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【解説】入力作業に「3時間」も……コロナ感染者「全数把握」見直し検討へ 季節性インフルで運用の「定点把握」にはデメリットも

2022年8月17日 10:31
【解説】入力作業に「3時間」も……コロナ感染者「全数把握」見直し検討へ 季節性インフルで運用の「定点把握」にはデメリットも

新型コロナウイルスの全ての感染者を確認する「全数把握」について、岸田首相が見直しを指示しました。医療機関の入力作業の負担軽減につながるとみられますが、他の方法ではデメリットもあります。どんな把握方法がよいのでしょうか。

■感染急増の中…全数把握は「負担大」

有働由美子キャスター
「新型コロナの全ての感染者を把握する『全数把握』の見直しについて、岸田首相が検討を指示しました。全国知事会は16日『今すぐ取りかかってほしい』と要望しました。見直すことで医療現場の負担を軽くするということですよね?」

小野高弘・日本テレビ解説委員
「現在の全数把握では、医療機関は診察した新型コロナ患者全員の情報を『発生届』に入力して保健所に報告しなければいけません」

「発熱外来のある『あゆみクリニック』の藤川万規子院長によると、この入力には1人5~10分かかります。今感染者が爆発的に増えているので、全員分だと2~3時間です」

「藤川院長は『通常の医療と並行しながらの作業は負担が大きい。この作業が減れば、今断らざるを得ない人たちも診察できるようになるんですが…』と話しています」

■代替の「定点把握」にはデメリットも

有働キャスター
「見直すとなると、どう変わるのでしょうか?」

小野委員
「厚生労働省がいろいろ検討していますが、その1つは『定点把握』です。指定された一部の医療機関だけに報告してもらって、その定点で感染者を把握しようというものです。その分、他の医療機関の負担が減るというメリットがあります」

「季節性のインフルエンザなどはこの『定点把握』が運用されています。ただデメリットもあり、今感染が拡大しているかどうか、といった状況を把握する精度は下がってしまうことにもなります。このように、いろいろな考えがあります」

「(感染症学が専門の)国際医療福祉大学・松本哲哉主任教授は『今は無症状も重症も同じ扱いで、現場の無用な負担が大きくなっている。感染者数の把握は、人数だけにとどめて、詳しいことは入院が必要な人だけに絞ればいい』と指摘しています」

■落合さん「本人で入力」「簡略化を」

落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「全数把握はできるならやった方がいいと思いますが、この現状なら仕方ないですよね。データとしては取るべきものは取った方がいいですが、入力する情報の詳細はいらないので簡略化してやっていけば良かったと思います」

「例えば一部の自治体で行われているように、医療機関の人に入力させるのではなく、本人に入力させれば、『全数(仮)』のように、ある程度取りこぼしやミスがあっても仕方がないような仕組みにして、統計的に判断する方が良かったのではないかなと思います」

有働キャスター
「(政府分科会の)尾身会長ら専門家が全数把握の見直しを提言してから2週間たっていますし、本当は第7波が来る前に議論しておいてほしかったのですが、1つでも負担を減らす対策を進めてほしいと思います」

(8月16日『news zero』より)