麦にレンコンまで…各地でカモによる「食害」 “共存”模索も…農家は対策に苦慮
越冬のため日本各地に飛来するカモによる農作物の食害が増えています。麦やブロッコリーなど地上の作物だけでなく、レンコンまで脚で器用に泥を掘り食べているといいます。農家や自治体は対策に乗り出しているものの、カモとの共存に頭を悩ませています。
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農作物の“食害”が発生している熊本・八代市の畑では、青々としたブロッコリーやキャベツの葉っぱが食いちぎられていました。
その“犯人”は、畑を埋め尽くす“冬の使者”、ロシアなどから飛来するカモです。その数は、優に100羽を超えていました。
カモの食害にあう農家 宮田和典さん
「ちょうど定植したころに(畑に)入ってくるんです」
「おいしいの知ってるからね…。ブロッコリーの葉っぱとかおいしいんじゃないんですか」
取材中にも、カモが農作物を食べている様子が見られましたが、狙われるのは、まだ育っている途中の柔らかいものばかりです。
農林水産省によると、カモによる農作物の被害は年々右肩上がりで、鳥のなかではカラスに次いで2番目の被害額だといいます。
【カモによる農作物被害 ※農水省調べ】
2019年度 4億5000万円
2020年度 5億1300万円
2021年度 5億4600万円
八代市だけでも、年間1億円を超える被害を受けているといいます。
カモの食害にあう農家 宮田和典さん
「食べられて収穫できなくなったら、農家は死活問題になるんですよね」
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同じ九州の佐賀・江北町でも被害が拡大しています。町内で麦を育てる農家を訪ねました。
麦を育てる農家 岸川昌弘さん
「もう(葉の)先が全部ないでしょ。バリカンで刈ったように食べていくんですよね」
カモのターゲットは麦畑で、数えるのが不可能なほど多くのカモが見られました。
農家によると、麦畑に侵入したカモが生育中の柔らかい芽を食べてしまい、収穫量が減る事態になっているといいます。被害は、実に畑全体の3分の1ほどに及んでいるということです。
そこで、今年に入り町が用意したのは、ロケット花火です。4800本を約400戸の農家に支給し、追い払っていますが、“効果は限定的”との見方もあります。
麦を育てる農家 岸川昌弘さん
「だけど、これもはっきり言って、イタチゴッコなんですよね」
他にも音を出す装置を設置するなど、各農家が試行錯誤していますが、抜本的な対策はまだ見いだせていないということです。
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関東でも、カモの被害に悩まされています。14日朝、茨城・土浦市でも農家が悲鳴をあげていました。
髙嵜れんこん 村上太郎さん
「こっちが食べられちゃったレンコンなんですね。傷をつけられちゃうので、出荷ができないレンコンに」
被害にあっているのは、生産量が全国1位のレンコンです。表面に傷がつき、先端がかじられるなどの被害が出ているといいます。
被害の多くは真夜中に発生しているといいます。
2021年、茨城県内にあるレンコンを育てるハス田にいるマガモを捉えた映像では、マガモの周りに、泥がまきあげられていました。マガモは、脚で泥をかき穴を掘った後、垂直に頭を突っ込んで、レンコンを食べているとみられています。
レンコンの被害は、冬の時期が一番多いといいます。農家ではハス田の水を減らすなどして、カモが中に入らないようにしているといいますが、収穫量は3割ほど減る場合もあるということです。
農家はレンコンを守りつつ、カモと“共存できる道”を模索していきたいということです。