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「漏れてるよ」経血が…代表ユニホームの“上下白”なぜ?ユニホームから見るパリオリンピック

2024年8月7日 11:49
「漏れてるよ」経血が…代表ユニホームの“上下白”なぜ?ユニホームから見るパリオリンピック
スポーツ用品メーカーのミズノが手がけた卓球などのユニホームには盗撮から選手を守るテクノロジーが。一方、サッカーなどで採用された“上下白”のユニホームには懸念を抱くアスリートも。パリオリンピックのユニホームについて、取材した松坂くるみディレクターと庭野めぐみ解説委員が深掘りトークします。

■盗撮から選手を守るユニホーム…赤外線機能付きカメラでも透けにくく

news every. 松坂くるみディレクター
「6月に公開されたユニホーム、バレーボールや卓球、アーチェリーなどで今回のオリンピックに採用されたもので、赤外線による盗撮から選手を守るユニホームだということなんです」

報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員
「ただの盗撮じゃなくて赤外線というのはちょっと衝撃だったんですけど、どういうことなんですか?」

松坂ディレクター
「赤外線機能付きのカメラというのは、大手の家電量販店の方によりますと『かなりニッチな商品だ』と。通常は店舗にはなく、ネットでのみ販売しているもので、一番の本来の目的というのは防犯カメラに赤外線機能を搭載することで、夜間に不審者などが映りやす
くなることです。あと、かなりまれな用途ですけれども、夜行性の動物を撮影したいとか、そういう時に使うものだということです」

庭野解説委員
「赤外線で撮られている選手の側は気づけるものなんですかね?」

松坂ディレクター
「家電量販店の方によりますと、撮影されているモードが通常モードか赤外線モードかというのは撮られている人からは分からないようなんです。ミズノの開発担当の方は、開発の段階で男性のアスリートからも盗撮に悩んでいる声があったということで、男女問わずこのユニホーム着用してほしいと言っていました」

庭野解説委員
「盗撮を取り締まる動きはどうなっているんでしょうか?」

松坂ディレクター
「2023年に『撮影罪』が施行され、『ひそかに性的な部位または下着を撮影する』ことを盗撮として処罰の対象に。つまり裸や下着が対象で、ユニホームは対象になっていないのです」

庭野解説委員
「ユニホームを着ている状態での盗撮を取り締まる動きもあるんですよね?」

松坂ディレクター
「 2024年3月、福岡県議会で『県・性暴力根絶条例』の改正案が可決されました。改正された条例では、スポーツ施設や公共交通機関で、性的な意図で同意を得ずにアスリートや児童生徒などの姿や体の一部を撮影することを、服を着ているかどうかにかかわらず『性暴力』と定めています」

庭野解説委員
「ミズノが開発した盗撮から選手を守るユニホームというのはどういう仕組みなんでしょうか?」

松坂ディレクター
「特殊な鉱物を生地に練り込むことで、生地が赤外線を通さずに吸収してくれて、その熱で汗を乾かすことで、機能性と盗撮防止を両立させたユニホームなんだそうです」

「すでに公式サイトで一般の方向けにこの生地を使ったユニホームが発売されていますけれども、今後ミズノはラインナップを増やしたいとしています。具体的には、例えばスポーツブラや水着の裏地などに使うことで、いろんな場面で使えるようにしていきたいと話していました」

■「経血が」…アウェーは“上下白”のサッカー日本代表ユニホーム

松坂ディレクター
「庭野さんはサッカーのユニホームについて取材されたんですよね?」

庭野解説委員
「女子サッカーのユニホームの問題です。日本代表のものは、ホームゲームのユニホームは濃い青の上下ですが、アウェーの方だと上下白なんですよね。バスケットボールやアメリカのサッカーもアウェーは上下白だったので、競技や国に限らずよくあることなんですが、白だと下着が透けてしまうとか、生理の経血がまれに漏れる時があって、そうすると長時間プレーをする中で漏れてしまって気になるという声がすごくあるんです」

松坂ディレクター
「アスリートじゃない私たちでさえ、生理の日に真っ白の服を着るって結構勇気がいることだと思うんですけど、まして激しい運動をするアスリートがというのは不安もありそうです」

庭野解説委員
「ドイツや日本でプロサッカー選手としてプレーした経験があり、スポーツ用の給水ショーツの開発なども行っている下山田志帆さんにユニホームについてきいてきました。アウェーユニホームというのはホームのユニホームと真逆のような色である必要があるんですって。そうすると、白が無難で選ばれやすいということなんですね」

庭野解説委員
「試合前のロッカールームで生理中の選手が『今日ホームユニホームがいいな』と言っていたのは、日常的なことだそうです。ユニホームって直前に変わることもあって、勝ち進んでいくと、相手チームのユニホームが同じような色と初めて分かったりするわけですよ。そうすると、白いユニホームを急に着なきゃいけなくなって、落胆するとか。特に白いユニホームの日に雨が降っていると、一番" 怯える"と表現していました」

「試合が終わった後に『漏れてるよ』と言われて、見たら漏れているということも結構あるんですって」

松坂ディレクター
「自分だけが気付いてないという状態になっちゃうわけですか」

庭野解説委員
「白いユニホームについては、リーグ単位や学連単位など、大きな組織単位で課題としてあげる必要があるんじゃないかというふうに下山田さんおっしゃっていました。下のズボン部分だけでも濃い色にした場合に、例えば相手チームと黒のズボンが被ったとしてもい
いとするのか、審判にそれが見やすいのかなど、競技全体で変えていかないと、思いつきでは変わらないということもあるんですって」

■よかれと思って“女性らしい”ユニホームも…

庭野解説委員
「なるほどと思ったことはもう1点ありまして、下山田さんは女性のパートナーがいることを公表している方なんですね。そういうLGBTQ当事者の選手からは、女子のユニホームが“かわいい”みたいなふうになることに抵抗があるという声がすごくあるそうなんです」

松坂ディレクター
「実際に“かわいい”ユニホームだった事例もあるんですか?」

庭野解説委員
「あるスポーツチームでピンクっぽい色のユニホームだったことがあって、それを見た時に『え…この色…』と思ったけれど、せっかく作ってもらったユニホームなのでそうも言えないということがあったそうです。チームの全員が女性の自認じゃないかもしれないということを指導者やユニホームを作る側の人には念頭に置いて欲しいというふうに下山田さんは言っていました」

松坂ディレクター
「女性の自認だったとしても、『女性なんだからピンク好きでしょう』みたいなのは違和感があります。ちょっと決めつけですよね」

庭野解説委員
「確かにそうですね。女性の骨格に合わせてちょっとボトムスが短いとか、肩幅が狭いとか、いわゆる“女性らしい体のライン”が出ることをよしとしてメーカーは作っているんだけれども、ラインが出ることがむしろ嫌な場合もあるわけで」

松坂ディレクター
「ビーチバレーでは今回、エジプトの選手が露出をしないような格好で出ていました。露出して空気抵抗を減らすとかいう話もたまに聞くんですけど、『本当にそのスポーツで勝つために必要だから、そのユニホームになっているのか?』というのは、もう一度考える機会があってもいいのかなと思います」

「そもそもユニホームを作る際に選手の声って反映されるんですかね?」

庭野解説委員
「それもチームによるんですって。指導者がわりと意識が高ければ、中学校とか高校ぐらいのユースのチームでも、選手の声を反映する場合もあるし、全く聞かずに良かれと思った大人たちあるいはデザイナーさんが作るということもあって」

松坂ディレクター
「若い頃から自分の意見が大人に聞いてもらえる体験ってすごく大事だと思っていて、女性男性にかかわらず、当事者の声を聞くというのはやっぱり重要ですよね」

■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~

日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。

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番組ハッシュタグ:#talkgender