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調査チームが見た福島第一原発の内部

2022年1月2日 7:00
調査チームが見た福島第一原発の内部

2021年11月末、原子力規制庁の調査チームは福島第一原発1号機内部の調査を行いました。水素爆発によって破壊された建屋の中はどのような状態になっているのか。2022年はどのような調査が行われるのか。調査チームに話を聞きました。

■8年ぶり…防護服で原子炉建屋内部へ

調査にあたったのは原子力規制庁福島第一原発事故対策室のチーム。1号機の内部調査が行われるのは実に8年ぶりだといいます。調査に参加した岩永宏平企画調査官に話を聞きました。

――調査はどこに入ったのですか?

原子力規制庁・岩永宏平企画調査官
「われわれが入ったのは福島第一原発の1号機です。1階から順々に上がっていきました。3階から4階に向かう階段には、たくさんのガレキがあって進みにくい状態でした。今回訪れた4階フロアは原子炉建屋の北側にあり、われわれも初めて入るフロアでした」

――空が見えていますが…

「水素爆発を起こした5階のオペレーションフロアの床が完全に破壊されて抜けているので、空が見えているのです。柱や、はりなどに使われていた鉄筋は完全に抜け落ち、地面にはガレキが広がっていました。一方で3階はそんなに破壊はされていませんでした。水素爆発は限られた上の階で起きたのではないかとわれわれは推定しています」


■1号機と3号機で違う“爆発”

日本テレビは福島中央テレビが撮影した爆発の瞬間の映像を、20年に最新技術を使い解析を行いました。超解像処理と呼ばれるもので、映像を鮮明にし輪郭をはっきりさせるなどの処理を行いました。

国の調査チームが注目しているのは、1号機と3号機の爆発の違いです。1号機の爆発では白い煙が横に大きく広がっていきました。

岩永企画調査官:
「1号機の4階は横から光が届いていないので、上の5階で大きな爆発が起き下層階にエネルギーを伝えていったのではないかと考えています。1号機の爆発の(白い噴煙は)5階のオペレーションフロアの壁や壁材が飛散している状況だと思います」

一方、3号機の爆発では煙はゆっくりと垂直に上っていきます。

岩永企画調査官
「3号機の4階は横の壁が全て抜けてしまっています。外壁がはがれて、外が見えている状況なので、4階でも爆発が起こったという破壊の状況でした。3号機の爆発は最初に白い爆炎が1号機と同じように出ていますが、その後、黒い爆炎が上がっています。(1号機と)同じ現象とはいえません。(映像解析から)爆発直後の挙動を見てみると、1号機は建物の変形は起きていませんが、3号機は建物がゆがみながら変形し、火炎と白煙が出た後、黒煙が上がります」

――爆発の違いは水素のたまる場所が違ったからか?

「1号機は5階が非常に激しく破壊されています。一方、3号機は3階や4階も激しく破損しているところがありました。(各階の)フロアごとに少しずつ爆発があって、その後5階が大きく爆発したのではないかと着目しています」

■黒い噴煙の正体とは?

日本テレビの取材によると3号機の黒い噴煙は丸い形を保ったまま、一気に約270mも上昇していたことがわかりました。そこには巨大なガレキや破片も見て取れます。

黒い煙の正体はいったい何なのでしょうか。

岩永企画調査官
「水素爆発は爆発するときに火炎も色も出ません。(1号機で見られた)白い煙は物が吹き飛ぶ時の粉じんなどです。3号機の黒い煙は、おそらく燃焼ガスであろうと推定しています」

■「可燃性ガス」の燃焼か?

国の調査チームが導き出した黒い煙の正体。それは「可燃性ガス」が上昇しながら燃焼したのではないかというものです。

格納容器の中には、制御棒などを動かすためのケーブルや原子炉の熱を保つための保温材などがあります。

燃料が溶けて高温になった格納容器の中で、ケーブルのカバーなどからガスが発生し、そのガスが推進力をもって上昇し、がれきなどを空高くまで運んだのではないかとみているのです。

■格納容器の中にはたくさんのケーブルが

――格納容器の中にはそんなにたくさんのケーブルがあるのか?

岩永企画調査官
「ケーブルの素材を集めてくるとだいたい数トン。総延長だと数十キロにもなります。数トンのうちの一部が高温にさらされたと(考えられるのです)」

■2022年…事故から11年

国の調査チームはケーブルなどが黒い煙の正体とみて解明を進めており、22年1月には同じような環境を再現してケーブルを燃やす実験を行う予定です。3月で事故から11年が経ちます。

時間が経過したことで、放射線量が下がり建屋の中に入り調査ができたといいます。しかし、爆発の状況を詳細につかむのはまだまだ時間がかかりそうです。

岩永企画調査官:
「(調査が)できるようになったのは今、10年目なのです。やっとなんですね。今回もわれわれが(原子炉建屋の)中に入れる時間は、被ばく線量がリミットになるので、20分くらいなのです。一度行っても得られる情報はかなり少なく断片的なものです。(その情報は)10年後の姿ですので、そこから当時を推定していかなければなりません」

「調査活動もまだまだ難しいのが正直な話です。廃炉は現場がきれいになればなるほど進んだなと思う反面、本質的なところは、いまだ(未解明な)部分が残っています。(これからも)闘わないといけないというところは大きいです」

事故からまもなく11年。調査はまだまだ続きます。

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(福島中央テレビ/日本テレビ)
*超解像処理と鮮明化処理をしています
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