ベトナムと皇室の交流 約1300年前に“雅楽”の接点【皇室 a Moment】
ひとつの瞬間から知られざる皇室の実像に迫る「皇室 a Moment」。今回は、ベトナムと皇室の約1300年前に遡る長い交流について日本テレビ客員解説員の井上茂男さんと共にスポットを当てます。
■2009年には今の陛下、2017年には上皇ご夫妻が訪問
――こちらはどのような場面でしょうか?
いずれもベトナム中部の町、フエにあるかつての王宮での一場面で、左が2017年に上皇ご夫妻が訪問された時、右が2009年に天皇陛下がお一人で訪問された時の様子です。
2017(平成29)年2月から3月にかけ、上皇ご夫妻は社会主義国のベトナムを初めて親善訪問され、これが退位前、天皇皇后両陛下としての最後の国際親善訪問となりました。フエはベトナム最後の王朝、阮(グエン)朝の首都だった場所で、「王宮」は世界遺産になっています。ご夫妻は、華やかな伝統衣装に身を包んだ人たちの舞などで歓迎を受けられました。
また、今の天皇陛下も上皇ご夫妻の訪問の8年前の、皇太子時代の2009(平成21)年2月、外交関係樹立35周年の節目にあたってベトナムをお一人で訪問されています。この時もやはり古都フエで王宮を訪ねられました。
ベトナムはインドシナ半島の東側、南シナ海に面した南北1650kmの細長い国で、首都は北部のハノイです。中部にはフエや貿易の港として栄えたホイアンがあり、南部にはかつてサイゴンと呼ばれたホーチミンがあります。
■「先の戦争と向き合う旅」
2017年、天皇皇后両陛下としての最後の国際親善訪問で、上皇ご夫妻はまず首都ハノイで歓迎式典に臨まれました。社会主義国へのご訪問は1992年の中国以来でした。ベトナムは10世紀に中国から独立し、独自の王朝を持ったあと、フランス領インドシナの時代や旧日本軍の進駐の時代を経て、先の大戦の終結と共に共産主義国家として独立を宣言しました。
この独立運動を率いたのがホーチミンです。上皇ご夫妻は歓迎式典の後、「建国の父」とされるホーチミンの廟を訪れ献花されました。ベトナムは独立宣言後、フランスとの間のインドシナ戦争、アメリカが軍事介入したベトナム戦争を経て、1976年に今のベトナム社会主義共和国が成立しました。
――上皇ご夫妻はベトナムではどのような方と会われたのでしょうか
2017年の訪問は、親善訪問でしたのでベトナムの要人と会われましたが、「先の戦争と向き合う旅」でもありました。