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スウェーデン王室と皇室3代の交流 国王は“20回近く来日”【皇室 a Moment】

2023年1月21日 14:12
スウェーデン王室と皇室3代の交流 国王は“20回近く来日”【皇室 a Moment】

ひとつの瞬間から皇室の実像に迫る「皇室 a Moment」。今年、国王の即位50周年を迎える北欧・スウェーデン。カール16世グスタフ国王は20回近く来日している“親日家”です。日本テレビ客員解説員の井上茂男さんと、交流の歴史を振り返ります。

■即位50周年の年を迎えたグスタフ国王

――天皇皇后両陛下が迎えられているのはどなたでしょうか?

北欧・スウェーデンのカール16世グスタフ国王と、長女のヴィクトリア皇太子です。2019(令和元)年10月、天皇陛下の「即位の礼」の翌日、外国王族を招いて開かれた茶会の1シーンです。

グスタフ国王はノーベル賞の授賞式でメダルや賞状を授与しますので、ご存じの方も多いと思います。令和の即位の礼に、スウェーデンは国王と皇太子の王女が親子で参列しました。
国王は昭和天皇の「大喪の礼」や平成の「即位の礼」にも参列し、令和の「即位の礼」は2度目でした。

そのグスタフ国王が、今年、在位50周年の“ゴールデンジュビリー”の年を迎えました。こちらが年頭に公開された記念の肖像写真です。即位式が行われた部屋で撮影されたそうです。

――スウェーデンにとって今年は記念すべき1年になりますね。

はい。それだけではなく、今年は今の王政になって500年という節目でもあります。

■20回近い来日、“親日家”のグスタフ国王

まずはグスタフ国王の来日歴をまとめました。

76歳のグスタフ国王は大変な親日家で、ここにない非公式の訪問も含めると来日の回数は20回近くになります。

――20回というのはかなりの回数だと思いますし、国王としていらした回数としても異例じゃないですか?

そうですね。イギリスのエリザベス女王は、在位中、1度しかいらっしゃっていませんので、20回近くという数が多いことがわかると思います。

国王としての最初の来日は、今から43年前の1980(昭和55)年の国賓の時でした。この時、シルヴィア王妃も初めて来日し、歓迎行事や宮中晩さんに臨みました。その後も、つくば万博、長野五輪など大きな行事のほか、公式、非公式にたびたび来日しています。

1989年2月、羽田空港で国王夫妻を出迎えられているのは今の天皇陛下です。
この時、国王は、新宿御苑で行われた昭和天皇の「大喪の礼」に王妃と参列しました。
さらに、翌年に行われた平成の「即位の礼」にも夫妻で参列しています。

令和の「即位の礼」にも出席していますので、代替わりの3つの重要な行事に全て出席した珍しい君主になります。

――平成、令和と2回の即位の礼に出ていた国王がいらっしゃったんですね。

はい。国王ではブルネイのボルキア国王とグスタフ国王の2人です。

また、近年ですと、国王夫妻は、2018年、千代田区の博物館で行われたスウェーデンの生物学者で「分類学の父」とも呼ばれるリンネの特別展を上皇ご夫妻と一緒に見ています。当時この博物館に勤務していた小室眞子さんも出迎えました。

■70年前に上皇さまを歓待した前国王

――そもそもスウェーデン王室と日本の皇室とのつながりはいつ頃から始まったのでしょうか?

こちらの写真をご覧ください。

1953(昭和28)年、皇太子時代の上皇さまが、イギリスのエリザベス女王の戴冠式の後に訪れたスウェーデンで撮影された写真です。当時のアドルフ国王は今のグスタフ国王のおじいさんで、上皇さまを歓待しました。

――若かりし頃の上皇さまが、アドルフ国王にならって足を組まれている姿が印象的ですが、この写真は上皇さまのカメラで撮影と書かれていますね。

プライベートショットですね。上皇さまの傘寿(80歳)の企画展の時に公開された写真です。昭和28年のカラーの写真がこれだけ色鮮やかに残っているのは珍しいと思って見ました。

アドルフ国王は1926(大正15)年に来日し、摂政時代の昭和天皇とも交流しています。上皇さまは2000年、スウェーデンを訪問した折の晩さん会で「まだ10代だった私にとって祖父君の温顔に接したことは忘れ得ない思い出となっております」と述べられています。

■27歳の時に即位した国王

グスタフ国王は幼少期に父親を飛行時事故で亡くして祖父のアドルフ国王に育てられました。国王が91歳で亡くなり、1973年9月、27歳の若さで即位しました。

映像は即位3年前の1970(昭和45)年、大阪万博に際して初めて来日した時です。この時は昭和天皇、香淳皇后と懇談しています。

――若くして国王になられたのですね。

その国王が1976年に結婚したのがシルヴィア王妃です。
ドイツのビジネスマンの一般家庭に育った人で、ミュンヘン・オリンピックの「VIP担当兼通訳」として皇太子時代の国王と出会い、5年の交際を経て、“ミュンヘンの恋”を実らせて結婚しました。

こちらは結婚から4年後、東宮御所に上皇ご一家を訪ねた時です。
ちなみに、スウェーデンのグループ「ABBA」の1976年の世界的ヒット曲に「ダンシング・クイーン」がありますが、この曲は、民間から王室に入ったシルヴィア王妃に捧げられた歌でした。

――「ご結婚お祝いソング」でもあったんですか! そして上皇ご夫妻や天皇陛下もスウェーデンを訪問されていますよね。

はい。上皇ご夫妻は1985年、皇太子時代に昭和天皇の名代としてスウェーデンを訪問されています。

この時は、グスタフ国王夫妻と一緒に、馬車に乗って“北欧のベネチア”ともいわれるストックホルム市内をパレードし、市民から大変な歓迎を受けられました。

また国王夫妻は、上皇ご夫妻を伝統的なスウェーデンの農村の建物などを再現した野外博物館を自ら案内するなど、大変な歓待ぶりでした。

――ご自身が案内してくださったんですね。とてもにこやかに話している様子からも親しさがうかがえます。

■年3回 印象深い2007年の交流

私が取材した中で印象深いのが、2007(平成19)年の行き来です。
この年の3月、まずグスタフ国王夫妻が「国賓」として来日します。12回目の来日で、2度目の国賓でした。

歓迎行事や会見、宮中晩さん会などの行事のほか、上皇ご夫妻は「小江戸」として人気の川越に国王夫妻を誘い、古い蔵造りの街並みや、川越まつりの山車のひきまわし、桜で有名な名刹に案内されました。満開の桜を静かに眺めながら、国王、王妃が、日本の春を楽しんでいる様子が表情から伝わってきました。

――日本のよき季節を楽しまれたことも親日につながっているのかもしれませんね。

その2ヶ月後、今度は上皇ご夫妻がスウェーデンを訪問されます。2000年にも「国賓」として訪問されているので、上皇さまにとっては4度目の訪問です。国王夫妻は、まず首都ストックホルムの宿舎に近い植物園に上皇ご夫妻を案内しました。

この訪問は、「分類学の父」、カール・リンネの生誕300年の記念行事出席のためで、魚類分類学者の上皇さまにとって“科学の旅”と言えるものでした。

リンネが初代会長を務めた「王立科学アカデミー」へのご訪問にも国王夫妻は同行します。ノーベル賞の選考機関としても知られる格式の高いアカデミーです。

翌日、上皇ご夫妻はウプサラで生誕300年の記念行事に出席されました。リンネが眠るウプサラ大聖堂で供花し、およそ200メートルを国王夫妻と行進されます。

国王は3月の訪日を終えて帰国する際、「お迎えの準備を私自身いろいろ考えたい」と話していましたが、一緒の時間を喜ばれていることが伝わってきました。

ウプサラ大学でのセレモニーでは、上皇さまはこれまでの魚類研究の功績により「名誉学員」として迎えられ、金メダルなどが贈られています。

さらに10月、グスタフ国王は再び来日し、東京で開かれた「ボーイスカウト運動100周年記念」の晩さん会に出席しています。世界スカウト財団の名誉総裁としての来日で、上皇ご夫妻も出席し、交友をさらに深められました。

――この2007年は1年間で3度もお会いになっていて、交流の深さが感じられますね。

はい。当時の駐日スウェーデン大使は、年3度も顔を合わせた例は過去になく、“強い結びつき”の表れと語っています。

■東京・神田の居酒屋で大学生と交流したヴィクトリア皇太子

こちらは2001年に来日し、高円宮ご夫妻の案内で神田の居酒屋を訪ねた時の写真です。

――居酒屋ですか?

この時は、高円宮杯の英語弁論大会を支える大学生ボランティアたちと懇談が行われました。

――後ろのメニューに「いかげそ」と書かれていて、とてもカジュアルなお店ですよね。

はい。JRのガード下にあって、電車が通る度にガタガタと大きな音がする庶民的な居酒屋です。そうした店で日本の大学生たちと交流されたのがうれしいですね。

――親しみも感じますね。

ヴィクトリア王女が生まれて2年後の1979年、スウェーデンは「王位継承法」を改正し、男女の別なく第1子を王位継承者とし、王女は皇太子となりました。

日本テレビの「皇室日記」が2002年、パリで皇太子の単独インタビューをしています。

ヴィクトリア皇太子:「私は王女として生まれました。しかし制度が変わったのは2歳か3歳の頃です。決して古くから続いている制度ではありません」
「あらゆる意味でスウェーデンの良き親善大使となることが私の役目だと思っています」
「外に向けてスウェーデンをアピールすることはもちろんですが、国内でもやるべきことがたくさんあります」

皇太子は2010年6月、スポーツジムを経営していたダニエル・ベストリングさんと結婚し、天皇陛下も結婚式に参列されました。結婚式が行われたのは、ご両親が結婚したのと同じ日です。私も現地で馬車パレードを見ましたが、白夜の季節で街が華やぐ中、お祝いムード一色だったことを思い出します。

■令和の即位の礼 次世代につなぐ“親子出席”

――本当に国民の皆さまからお祝いされている様子が伝わってきましたが、交流を3世代にわたって重ねてきたからこそ、令和の即位の礼では親子での参列となったのですね?

国王と皇太子の親子の参列はヨーロッパの王国ではスウェーデンだけでした。これについてスウェーデン大使館がTwitterでツイートしています。

「今回は娘のヴィクトリア皇太子殿下と共に2世代での出席となりました。親しい交流は次の世代にも引き継がれています」

親子での参列は、交流を次の世代につなごうという強い思いがあったんだと思います。あの日ツイートを見て、先を見据えているんだなとうれしくなりました。

スウェーデンは今年、カール16世グスタフ国王の在位50周年だけでなく、スウェーデンが独立を果たし、王位にグスタフ・ヴァーサが就いて500周年の節目の年でもあります。今日の友好関係の陰にこうした交流の積み重ねがあることを踏まえて、お祝い行事のニュースを注視したいと思います。

――スウェーデン王室と日本の皇室が深い絆で結ばれていることを感じました。また、2国間の良好な関係というのが、世界中で知られている企業がスウェーデンでは多いですけれども、私たちがスウェーデンを感じるきっかけにもなっているのかなと感じました。


【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)。