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【全文紹介】「歌会始の儀」皇室の方々の歌 ~お題は「友」天皇皇后両陛下と皇族方の歌

2023年1月18日 11:38
【全文紹介】「歌会始の儀」皇室の方々の歌 ~お題は「友」天皇皇后両陛下と皇族方の歌

皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われました。今年のお題は「友」です。

共通の題で歌を詠む歌会は、奈良時代には始まっていたとされ、鎌倉時代には行われていた「歌御会始」に一般の応募が認められたのは明治7年。皇室と国民を結ぶ長い歴史を持つ行事です。

「年の初めに~」という古式ゆかしい節回しで、伝統のままに歌が披露されました。今年の「歌会始の儀」に寄せられた天皇皇后両陛下と皇族方の歌を紹介します。(歌の背景については、宮内庁の説明をもとに加筆・編集しました)

【天皇陛下:御製】

コロナ禍に友と楽器を奏でうる喜び語る生徒らの笑み

(英訳)
Students smile
Talking about the joy of playing musical instruments
With friends
Even under the pandemic

(背景)
天皇陛下は、3年連続でコロナ禍を踏まえた歌を詠まれました。

天皇皇后両陛下は、2021年10月、和歌山県で行われた第36回国民文化祭・わかやま2021及び第21回全国障害者芸術・文化祭わかやま大会にオンラインで出席し、「吹奏楽の祭典」で演奏した高校生と3人と交流されました。

その中で、感染症対策として、生徒同士の距離を空けたり、パートごとに分かれて練習をしたり、楽器の用意や片付けの際に部室へ入る人数を絞ったりしながら練習を続けてきた話を聞き、陛下は、様々な制約がある中でも、創意工夫をこらしながら楽器の演奏を続け、コロナ禍でも友達と一緒に演奏できる喜びを語った姿をうれしく思い、人々に早く日常の生活が戻ることを願う気持ちを詠まれました。

陛下がビオラを演奏されることから、側近は、「陛下も以前はご友人と一緒に演奏する経験をお持ちなので、その喜びをとても身近に感じられ、詠まれたのだろう」と話しています。

【皇后さま:御歌】

皇室に君と歩みし半生を見守りくれし親しき友ら

(英訳)
I have spent half my life
In the Imperial Family
At His Majesty's side
While my close friends
Have kept kind watch over me

(背景)
天皇皇后両陛下は、1993年6月9日に結婚されました。皇后さまは、去年59歳の誕生日に、皇室に入ってからの時の長さが結婚前までと同じ位になったことを感慨深く思い、この間多くの方に支えられてきたことへの感謝の気持ちを文書で表されました。皇后さまはこれまでの日々を温かく見守ってきた友人たちへの感謝の気持ちを詠まれました。

【秋篠宮さま】

彼方此方(をちこち)を友らと共に行巡(ゆきめぐ)り聞き初(そ)めしことに喜びありぬ

(英訳)
Together with my friends
I journeyed near and far,
and I found joy
in things I heard
for the very first time.

(背景)
秋篠宮さまは、高校生の頃から十数年前まで、いろいろな場所を知り合いの方々と訪ねて回られました。特に総合研究大学院大学のプロジェクトに参加していた時は、秋篠宮さまを含む参加者が訪問先の地元の人たちにさまざまな質問をし、そこから得られる答えに新鮮さと心弾むような気持ちを覚えられたそうです。そのような思い出を詠まれました。

【秋篠宮妃紀子さま】

春楡(はるにれ)の卓の木目を囲みつつ友らと語る旅の思ひ出

(英訳)
Memories of journeys
recounted among friends
as we sat encircling
the grain of a table
hewn from Japanese elm wood.

(背景)
紀子さまは、去年の春、友人たちに誘われて出かける機会があり、その折に、ハルニレの木目を生かした温かみが感じられる大きな卓を囲み、さまざまな旅の思い出を語り合われました。感染症対策をしながら、久しぶりに一緒に座って語り合うことができたことに感謝し、この歌を詠まれました。

【愛子さま】

もみぢ葉の散り敷く道を歩みきて浮かぶ横顔友との家路

(英訳)
As I stroll down the lane
Covered with autumn foliage
My friend's profile flashes through my mind
Bringing back the memories of days
When I walked home from school with her

(背景)
この歌は、愛子さまが去年の秋、お住まいのある皇居の吹上の庭を散策し、散ったもみじの葉に覆われた道を歩いた際に、かつて友人と一緒にもみじの葉を踏みしめながら歩いた学校の帰り道を思い出し、その友人のことを懐かしく思った気持ちを詠まれたものです。

【秋篠宮家 佳子さま】

卒業式に友と撮りたる記念写真裏に書かれし想ひは今に

(背景)
佳子さまは、高校の卒業式の日に友人2人と写真を撮られました。後日、友人が印刷した写真の裏にメッセージを書いて渡してくれ、その想いが3人の中で今も続いていると感じられたことを歌に詠まれました。

【常陸宮妃華子さま】

友よりの封書に貼られし海外の風土の切手をルーペに見入る

【三笠宮寬仁親王妃信子さま】

老犬を悼(いた)む思ひが友からの賜(た)びし子犬の声(こゑ)に救はる

(背景)
信子さまは、去年、長年可愛がってきた愛犬が旅立ち、深い悲しみの中で日々を過ごしていましたが、友人たちの配慮で新しい命と出会われました。その子犬は信子さまに「モモ」と名付けられ、今では元気に遊び回っています。天国に旅立った愛犬と過ごした記憶と悼む思いが、子犬の元気な声によって少しずつ良い思い出に変わりつつある心境を詠まれました。

【三笠宮家 彬子さま】

器からこぼれてしまつた言の葉を静かにつむぐ友の横顔

(背景)
一人でいろいろなものを背負って走り続けてきた友人が、その重さとつらさについてぽつりぽつりと打ち明けてくれる横顔を見ながら、「少しでもその荷を軽くする手助けが私にできたらいいな」と思った夜のことを詠まれました。

【高円宮妃久子さま】

紅葉(もみぢ)する木より聞こゆる鳥のこゑ黒姫の森を友と歩めば

(背景)
未来のために森を守り、長野県の黒姫の地に生物多様性豊かなアファンの森をよみがえらせた三十年来の友人、故C.W.ニコル氏との思い出を詠まれました。

【高円宮家 承子さま】

厳かに巫女の舞ひたる倭舞ひ外つ国の友と我ながめをり

(背景)
コロナ禍前、久子さまと一緒に、外国から訪れた友人家族を明治神宮へ案内した時のことを懐かしく思い出し、詠まれました。

来年のお題は「和」と決まりました。