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クッキーの内部に2次元コード!? 食べられるデータの埋め込みを大阪大学が実現 将来はコーヒーメーカーと連携も

2022年11月9日 16:05
クッキーの内部に2次元コード!? 食べられるデータの埋め込みを大阪大学が実現 将来はコーヒーメーカーと連携も

大阪大学の研究グループは、食品の原材料や賞味期限などの情報を食品の内部に“食べられるデータ”として、世界で初めて埋め込むことに成功しました。

近年、食の「Food」とテクノロジーの「Technology」を組み合わせた造語「フードテック」と呼ばれる最新技術の食品への応用が注目されていますが、その1つであるフード3Dプリンターへの期待が高まっています。

これは、3Dモデルを作る3Dプリンターのように、ペースト状の食材などをノズルから出して、一段一段積み上げるようにして食べ物を作り上げていく装置です。

食品には、アレルギーを防いだり、美味しく食べられる期限を示したりするために、原材料や賞味期限の情報などが欠かせません。通常は、これらの情報は食品をつつむ包装などに印刷されていますが、そのような包装がなかった場合などに、これらの情報を伝達する手段がありませんでした。また、箱などに入っているクッキーの1つ1つに、賞味期限などの情報をつけることもできませんでした。

しかし、今回、大阪大学大学院の研究グループが、クッキー1つ1つに賞味期限などの情報を埋め込む技術の開発に成功したと、10月17日に発表しました。

今回作られたクッキーは、通常の作り方と違い、フード3Dプリンターを使って、クッキーの生地を一段一段積み重ねていきます。その際、クッキーの内部の特定の位置に、異なる色の生地を使ったり、隙間を作ったりしていきます。実は、これらの模様が情報を埋め込む2次元コードになっているのです。

クッキーの見た目は普通のクッキーと変わりませんが、光を当てて内部を透かすと模様が浮き出て、その模様をカメラで撮影することで埋め込められた情報を読み出せる仕組みになっています。

研究メンバーの大阪大学大学院基礎工学研究科のパリンヤ・プンポンサノン助教は、この技術を開発したきっかけについて、「食品そのものにデータを埋め込めば、包装の削減や、アレルギーなどに関わる含有成分、産地と賞味期限などの情報を随時確認できて、食の安心・安全につながると考えたから」と話します。

技術の完成まで1年程度の時間がかかったそうですが、クッキーの中に作った空間をクッキーを焼いた後も維持させるのが大変だったということです。

また、食品へのデータの埋め込み技術は、人以外への情報伝達という新たな使い道も期待されています。例えば、クッキーの場合、そのクッキーを美味しく味わうことができるコーヒーの最適な温度や濃さなどの情報を内部に埋め込んでおくことで、その情報を読み込んだコーヒーメーカーがそのクッキーに最適なコーヒーを自動的に抽出してくれるというものです。

今回の技術の要となっているフード3Dプリンターについて、「フードテック革命」を執筆し、フードテック分野に詳しい株式会社シグマクシスの田中宏隆常務執行役員に聞くと、「“培養肉”をはじめ、植物性プロテイン製造の領域で、フード3Dプリンターを活用する企業が増えつつある。必要とされる量だけを作ることで食品ロスの低減に貢献することや、食品のパーソナライズ化が期待される中、さらに“食べられるデータ”を食品内部に埋め込むという技術は独自性がある」と評価。

「食品自体に様々な情報を付加することによって、含まれる栄養素や原料が追跡できるようになり、個別包装がなくても『食べたものに関する情報』を把握することが可能となる。将来的にレストランやカフェテリアにおいて、活用が進む可能性はある」とコメントしました。

フード3Dプリンターをはじめとするフードテックで、食問題の解決や食の可能性を広げていくことが期待されています。