ベトナムと皇室の交流 約1300年前に“雅楽”の接点【皇室 a Moment】
今の天皇陛下も、2009年にフエでニャーニャックを鑑賞されました。宮廷音楽を育んだ王朝はやがて滅亡し、ベトナム戦争でニャーニャックは忘れられてしまいましたが、その後、ベトナム政府は大切さに気づき、日本もその復興を後押ししました。2004年には「ユネスコ世界無形文化遺産」に指定されています 。
このベトナムの雅楽は、1300年近くも前に日本に紹介されているんです。752年、奈良・東大寺の大仏の開眼供養が盛大に行われました。この時、「林邑(りんゆう)」と呼ばれた当時のベトナムからやってきた僧・仏哲(ぶってつ)が踊りを奉納し、その「舞楽」が「林邑楽」として日本の雅楽にも取り入れられました。
■架け橋の人たちに会われた訪問
日本とのつながりはそれだけではありません。天皇陛下が訪問された時は、世界遺産の町ホイアンにも足を運ばれていました。16~17世紀に朱印船貿易で多くの日本人商人が訪れ、栄えた町です。1000人規模の日本人町があったとされ、陛下は、日本人が作ったと伝えられる木造の橋、通称"日本橋"をご覧になりました。
また、天皇陛下は、ハノイの目の不自由な子どもたち100人以上が通う学校も視察されました。この時、案内したのは日本の俳優の杉 良太郎さんです。30年にわたってベトナムで慈善活動を続けていて、外務省から「日ベトナム特別大使」に任命されています。この学校も杉さんが生活用品や資金の援助を続けてきた学校です。両国の架け橋となっている人たちにも目を配られました。
■天皇陛下は「水問題」の視点でメコン川も視察
さらに天皇陛下は、ベトナムを「水の研究」の視点からもご覧になっています。南部ホーチミン市の近くではメコン川を遊覧船で約1時間視察されました。
荷物を載せた船が行き交う様子や、水上の小屋に住む人々の生活などの写真を撮りながら、熱心にご覧になり、「この地域について理解を深めることができてよかったです」と語られています。
南シナ海に注ぐメコン川は、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れる国際河川です。こうして実地で得た知見は、水問題の講演で写真と共に生かされています。