値上げの“抵抗感” 立ち食いそば「数十円の値上げでも心苦しい」 米・NYは1杯3000円超のそばも「値上げは100~200円ぐらいの感覚」
食品の値上げが相次ぐ中、立ち食いそば店にも影響は及んでいます。店側は「1杯数十円の値上げでも心苦しい」と努力を続けています。その一方で、超物価高のアメリカでは日本の値上げをどのように思っているのか、取材しました。
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一○そば 店主・佐久間昇さん
「店がつぶれちゃうとそれはしょうがないので、考えざるを得ない段階にきていると思います」
“日本の大事な食文化”「立ち食いそば」がいよいよ崖っぷちにたたされています。
一○そば 店主・佐久間昇さん
「毎日、業者さんから通達が来て、すべての食材が上がっているような形です」
400円の「五目かき揚げそば」で見てみると、そば粉やつゆに使う調味料のかつお節、しょうゆのみならず、かき揚げの小麦粉、食用油、ゲソ、にんじん、たまねぎ、そして具材のわかめ、ネギに至るまで食材の仕入れ値が軒並みアップしています。ほかにも割り箸や電気、ガス代など、店を維持するためのコストも上がっています。
しかし、この店では今年8月、そば・うどんの「普通盛」を20円上げたばかりのため、これ以上の値上げをためらっているのです。
一○そば 店主・佐久間昇さん
「お客さんの給料がそこまで上がっていると思ってはいけないので。たかが10円、されど10円。今のところは、取りあえず我慢という形ですね」
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日本では数十円の“値上げ”に抵抗を感じる店が多い一方、アメリカ・ニューヨークにあるそば店に入ってみると、「一○そば」で400円の「山菜きつねそば」がチップ・税金込みで約23.50ドル=約3400円と8杯分以上の値段でした。「天ぷらもりそば」は約26ドル=約3700円です。
このそば店でも今年、値上げをしていますが、100円単位の値上げでも日本ほどは抵抗を感じないと話します。
ソバ・ヌードル・アズマ カビガス・ともえさん
「こちらでは(値上げは)1ドル2ドル(145円~290円)ぐらいの感覚。(値上げに対して)日本ほどのプレッシャーは感じていない」
ニューヨークの人たちにも話を聞いてみました。
「日本ではそばが400円くらい(3ドル)ですって!? 信じられない! ショックです。アメリカでも400円くらい(3ドル)にしてくれたらうれしいのに。ここは物価が高いから」
「すぐにでも日本に引っ越したいわ。(数十円の値上げで)文句いっちゃだめよ。日本の食事はおいしいんだから」
“世界一物価が高い”とされるニューヨークとはいえ、物価の差に驚く声も聞かれました。
「ここでは値上げは当たり前。もっと悪い状況になる心の準備もできています 」
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原油高の状況やウクライナ情勢によっては、今後さらに物価高が加速するおそれもある中、日本の「一○そば」はたった20円の値上げにも「本当に心苦しく、申し訳ない」とことわり、なるべく値段を上げない努力を続けています。
一○そば 店主・佐久間昇さん
「たかが10円されど10円。取りあえず我慢という形ですね」
客は店の心意気に感謝していました。
50代会社員
「(値段が)上がっちゃうと庶民の懐も寒くなるから。頑張ってるよね、材料上がっているのに。やっぱり味と“心意気”だよね」
50代公務員
「“感謝”です。みんな(客)のこと考えると、この値段でふんばっていると思うけど、僕は全然(値段)上がてもらって大丈夫」
なくしてはいけない日本の立ち食いそば文化。値上げによる客離れを懸念し、10円でも安くそばを提供しようとギリギリの状態でふんばっています。