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女子選手と白いユニホーム 透けや生理について聞いた

2024年8月7日 19:22
女子選手と白いユニホーム 透けや生理について聞いた
ドイツや日本でプロサッカー選手としてプレーした経験がある下山田志帆さん

パリオリンピックでは、女子サッカー日本代表のアウェーユニホームが上下白でした。それ以外の競技や他国の代表チームでも、女子選手が白いユニホームを着る姿が見られますが、以前から白いユニホームについては、下着が透ける、生理の際に不安だという声があがっています。実際、どうなのか?ドイツや日本でプロサッカー選手としてプレーした経験があり、スポーツ用の吸水ショーツの開発なども行っている下山田志帆さんに、女子選手と生理、盗撮、ユニホームについて聞きました。

――練習や試合の時に生理で困ることがありましたか?

私は生理用品のトラブルが、すごく多かったなと思う。生理用品がグラウンドに落ちてしまう経験が人生で3回あった。白いユニホームのことだと、試合が終わったあとに「(経血が)漏れてるよ」と言われて、ユニホームが赤くなっていたこともあった。吸水ショーツの開発をする中で、554人のアスリートに(生理について)アンケートをとったが、一番多い悩みは「蒸れ」。お尻の周りが気持ち悪いなど。それに続いて59%が「経血が漏れたことがある」と答え、それがすごく嫌だったという声があった。そして、7%が生理用品がグラウンドに落ちてしまう経験をしている。一般の方からすると、そんなことある?と思われるが、アスリート同士だと「あるよね」と。雨が降るとか真夏でたくさん汗をかくと、ナプキンが(水分を吸って)とんでもないことになるということが結構ある。

――練習や試合の途中で抜けてナプキンを取り換えにいくこともできないですものね。

はい。サッカーでいうと前・後半45分あるので、後半の最初の方に(異変に)気づいて、残り30分くらい、すごくそわそわすると、集中力が切れてしまうような感覚があります。また、トップアスリートで、テレビ放送があるとなおさら気になる、個人競技だとずっと自分が映されているから気が気じゃないと聞いたことがある。

――白とか薄い色のユニホームで気になると聞いたことがありますか?

聞いたことしかないですし、私自身も経験したことがある。試合前のロッカールームで生理中の選手が「今日(色が薄い)アウェーユニホームじゃなくて、(色が濃い)ホームユニがいいな」と言ったり。ユニホームって直前に変わることもあるので、アウェーユニホーム着用になってすごく落胆、とか当たり前にある。白いユニホームと生理が重なるのは選手にとって怖いこと。とくに白ユニで雨が降っている日は一番おびえる。

――サッカーでは白や薄い色のユニホームはよくある?五輪でほかの国でも白いユニホームがあった。

アウェーユニホームは色の相関図みたいな中で、基本的にはホームユニホームと逆側の色じゃないといけないので、白が一番無難なんですよね。

――ドイツでもプレーしていましたが違いは?

ドイツでもアウェーユニホームが白でしたが、選手が抵抗を覚える感じはあまりなかった。というのも、多くの選手がピルを飲んで生理期間を試合とずらしたり、タンポンを使ったりしていたので日本ほど問題にならない。日本ではナプキンを使用しているアスリートが8~9割くらい、ユースアスリートになればほぼ100%。あまり教えてくれないですし、タンポンの使い方を。

――生理との付き合いを一般の人を含めて変えていくことが、スポーツをする人たちの状況を変えることにもつながる?

そうですね。逆もしかりで、多分一般の人はトップアスリートほど過酷ではないから、現状を変える必要性がわからないという側面もあるので、変える必要に迫られているトップアスリートがピルやタンポンを使っていくことで、一般の人の意識も変わる可能性がある。私はそれを推奨したい。

――吸水ショーツ開発で気をつけている点は?

日常的に使うにはいいなと思うブランドもあるが、スポーツ用という名目でもスポーツの際、使えないと思うようなものもある。乾きにくいとか、ストレッチがきいていなくて可動域が狭まっちゃうような。女性とスポーツとなったときに、ヨガとかストレッチとかが想起されやすいけど、日常的にものすごく過酷な環境でスポーツしている選手がいるので、ストレッチ性、速乾性はかなり苦労して作ってきた。

最初は554人のアスリートへのアンケートから始まり、その後、50人くらいの選手にはいてもらって作ったので、アスリートの声の取り入れ方には時間をかけた。声をきく中では、たとえば、ラグビー選手だったらスクラムで、(前の選手の)お尻の下に頭を入れるから(前の選手の)経血が垂れてきちゃうことがあると聞いて。それはすごい生理の時に集中できないなと思って、競技それぞれの「あるある」があって、それが仕方ないと思われてきたんだなと。

――盗撮についてはどうですか。

7~8年前までは「うわ、またあの人来てるよ」「また撮られてるよ」みたいなことは日常茶飯事。陸上選手の盗撮画像が売られたり、スレッドが立ち上がったり。それが日常茶飯事だったので、仕方がないよね、訴えたところでどうなるの?という空気感があった。犯罪だと思えていなかったんだと思う。(撮影罪を規定した法律が施行されるなどして)盗撮者が捕まる事例が出てくると、選手は自分たちが悪いんじゃなくて向こうが悪いと言えるようになった。

――盗撮から選手を守るミズノのユニホームが売り出された。

それは安心ですよね。

――ユニホームのデザイン変更の際、選手の意見をきいてもらえるのか?

プロでも全然選手の意向を気にしないチームもあれば、中学生クラブでも指導者が意識高く、選手の意見をきく場合もある。チームの指導者やスタッフの課題意識によって全然違う。

――当事者の意見をきくことがとても大切ですよね。去年4月、こども基本法が施行されて、こどもに関することを決める際、こどもの意見をきくことが国や自治体に義務付けられた。本当はスポーツの世界でも、選手の声をきいてほしいが、ユニホームの機能や色がちょっと嫌でも、訴えるすべがないですよね。

リーグ単位や学連単位、大きな組織単位で課題としてあげる必要がある。今、ホームとアウェーのユニホームは完全に別の色にするという決まりがあるが、ズボンだけでも濃い色にしていいとか規則があればと思う。でも、対戦する両チームのズボンの色が同じになったらどう対応するのかとか難しくなるのは容易に想像できる。サッカーでいうと、指導者に男性がすごく多い。ピルの話とか生理用品の話はアプローチしづらいが、ユニホームなら何かできるかもしれないと、考えてくれる男性指導者は多くなってきた。

一方で、あるスポーツのチームのユニホームのサプライヤーが選手に提案した時に、男子が着ている伝統的な色合いのデザインを女子選手も着たいという理由で、結局そのまま白いズボンになったという話も聞いた。すると、女子用だけ素材を変える工夫をするのかなど、サプライヤーも真剣に考えている。サッカーみたいに毎回デザインが大きく変わる場合は別かもしれないけど、ずっと同じユニホームを着てきた競技だとそういうこともある。

――下山田さんは、女性のパートナーがいることを公表されています。その視点から思うことは?

選手によって意見が変わってくることですが、LGBTQ当事者の選手の声としては、女子のユニホームだけがかわいらしいデザインになることが嫌というのが大きい。また、最近は女性の骨格に合ったデザインが出てきて、ズボンの丈が短め、肩幅が狭めなど女性らしい体のラインが出てしまうのが嫌という声がある。また、あるスポーツのチームのユニホームがピンク色になってすごく嫌という声もあった。男子も同じ色にするんだったらいい、という声もあった。まあ、女子チームの特別感を出したいというサプライヤーの気持ちもわかるんですが。

――改めて伝えたいことは?

仮に選手の声をきく場所をつくる時に、そこにいる女子選手の性自認が全員女性であるわけではないという前提に立つ必要がある。そういう中で、きける声や変えていけるものがあるのかなと思う。