる方法や、クジラに重りをつけ沈めることもあるという。そのまま魚など海洋生物の餌となる。これは陸揚げが困難な場合の最終手段で、船の航路や漁業関係との兼ね合いもあり投棄には海上保安庁の許可が必要だという。
◆ケース4 骨格標本
処分方法としては基本的には埋設か焼却だそうだが、骨格標本にすることを前提に埋設するケースもよく知られる。学術的に価値があると判断された場合に、のちに埋めた死骸を掘り起こして骨を取り出す。その場合、1~2年ぐらいの間、地中に埋めて肉が分解されるのを待つ。
このほかにも調査段階で骨だけを全て回収し、ほかの部位は埋設する方法もあるという。
田島研究主幹は処分の行方についてこう指摘する。
「大阪湾にこれほど大きなクジラが迷い込んだのは初めて。なぜ浅いところまで来てしまったのか、なぜ弱って死んだのか解剖して調べる必要がある。胃の内容物を調べて海洋プラスチックが出てきたらそういう研究にもつながる。」
時間が経てば腐敗が進行し、強烈な悪臭も放つ。肉がもろくなってクレーンを使った陸揚げも困難になる。体内にガスがたまり爆発する危険もあるという。
「一刻も早く適切な場所に移動させて対応したい」
田島研究主幹はすでに他の研究機関や大学の研究者とともに調査チームを編成しており、要請があれば即応できる体制をとっているという。また地元の大阪市立自然史博物館が全身骨格の標本にしたいとして引き取りをすでに希望している。
田島研究主幹は「今回は大阪湾で見つかったわけですが、大阪では2025年に万博があります。大阪・関西万博は「いのち」について考えることがテーマ。今回のクジラをシンボルに、全身骨格の標本を展示するなどして、「いのち」を考えるきっかけにつながればとも思います。」
SNSでは「安らかに眠ってほしい」という声が多く聞かれた「よどちゃん」。果たして今後どういった対応になるのか。